英雄


懐かしい曲。
遠い昔に聞いた其の旋律。
姉さんが死んで、決して触れる事の無かったピアノ。
一体何年触れていなかったというのだろうか。其れなのに、其の力強さは決して衰えてはおらず、あの時と同じ様に俺の心を強く叩いた。
あの時、何故拓也が其の曲を俺に向けたのか、良く判った。
拓也は知っていた。
俺が、元帥になる事を。
あの時、弾き終った後拓也は云った。「此の曲通りの男になったら又弾いてやるよ」と。
そんな昔の約束も忘れ、月日は流れ、元帥となった俺に、拓也は覚えていた約束を果たしてくれた。
御前の旋律に誓おう。
俺は、今以上に其の曲が似合う男になると。
此の国が勝った暁には、又其の曲を弾いてくれるか、拓也。




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