本命チョコ1


秘密の恋愛、なんて言葉に浮かれていたのはもう遠い昔の話。

ごくごく普通の恋人たちがする手を繋いで歩いたりだとか、カフェでランチをしたりだとか、そーいうことも制限されてしまうのが芸能人との恋愛だ。

貝DH。
タレント同士の恋愛は御法度だって軽〜くうたってはいるものの、好きになってしまったものはどうしようもない。きっと隠れて付き合っているカップルもいるんだろうって。安パイなのはそう、スタッフって奴。私も密かにそのうちの一人だったりする。

仕事を終えて外に出るともう空は真っ暗だ。ご飯どうしよう?って思いながらも足が進んでしまうのはいつもの馴染みのお店。ドアノブを回そうと手にした瞬間、ポケットの中のスマホが着信の振動を知らせた。

画面を見てホッと一息「もしもし。」【俺俺、今どこ?】毎度脳内でオレオレ詐欺ですか?と突っ込みたくなりつつも私はほんのり安心して自分の居場所を告げた。
すぐにお店の個室が空いてるか確認したけど、普通に空いてて。平日の夜なんてこんなもんだ。

ご飯に行く相手が芸能人ってだけで個室のあるお店に絞られてしまう。

いつ何があっても大丈夫なように、外でハメは外せないし、ましてや粗相なんてできやしない。


「よかった、時間取れて。しばらく撮影でいないから今日は二人きりで過ごしたかったんだ。」


個室に入るなりそう言う彼のコートを受け取ってハンガーにかけると、そんな私に一言ニヤついた顔で言った。





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