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カシャンと、美月のスマホが一瞬動いて、それがきっと空間の歪みであって、自分達が現代に戻れる俊寛だと思っていたハル。
けれど、一人飛ばされたこの場所はそう、あの藤の花の屋敷でもなく、 誰か人の住んでいる気配のある家だった。
だだっ広いそこには人っ子一人いなかった、ハル以外。


「なによ、これ、どうなってんの、マジで。」


確かあの時美月はスマホをしきりに振っていた。電波がないとよく自分たちもそうしたいたように。だからハルもその場で何度となく自分のスマホを振り翳すも、一向に電源の入る気配はなかった。
一体全体、どうしてこのようになってしまったのだろうと考える。
考えても分からないものは分からなくて、それでもハルは考えることを止めなかった。
深呼吸をして落ち着いて、一から順を追って頭の中で組み立てる。


「藤の花と、スマホと…それからもう一つ何かある気がする。」


それが正解なのかなんて分からない。分からないけれど、確かに飛ばされた時は藤の花とスマホのカメラがあって、そこに写った3人だけが飛んでしまった訳で。


「ゆき乃も、美月も、無事なの?」


声に出したところで当たり前に誰からの返答もない。途端に不安にかられてどうしようもなく心細くなった。

そして思い浮かべる心の中にいる人…「澤くん…、」ポロリと一つ涙が零れた時だった、ガタガタと風が舞って目の前に黄金色の髪をした大きな瞳の男が立ちはだかった。





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