純粋且ツ猥ラナ慾


家に帰ると姉さんが門に居た。別に俺を待っていたとか迎えに出て居る等では無く、数人の男を囲っていた。姉さんと年は近く、ずっと此処に居る男達。所謂、馴染み。勿論俺も知っている男達で、俺が小さい頃は良く遊んで貰っていた。
一人は門に腕を置き、姉さんの顔を覗き込む様に話して居る。
一人はしゃがみ、見上げて居る。
門に凭れたり、直立だったり、迷惑も考えていない。
「米がごそっと無い訳。だから、御前、又孕んだのかって聞いたんだ。」
「何人目だよ。」
「五?」
「あんた、其れしかする事無いの?」
姉さんには珍しい口調。姉さんは気が緩むとこんな口調になる。
「違うんだよ。釜に火ぃ点いてんの忘れて寝てたって…真っ黒になったから便所に捨てた。便所に捨てたんだぜ!?信じられるか!?」
男は頬を触り、顔を顰める。
「嗚呼、だからオメェさん怪我してんのかい。」
「おおよ。喧嘩したら爪でな。」
「怖ぇカッカァだ。」
姉さんは何も云わず、くつくつと笑う。
「琥珀はそんな女になるんじゃねぇぞ。」
「もう遅ぇだろう。幾つだと思ってんだ。嫁にも行かねえでっ………はぁ…ぃ…」
しゃがんで居た男は蹴られ、脛を摩る。其処は痛いだろうに、下駄は固い。
門に凭れて居た男と視線が合い、顎を動かす。全員が一斉に俺を見、気味が悪い。
姉さんは手を振り、男達を門から離す。
「ほらほら、帰ぇりな。カッカァのおっぱい吸って寝な。」
「へいへい。」
「カッカァが居ない俺は如何したら良い。」
「知らないよ。吉原か娼館にでも行きな。」
「吉原の方が好きだなあ、俺。」
砂と靴底が反発する音。挨拶もせず門を押し開け、其の姿に姉さんは狼狽した。
「一寸拓也…」
何時もの、俺の知る口調。
「御免…」
姉さんが謝る理由が判らない。
「良いんだよ。拓也の暗さは今に始まった事じゃない。」
好きに云ってくれる。
「じゃあ又ね。」
「又な。」
口々に別れの挨拶をし、門は閉まった。かたんと木が鳴り、俺の後ろを追う姉さん。
「ねえ…拓也…」
背を見せた侭靴を脱ぎ、帽子を下駄箱の上に置いた。逆を向いている俺の靴を姉さんは座って溜息混じりに直した。下駄を脱いだのを知ると、俺は其の侭姉さんの腰を強く引き、口に噛み付いた。
歯と歯がぶつかり、舌を吸った。姉さんは案の定嫌がり、俺の胸を叩く。強く目を瞑った侭、眉間に皺寄せ、まるで龍太みたいな。
全く俺を見ない姉さん。
姉さんの怒りは正当だと思う。俺は姉さんを怒らせる事をしたのだから。

彼奴等の目は見て笑うのに、俺の目は見てくれない。

だったら

――――何も見なければ良いよ。




*prev|2/3|next#
T-ss