「ゆき乃さん、ドSになりたい。」
「...ドS、」
またなんて事を。どー見てもM基質なマイコにそんな難題を出したのは一体どっちなんだろう?慎?いや、壱馬?
「えーっと、とりあえずチョコ渡し終ってから、にしない?」
「...うん。」
スタジオBを覗くと、ファンタの子らが汗を流していた。
コンコンってドアを叩くとみんなが一斉に振り返る。
「ハッピーバレンタイン!」
無駄に明るくそう言ってチョコを一人一人配っていくと、ここにも雨雲背負った男が一人。
「夏喜、どうしたの?」
声をかけると目を大きく見開いた。
「え?」
「元気、ないよ?」
大きな背中をポンッて軽く叩くと苦笑い。紙袋の中からチョコを取り出して彼の前に差し出す。
「甘いの好き?」
「あ、はい。」
「じゃあこれ食べて元気出して。」
「チョコ、ありがとうございます。」
受け取った時に違和感を覚えた私はジーッと彼を見つめる。なんとなく分かった。
「ちょっと手貸して!」
「え?」
プランとした彼の手を取るとニッコリ微笑む。
「今から魔法のマッサージしてあげる。」
指の間に指を絡めてムニュっと手の平を揉むとほんのり顔を歪めた。
「痛い?」
小声で聞くと苦笑い。時々直人もこうして指で手の平をほぐしてあげると楽になるって言ってた。
「なんで、分かったんすか?」
「同じような人見たことあるの。それ、地味に痛いみたいね。」
何度も小さく顔を歪める夏喜はそれでもほんの少しの間、目を閉じて堪えていた。
「全身やってあげるから今夜うちおいで。」
最後にそう言うとまた夏喜が笑った。