ピンポーン。
呼び鈴が鳴って鍵を開けると樹がすぐさま中に入ってきた。
「今日泊まっても大丈夫ですか?」
そう聞きながらもノーと答えても駄々をこねそうな勢いで私を後からギュッと抱きしめた。
「甘い匂いー。それ俺の為ですか?」
「ふふふ。樹にもちゃんとあげるよ。」
「俺だけがいいです、それ。」
クルって身体を反転させられてコツっとおデコを重ねる。そのままチュ、ってキス。
見つめ合ってもう一度どちらからともなく唇を重ねた。
キスのうまい男は好き。身体の相性がいい男も好き。...いつからだろう、そんな風に思ってしまっていたのは。
だけどどこか満たされない。不満なんて何もないのに。
直人だって樹だってこんなに私を愛してくれてるのに、なんでこんなに空っぽみたいな気持ちになってしまうんだろうか。
カタンって、冷蔵庫に背をつけてキスをせがむ。足を開いたそこに樹の手が甘く触れて呼吸があがる。
全国にいるファンがどんなに望んでも貰えないこの手を独り占めしている私は、いつかどこかで罰が当たるかもしれない。
―――若い子の欲 情は、なかなか止まらないことを知る。
ジムに行って疲れているだろう樹は、三度私を抱きつくして死んだ様にベッドで眠りについた。
まだ終わっていないチョコ作りの続きをしなきゃって、シャワーを浴びると、直人にしばらく会えないじゃないってぐらいのマーキングがそこには沢山あって。
樹の身体にもつけてやろうかと本気で悩んだなんて。
ただ、ドラマの撮影に入った直人は忙しく、現場に行きっぱなしでしばらく帰ってこれそうもないって。樹のつけたキスマークを見られなくてすむと思うと、ほんの少しだけホッとしている自分がいる。
「はい、陸!ハッピーバレンタイン!」
「え、うわーありがとうございます!これゆき乃さんの手作りですか!?すげー可愛い。」
陸なら無条件で褒めてくれるだろうって最初に渡したのは間違いじゃなかった。どんな人にも優しい陸だから、付き合ったらきっと幸せだと思える。まぁ、私にはそーいういい人は向いてないけど。
チョコを渡し歩いていると若干雨雲背負ったマイコに遭遇した。
「な、どうかした?」
声をかけると涙目でとんでもないことを言い放ったんだ。