先程まで輝いていた月を隠すように、雨雲は地に覆い被さり辺りを濡らしていく。
 二人の男が橋上に立っていた。一人は赤い着物、そして羽織には「誠」と、一人は青い着物に黒い帽。

「もう、終わりにしよう」

 赤い着物の男が言った。

「あぁ。今度こそ終わりだ」

 青い男も、続けて言った。
 橋上に響くのは雨の音、そして刃がぶつかる甲高い鉄の音。二人の男の力は拮抗していた。切り掛かって、避けて、転げて、また切り掛かる。
 赤い着物を着た男の左胸を刃が貫いた。鈍い音を立て、その赤色は地に伏せる。
 それと同時に、青い着物の男もまた膝を立てた。自身の前衣がもう赤色に染まってしまっているのを見て、また男も地に伏せた。

 橋上に響くのは雨音だけになった。