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「わー見て見て、すごい!これってなんの花?ブドウ?」

頭上一面を埋める紫色の花をうっとりと見つめてそう言うのは一ノ瀬ゆき乃。
都立M校2年の1人だ。
修学旅行で京都に来ていたゆき乃達は、神社仏閣の途中、藤の花の一角に迷い込んだようだった。

「ブドウじゃないよ、確か藤の花だよこれ。」

級長である相沢ハルがゆき乃の発言にクスクスと笑いながら答えを教えてあげた。

「あたしもブドウだと思ったわ!」

手を伸ばして捕まえようとするのは、原田美月。
ゆき乃、ハル、美月は、同じクラスでも仲の良い3人組だった。
級長で生真面目なハルと、サバサバした男前な性格の美月。可愛い物が大好きな乙女系ゆき乃。自分とは掛け離れた性格の3人が合うのか?というとそれは定かじゃないけれど、人間なんて自分に持ってない物を持っている人を求めるもの、なんじゃないだろうか。

「ブドウだよね、これ!ハル一房取ってー!」

身長159センチのゆき乃が手を伸ばしても届くはずもなく、身長165センチのハルをジーっと見ている。
背伸びをするハルは、届きそうで届かなくて。

「押花にしたいのに〜。」
「ロマンチック〜!勇征くんにあげるの?」

美月の言葉に顔をポッと赤らめるゆき乃。それもそのはず、2年になってからずっと一途に思い続けている八木勇征とこの修学旅行でも同じ班になれたから。

「美月も颯ちゃんにあげる?」

ニヤリと口端に笑みを浮かべるゆき乃にぶんぶん首を横に振った美月。
顔の前で手首をユラユラさせて「柄じゃない、そーいうの!ハルこそサワくんにあげたら?」…美月の視線がハルを捉えるとゆき乃みたいにほんのり頬を紅く染めた。

「うーん。迷惑じゃないかなぁ?サワくんそーいうの受け取らない気がする。」
「そんな事ないでしょ!好きな女から貰ったまんならサワくんだって受け取るよ!!」

3人とも、付き合っている訳じゃない。けれど、それなりに意中の相手と仲も良かった。だからこの修学旅行でより一層その距離を縮めたい…なんて思っているに違いない。





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