汝、琥珀


黒は悪魔の色だと、シスターが云っていたけれど、あたしにしてみれば、神の色だ。
黒い目に黒い髪、黒い軍服。あたしの大好きな色は、黒。
御前には、神が付いてる。
ダディはそう云う。
あたしは何の疑いも無く其れを信じた。
だって、神様はダディでしょう?
そうあたしが云うと、決まってダディは苦笑いをする。
俺はそんなんじゃねえよって。
ダディは何でもあたしに教えてくれた。四季の楽しみ方も、日本語も、人の暖かさも。勿論、マミィの事も。
あたしの名前はマミィの名前。だからあたしは此の名前が大好き。尤も、ダディはマミィの話をする時、姉さん、そう云っていたけれど。
ダディがマミィを愛した事、世間は良い顔をしない。神が禁止する事をしたけれど、あたしは間違ってはいないと確信する。こんなに美しい悲しい愛。どんな純愛文学にも負けない。
世界で一番素敵な愛。
マミィの顔は、とても綺麗でとても優しい。そして愛に溢れている。声を聞ければ何れ程良いか。ダディ曰く、マミィの声は、少し低くて落ち着いている。龍太郎は、高いと云っていた。どちらが本当か判らないけれど、きっと素敵な声。
ダディとマミィの様な愛を、あたしは知る事が出来るだろうか。
幼いあたしは、其の日を待って居た。




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