この地域じゃ有名なバカ校としてそびえ立つ我がN校は、田舎の奥深くにあって、薄暗い校舎の上にはカラスが何匹もたまっていて、見るからにデそうな学校だった。
ガラの悪い着崩した制服でダラダラと歩く生徒達にわざわざ文句を言う先生なんかいなくて、出席日数さえとっていれば進級卒業が約束されたような悪校に在席するわたし。
こんな学校で薔薇色の高校生活がどうやっておくれるんだろうか疑問すら浮かぶ。
でも拓真と離れるよりはマシ。
わたしの全ては拓真だけ。
「じゃあ、次の問題を行沢」
『はい』
窓際の席、ベランダ向きで寝ている赤い髪の拓真を見つめていたわたしの視界を遮るように、そう返事をして立ち上がった生徒は、わたしと拓真の間をスーッと通って黒板の問題を軽々解いた。
クスクス笑う女子共に、トロンとする男子の視線。
振り返った彼女はストレートの色素薄い髪を靡かせて、わたしと拓真の間を再び通った。
大きめのパッチリした目が一瞬わたしを捕らえたけどすぐに逸らされて。
綺麗な子…
それが、奈々の第一印象だった。