優しいあなた
「ん……あれ、ここは…?」
「病室だ。」
空中に問いかけた質問に、スッと答えが返ってくる。
その声に横になった状態のまま、頭を向けると、
そこにいたのはなんとも意外な人物であった。
「…イザーク…さん?」
「……なんだ。」
「いえ…なんというのか、あなたがここにいるのが意外で…」
「…お前が試合中に突然倒れるからだろう。」
「じゃあもしかして、ここまで運んできてくれたのって…」
「俺だ………何か悪いか。」
「いいえ…その……ありがとう。」
「フン。」
アイリアの表情が驚愕から柔らかい微笑みに変わると、
イザークも顔を赤くし、そっぽを向いた。
アイリアはそれを見て少しクスリと笑うものの、そのまま視線を天井へと持っていった。
「…そっかぁ。私、試合中に倒れちゃったのね。
ごめんなさい、試合、中断させてしまって。」
「別にいい。そんなのはまた行えばいいことだ。
それより…自分の体調管理も出来ないやつに、まともな試合など挑めるはずもなかろう。
お前だって、軍に志願するためにここに来たんだろう?
だったら自分の体調管理くらい、自分できちんとしろ。」
「…あなたの言うとおりね。駄目ね、最近空回りしてばっか。
結局倒れちゃったし……」
こんなんじゃこれから軍人になるのに、失格よね。とそういう彼女は珍しくうつむいていた。
いつもはただ目の前のことに必死で、弱みなど言わないのに。
強くあろうとしているのだろうか。笑顔であっても、今日のアイリアは少し沈んでいた。
「……そういうときもあるだろ。
お前だって一人の人間なのだから、失敗をしないわけじゃない。」
ふいにそういわれ、アイリアはイザークの方を向く。
そのアイスブルーの瞳はまっすぐに自分を見ていて、思わず見つめてしまうほど力強いものだった。
「大事なのはそこからどうするか、だ。
そこで簡単に諦めてしまうようなら、お前もつまらない人間だということになる。」
ハッと思う。
そういえば、彼…イザークはいつもアスランを敵視していたように思う。
いつもいつも、彼に負けぬようにと訓練をしているその姿は必死で、
そしてしっかりと前を見据えていた。
「……そうだね。あなたの言うとおり。
こんなところで落ち込んでいる場合じゃないものね!」
沈んだ顔は満面の笑みに変わる。
その笑顔にイザークは少し顔を赤くし、プイッとそっぽを向いてしまった。
「わかったならさっさと戻るぞ!!俺だって忙しいんだ。
明日はアイツとの試合なんだからな。」
きびすを返し、扉の方に向かってぐんぐん進む。
アイリアはその後ろ姿を見て思う。
―――…それでも、私が目を覚ますまでいてくれたんだね―――
人間は見かけによらず、というのはうそではないのだと、
彼の優しさを感じる。
「そうだね。そろそろ戻らなくちゃ。
……明日の試合、頑張ってね。」
「お前に言われるまでもない。」
はいはい、とクスクス彼女を横目に、イザークはなんだか不思議な心境だった。
でもそれは嫌ではなくて……むしろ暖かいような、そんな気持ち。
ベッドから降りようとして、アイリアは何かに気づくと、
イザークと一言声をかける。
何だ、といって振り返った彼に、アイリアは一言笑みとともに言った。
「本当にありがとう。」
そのとき少しときが止まり、開いた窓から風が通り抜ける。
2人の銀髪が揺れた。
「………あぁ。」
そうやって返事を返したイザークは、
いつもより穏やかな表情をしていた。
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