汝、ヴィクトリア


其の少女は、母と同じでは無かった。髪の色も目の色も、顔も全て母とは似ていなかった。同じなのは、女という性だけだ。
レベッカ・アダムズ、此れが其の少女の母の名前だ。ベッキーと周りから呼ばれ、母は何時も人に囲まれ、薔薇の様な人だった。娘ながら少女は、母を美しい者と認識し、又慕っていた。
其の少女の名前はヴィクトリア・アダムズ、通称「ヴィッキー」。ヴィッキーと呼ばれる度、少女は母を愛していった。けれど、母は嫌っていた。
ベッキーとヴィッキーは、とても似ているから。
訛りの強い人間は「ヴィッキー」と呼べず「ビッキー」と呼ぶ。其れが母には気に食わなかったのだ。




*prev|1/4|next#
T-ss