Chapter14
俺は情けないことに矢内が帰ってくるのが怖かった。
「ただいまー……って、恐山いたのか。何やってるんだ、電気も付けないで」
おかえり、矢内。
電気? ああもうこんなに暗くなってたんだ。全然気付かなかった。
和室に入ってきて、電灯から延びるのひもに手をかけた矢内の白いシャツをくんと引いたけど、鈍い矢内は電気がつくと同時にしか俺の手に気付かなかった。
「どうした? 恐山」
「……」
俺は無言で返して――それから、ずっと無言が続く。
見たと思う。だから、矢内もしばらく黙ったきりで。
「あ、」
――そぅら、来た。
理解できたか、矢内。これが因果応報って奴。
いつだって、過去は未来に復讐するんだ。
露店なんかで足を止めなければよかったのに。
温もりなんか欲しがらなければよかったのに。
毒ばっかりに犯された俺は崩れ落ちた矢内の顔を見
――ふっと、その毒を抜かれてしまった。
陰鬱に笑いもした。
矢内、それは殺そうと思って買ってきた奴の顔じゃないよ。
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