ヒロアカ 爆豪勝己

「かっちゃん待ってよ、その子誰?」

 後ろから追いかけてきて俺を呼び止めた志織は泣きそうな顔で俺を見ている。顔を見れば容易にわかる、こいつが何を聞きてぇのか。

「別になんでもねェよ」

 そう言って志織から視線を外せば俯いて指をぐっと握り締めているのが目に入った。
 俺は志織と反対側にいる女の肩を押すようにして歩き出す。せっかくここまで追ってきた志織を無視するように背を向けて仕方なく歩くと、「なによっ、かっちゃんのバカッ」小さく聞こえた志織の声に溜息を零す。
 ちゃんと説明してやりてぇが、今は無理なんだ、今は。

「あの、ごめんね、爆豪くん。あたしのせいで…」
「ンな顔すんなら、やめるか?」
「うううん、やる。そこは譲れない」
「なら堂々としてろ。アイツはこの程度じゃどうもならねェからよ」
「…よくわかってるんだね。水音さんのこと」

 昔からずっと一緒だったから今更どうのこうのなんてねぇ。けど一つだけ…俺には苦手なもんがあった。

「ただの馴染みだ。嬉しかねェよ」
「そうかな。水音さんといる時の爆豪くんは、少し違く見える…。あ、ごめんね、また変なこと言って。えーっとじゃあ買い物付き合ってくれるかな?」

 俺が睨みつけたから慌てて両手を振って切り替えると、この女…雄英高校普通科1年の北村朱里は俺の隣を嬉しそうに並んで歩き出す。
 日曜の午後、俺はこの北村とショッピングをしたり飯を食ったりしてから雄英の寮に戻った。
 一階の共用スペースにA組の奴等がいて、俺を見るなり途端に囲まれた。

「なんだよ、うぜぇなお前ら」

 そう言い返せば、芦戸が俺の胸倉を掴みかかった。

「爆豪あんた、見損なったよ!志織置いて何他の子とデートしてんの!?ちゃんと説明しなさいよ!」

 ソファーの真ん中、いつも元気で底抜けに明るい志織がしょんぼりと肩を落として座っている。両サイドには麗日と蛙吹が志織の事を慰めるみてぇにして座っている。
 思ったより落ち込んでいる志織に話してやりたくもあるが、誰にも言わない約束だからそこは守ってやらねぇと。

「離せや」
「爆豪さん、ご理由を説明なさったらどうなんです?何も言わないということは、デートしたという事をお認めになると取れてしまいますわよ」

 芦戸を振り解くと、今度は八百万が俺の前に立ちはだかってそう言う。俺はギャラリーに話すつもりもなく、視線を志織に向けると「かっちゃん、」志織が立ち上がってこっちに駆け寄ってきた。俺の服の裾を摘んで「説明してよ」唇を噛みしめるようにしてそう言う。

「何を想像してんのか知らねェが、別にお前が思うような事じゃねェ。これ以上詮索すんな、面倒くせぇ」

 男女の色恋に費やしている時間は確かにねぇ。それなのに俺は何やってんだか。志織にンな顔させてまでするような事じゃねぇってのもわかってる。それでもなんでか北村をほおっておけねぇのは、北村が志織にほんの少し似てるからなのかもしんねぇ。どこか志織と重ねて見てるのかもしれねぇ。

「面倒くさいってなに!?なんでそんな事言うの?私はこんなにもかっちゃんのこと、」

 言いかけた言葉を呑み込むように志織は黙りこくった。できればその続きを聞きたかったけど、それを志織が口にする事はなくパシンと腕をぶっ叩かれた。

「気ィすんだかよ」

 俺は志織の肩にポンと一つ手を置くと、そのまま女達を避けて、自分の部屋へと急いだ。当然ながら追いかけてくる奴もいなくてよかった。ベッドの上に座って大きく息を吐き出すと、スマホのラインに北村から【今日は付き合ってくれてありがとう】と、律儀にお礼のメッセージが届いた。当然俺はそれに返信することもなく、既読スルー。
 北村には悪いが、あと少しで俺は自由になる。それまでの辛抱だと思ってベッドに寝転んだ。身体は大したことはねぇが、精神的に疲れているのがわかった。

「慣れねぇことすんじゃねェな、クソがッ」

 片腕を伸ばして空を仰ぐようにして何かを掴もうと指を動かして握るも、当たり前に何も握れない。この手が掴みたいものはハッキリとしているけど、なかなか素直になれねぇ性格のせいで色んな感情が邪魔をしている。

「やっぱり面倒くせェ…」

 目を閉じるとすぐに睡魔に襲われた。今日のことは忘れちまえばいいなんて都合のいいことを思いながらも、夜は老けていく…

 翌日。
 昼休み、学食に行けば北村が隣で俺と同じ定食を食っていて、それを見たA組の奴等は目の色変えて俺の方に近寄ってくる。

「爆豪おめぇどーしちゃったのよ?水音から乗り換えたの?」

 上鳴がうざったく俺の肩に腕を回して絡んでくる。つーかやっぱり周りにはそう見えてるっことか、俺が志織をほったらかして他の女に手だしてるって。遠目で見ていたデクが複雑そうな顔でこっちを見ていたのが妙に癇に障って仕方がねぇ。なんせデクは、志織の良き相談相手であるから。あの目、なんか言いたそうに俺を見ているからガン無視してやった。

「爆豪くんってやっぱり目立つからちょっと恥ずかしいな」
「あ?ンじゃやめっか?」
「あ、そういう意味で言ったんじゃないの。なんか水音さんに申し訳ないなって急に思っちゃって」
「だから言っとんだろが。アイツはそんなヤワじゃねぇって。気にすんな」
「うん」

 恥ずかしいなんて言いながらも嬉しそうに笑う北村に俺はまた気づかれねぇように小さく溜息を零した。ニヤつく上鳴を切島が引っ張ってってここには俺と北村の二人きりになった。

「爆豪くん、好き嫌いある?」
「は?ねぇよ」
「そっか。じゃああたしお弁当とか作ってきてもいいかな?」
「断る理由はねぇだろ」
「やった!じゃあ明日からお弁当作ってくる」
「あぁ」

 北村が嬉しそうに笑うからそれでいいと思った俺は、この軽はずみに返答した事を酷く後悔する事になる。

 昼休みが終わる頃、北村と別れてヒーロー科A組に戻ると、みんなが俺を見ていて、ベランダでは志織が俺を視界に入れないようにわざとなのか、女子同士ではしゃいでいた。

「か、かっちゃん…あのさ、」
「るせぇぞ、クソナード。てめぇと喋る義理はねぇ、黙ってろ」
「でも、志織ちゃんが…」

 オロオロと俺の後ろから話しかけてくるデクに苛つくのは子供の頃からで。弱えぇくせに雄英に来たデクの顔を見るだけで腹が立ってしまう。
 志織になにか聞いたのか、いつもの相談なのか知らねぇが、俺はデクに説教される気も、デクと仲良く恋バナする気もねぇ。ダンと脚を机の上に投げ出して頭の後ろで腕を組んで体制を崩すと後ろでデクがヒイッと小さな声を出した。
 どいつもこいつも、俺の態度や顔色伺ってやがるのが目に見えて腹正しくもあるが、何も言わねぇのは俺の方だから対抗すらできないこの空気が早く終わって欲しいと願うばかりであった。



「かっちゃん今日もお昼はあの子と食べるの?」

 しびれをきらせたのか、数日後志織の方から話しかけてきた。学食に姿を見せてはいないものの、俺はここんとこ毎日北村の弁当を食っている。それをどこからか聞いたのか、俺を見上げる志織の瞳は少し赤い。

「お前には関係ねぇ」

 冷たくあしらえば志織は俺の腕を掴んで引き止める。その場でギュウッと俺の腕に身体ごと絡みつく志織に苦笑い。

「関係なくない。かっちゃん冷たい!私だってかっちゃんとお昼一緒に食べたいし、デートもしたいよっ!ねぇってば!」
「何言っとんだ馬鹿がァ」
「そうやって誤魔化さないでよ。あの子と付き合うの?」
「そんなんじゃねェ」
「じゃあなんで?」
「だからてめぇには関係ねぇ。これは俺とアイツの問題だ、口挟むんじゃねぇよ」

 妙に食い下がる志織の引っ付いとる腕を払うとまた泣きそうな顔をした。だからやめろやその顔…なんて脳内でどれだけ叫んどっても志織には何一つ伝わっていないというのに。

「意味分かんないかっちゃん。今が一番かっちゃんの気持ち、理解できないよ私。何でも話してほしいのに、かっちゃんのこと何でも知りたいのに…」

 そんな顔させたいわけじゃない。けど…「爆豪くん!お待たせ!」…タイミングがいいのか悪いのか北村が二人分の弁当を抱えて俺と志織の前に現れた。志織の瞳が胸に抱えていた弁当を見て大きく揺れる。

「それあなたが作ったの?かっちゃんの分も?」

 俺を通り越して北村を見つめる志織。まるでノーと言って欲しいと願いが込められているかのような表情だ。北村はチラリと俺を見上げるも、俺もなんて答えりゃ正解なのか分かんねぇから目を逸らした。

「あっと、うん。一緒に食べようと思って」
「…そんなぁ…かっちゃん、」

 志織が手にしていたのは俺がよく食ってる購買のパンで、もしかしたら志織も俺と食べようと買っといてくれたンだと思えた。
 一歩、二歩と後ろに下がる志織。

「おい志織」
「最低っ!!大嫌いッ!!」

 俺の顔面目掛けてパンが吹っ飛んできた。避けることもせず顔面で受け止めた俺がパンを拾って顔を上げると、そこにはもう志織の姿はなかった。潰れたパンだけが淋しげに俺の手中にポツンと乗っていて、自分が情けなくなるだけだった。

「悪りぃ北村…今日は別にしてくれ」

 そんな言葉と共にくるりと向きを変えた俺は一人志織のくれたパンを齧る。

「はっ!くそ、うめぇな…」

 昔からどうにもこうにも志織の泣き顔に滅法弱ぇのは今も変わんねぇなァ…。

◆◇◆

「うわーん、もう無理だよおっ。なんなのあの子、なんでいつもかっちゃんの隣にいるのっ?ねぇ出久、なんで?なんでぇ?」
「わわ、志織ちゃん落ち着いて!」

 口下手で言葉も少ないかっちゃんだけど、こんなに彼をわからないと思ったのは初めてだった。
 幼馴染みのかっちゃんと出久は高校生になった今も奇跡的に一緒で。私は小さい頃からずっと一途にかっちゃんだけを想っている。かっちゃんだって満更じゃないって思っていたのに、ここ数日かっちゃんの隣には私ではなく雄英高校の普通科の女の子がピタリとくっついている。
 あきらかにかっちゃんに好意を寄せているのは見ればわかる。普段ならそんな風に女の子に言い寄られても我が幼馴染みながら鬼だと思えるぐらいにこっ酷く振っているというのに、なんであの子だけ特別なんだろう。
 もう一人の幼馴染みであり良き相談相手でもある出久の前で我慢しきれず大泣き。何度かっちゃんのせいで泣いたことかはわからないけど、今の涙が一番辛いよ。

「かっちゃんの好きな購買のパン買って待ってたのに、かっちゃんはあの子と二人でお弁当だよっ、なんで?ねぇ出久、なんでなのっ?」

 バシバシ出久の腕を叩くけれど、胸の痛みが治まるわけでも、はたまたかっちゃんが追いかけて来てくれるなんて奇跡は絶対に有り得ない。自分で食べようと買ったパンまでかっちゃんに投げつけてしまったから私のお昼ご飯は何もなく、出久がたまたま多めに買ったからってコンビニのオニギリを分けてくれる。

「なんか理由があるんじゃないかと思うよ僕は。かっちゃんが志織ちゃん以外の女の子に興味がありそうには見えないんたけどなぁ僕からは」

 出久の緑がかったふわふわの髪が春風で揺れていて、中庭にある大きな桜の木はピンク色の花弁をヒラヒラと揺らしていて凄く綺麗だ。それなのに私の心はこんなにもグレーで色褪せている。
 ツナマヨおにぎりを齧ると美味しいと思うのに、気持ちが沈んでいるせいで、美味しさも半減してしまう。

「理由ってなに?私に冷たくする理由ってどんな?私じゃない女の子の手作り弁当食べる理由ってなにがあるの?」
「それは僕にもわからないけど」

 わかってる。こんな質問飛ばしても出久が困るだけだって。出久は優しいから困ったなんて間違っても口にしたりしないけれど、かっちゃんへの疑いと、失恋間近なこの状況に心がついていかない。

「さっさと告白しなかったから取られちゃったのかな…」
「志織ちゃん…」
「それともかっちゃんの中で最初から私なんて恋愛対象じゃなかった?」
「そんなことないよ志織ちゃん」
「私一人が好きで、私ばっかり大好きで、こんなの苦しいよ、出久…私どうしたらいいの?」

 膝を抱えてそこに顔を埋める。それでも目を閉じた真っ暗闇で浮かぶのはかっちゃんただ一人。どれだけ嫌われても私は、これから先もずっとかっちゃん以外は好きになれそうもない。

「元気出して志織ちゃん。僕も力になるから。諦めないでかっちゃんのこと信じてあげようよ」

 かっちゃんが私以外の女の子と一緒に過ごすのは何か言えない理由があるって…本当に信じていいの?もうわかんない。頭ん中真っ白でなんにも考えられないんだ。

 そんな私の苦しみはそれから数日続いて、本当にもうかっちゃんのことを諦めようとしなきゃと思う頃には桜の花弁は散っていた。

「え、引っ越したの?」
「あぁ。だからもうこれからはお前のこと構ってやれんぞ」

 ぶっきらぼうにそう言うかっちゃん。ポッケに手を突っ込んだまま無愛想な顔で私を引き止めるとずっと知りたかった普通科のあの子の事を漸く口にしたんだ。
 でも引っ越したからって、私をあの子の代わりにするつもり?そんなの嫌だ。そんなの絶対に無理。俯いて唇を噛み締めていると、かっちゃんは私の腕を掴んでそのまま寮のかっちゃんの部屋へと連れて行った。
 パタンとドアが閉まるとシーンとした部屋の中で私とかっちゃんの息遣いだけが耳に入る。

「2週間前だけ一緒に過ごして欲しいって言われた」
「――え?」

 どういうこと?それをイエスと受け止められる程私はできた人間じゃない。じゃあ私がもしかっちゃんに付き合って!って言ったら付き合ってくれるのだろうか?そーゆーとこだよね…

「よく、わからないよ、かっちゃんの言ってること」

 自分の感情が抑えきれなくて涙が溢れそうになっていた。喉の奥までこみ上げる嗚咽を堪えるので精一杯で、握った手に力を込める。
 かっちゃんは大股開いてベッドの上に座ると、傍で棒立ちしている私の指を軽く握った。

「怪我させちまったんだ北村に。俺のせいで。傷が少し残っちまって…消えなくて…ンでなんか力になれることねぇか?って聞いたら、引っ越すまでの思い出が欲しいって言われて…それでずっと北村の望むようにしてやってた。けど柄じゃねぇことすんなって心底思ったよ、志織にンな顔させんなら…」

 キュッと指を絡めるかっちゃんはそのままふわりと自分の方に私を引き寄せた。体温高めのかっちゃんの身体がポカポカしていてこんな時だけど妙に安心できた。
 納得したわけじゃない。でも、理解はした。

「優しすぎるよかっちゃん…」
「別にそんなことねェよ」
「あの子と付き合っちゃうのかと思ったんだよ、かっちゃんが。私とかっちゃんはそりゃずっと昔から幼馴染みだけど、私はずっと小さい頃からかっちゃんの事が好きで、かっちゃんには私のことだけ見てて欲しいって思っちゃう。かっちゃんは私のことどう思ってるの?」

 トクンと胸が早鐘を打っている。真剣な顔したかっちゃんの手が頬に触れるとやっぱり掌が熱くてホカホカする。

「好きじゃねェ女にこんなことしねェ…」

 そんな言葉と同時、かっちゃんの手が私の腕を掴んでそこにちゅ、と唇を触れさせた。瞳を閉じて口付けるかっちゃんに、強烈な色気を感じた。そのまま気づけば私と天井の間にいるかっちゃん。空色メッシュの入ったゆるふわストレートな私の髪にも口付けるかっちゃんに、ドキドキして心臓が止まるんじゃないかとも思えたなんて。

◆◇◆

「かっちゃん…」

 無意識なのかなんなのか、俺を見上げる志織の頬はほのかに紅く染まっていて、薄い唇から目が離せねぇ俺は、志織の乱れた髪を指で整えるとその綺麗な髪に口付けた。ふわっと甘いシャンプーの香りなのか分かんねぇが鼻腔を刺激して今にも理性のタグが外れそうだ。
 北村の気持ちを最後まで汲んでやれたンかはわからねぇが、今後は志織に対して我慢はしねぇ。もう俺には目の前の、下に組み敷いている志織しか目に入らねぇ。

「狡いよかっちゃん、ちゃんと言葉にしてよかっちゃん…」

 泣きそうな顔。けど嫌いじゃねぇ、今は。だってンな幸せそうな声出してんじゃねぇよ、バーカ。

「志織が好きだ。志織しか興味ねェよ。だから続きさせろ」
「…ん。いいよ、かっちゃんになら何されても。大好きだよかっちゃん」

 ギュッと首に腕を回して俺に抱きつく志織を片手で抱き返した。柄にもなく緊張している自分がいて、ゆっくりと距離を作ると、心のままに志織に口付けた。初めて触れた志織の唇は想像より遥かに柔らかくて、なんか甘めェ味がする。

「ンだこれ、癖になるわ」

 ちゅ、と唇が触れ合う度に鳴り響くリップ音。呼吸をするのにほんのり開いた志織の唇に舌を這わせれば口を開けて俺の舌を受け入れる。後頭部に回されている志織の手から力が抜けんのがわかった。

「かっちゃんやだ、もっとキスして」

 恥ずかしいのか目の上を片手で隠す志織にフッと笑いがこみ上げる。手退かしてやるっつー意味も込めて俺は志織のその手に唇を落とした。「ンッ」そんな甘ったりぃ声にまた口端が勝手に緩む。耳にかかった柔らかな髪の毛を退かすと、空色のメッシュが枕元に落ちた。そのまま手にあった唇を耳に移動させて、真っ赤な耳朶をぺろりと舐めると志織がバタバタと脚を動かす。

「耳とか無理ッ」 
「いーから黙ってろ」

 んう…と唇を尖らす志織の耳についてるピアスを勝手に外して縁を舌でなぞると仔犬みてぇな声を漏らした。右と左交互に舐めただけで、志織の目はもうトロンとしとって、俺を無駄に誘惑してくる。首筋をゆっくりとキスでつたっていき、制服のブラウスに手をかけた。胸元についてるネクタイをスルスルと外してベッドの下に落とす。そのまま志織のブラウスのボタンに手をかけると不安気な顔で俺を見ているから髪を撫でてやる。

「緊張する」
「あぁ俺もだァ」
「え?ほんと?かっちゃんでも緊張するの?」
「…いーや、してねぇよ。するわけねェだろ」

 こんな時でも素直になれねぇ俺の言葉を信じて「そうだよねぇ〜」なんて笑う志織に愛おしさしさしかない。こんな破天荒な俺の相手できんのは、志織ぐれぇしかいねぇと断言できる。俺は志織の手を掴んで自分の胸に当てた。キョトンとした顔で俺を見ていた志織が、数秒後真っ赤になる。

「すごい早いよ、心音」
「仕方ねェだろ、俺だって初めてなんだから。まァでも初めてだろーがなんだろーが、うまくできねぇことはねぇがな」
「ぷ。かっちゃんらしいや」

 志織の緊張も少しだけ解けたようだった。素に近い笑顔で笑う志織のブラウスのボタンを外し終えた俺はそれをサラリと志織の腕から外す。薄ピンクの下着の上から胸に触れると「めっちゃ恥ずい〜」やっぱり腕で顔を隠そうとする。

「顔見えなきゃ意味ねェだろ、見せろやァ」

 少しだけ強引に志織の腕を解くと真っ赤な涙目で俺を見つめた。やべぇなその顔…こっちのがもたなくなりそうだぜ、たく。
 俺は素早く背中に腕を入れ込み、後ろのホックを指で外すと、志織の下着も腕からスルリと抜いてみせた。上半身まっさらになった志織は、隠したいのを我慢して目を閉じている。それをいいことに俺は志織の柔らかい胸に手を添えて、円を描くように動かした。途端に身体ン中に電流が走るような感覚がして、俺の中に微かに残っていたであろう理性のタグがプチッと音を立てて切れたのが分かった。

「ンッ、やっ、かっちゃんッ」

 なんとも言えねぇ声を漏らす志織の尖端を舌で転がしながら甘咬みするとゆらりと腰が揺れた。そのまま腰に手を這わせてボディラインをゆっくりとなぞるとまた志織の口から熱い吐息が溢れた。正直脳内はもう何がなんだかわけがわからんが、それでも俺の本能は志織を確実に求めてやまない。
 指でカリっと尖端を掻くとやっぱり腰を浮かす志織に内心笑いが止まらねぇ。舌で存分に愛撫を繰り返しながらも俺の手は止まることを知らずに志織の至るところに触れていく。
 元々体温の高い俺の身体は汗ばんできて、邪魔なもんは全て脱ぎ捨てろと言わんばかりに志織から一旦降りて下まで全部脱ぎ捨てた。当たり前に急所に飛んでくる志織の視線に隠すことなく見せつける。

「色々我慢がきかねんだァ、脱がすぞ」

 無言の志織はそれでもコクリと小さく頷いた。俺はポンと一度髪を撫でるとそのままスカートと下着を剥ぎ取ってベッドの下に落とす。当然ながら脚を閉じている志織に、俺は志織の膝を立ててそこをぐっと左右に開かせた。

「無理〜かっちゃん、無理無理〜」

 脚を空中でバタバタさせる志織に、「俺も無理だっつーの」なんて言葉を返すと志織は首を横に振って拒否をする。けど今更止めらんねぇ俺は閉じたがる志織の脚の間からそこにツプっと指を挿れる。

「ひゃああぁぁぁっんっ」

 一際でけぇ志織の声に俺はトロトロの子宮内をゆっくりと動かしていく。少し奥まで挿れこむと、んぅっと、こもった声を出すから「痛てぇか?」そう聞いた。

「わかんないよ…でもかっちゃんだから平気。もっもいっぱいかっちゃんに独り占めされたい、」

 言われなくてもしてやらァ。俺は志織が初めてだとふんで、指を何度も出し入れした。最初は眉間にシワを寄せて難しい顔をしていた志織も、指を2本にした頃からほんのり肩を揺らして呼吸を繰り返すからびちゃびちゃなそこを何度も指で擦った。つかそろそろ俺が限界だ。ぷっくりと顔を出している突起の尖端を指で摘むと気持ちよさそうに目を閉じて甘い声を出す。俺はそのまま指で子宮をぐりぐりと擦りながら舌で突起をちろちろと舐めた。シーツを掴んで喘いでいた志織がやっぱり泣きそうな顔で「かっちゃん、待ッ!!おかしくなっちゃッ!!!」ガクガクガクっと身体を震わせたと思ったら子宮に挿れていた指がきゅううっと締め付けられた。濡れた口元を手の甲で拭って俺は志織の方に顔を寄せるとそのまま間髪入れずに口付ける。馬乗りで舌を絡ませる俺の腕を儚く掴む志織が可愛くて俺だけのものにしたい。こんな風に甘い声を漏らす志織は俺以外には絶対ぇ見せねぇ。

「限界だ、挿れんぞ」

 俺の言葉にまた涙目でコクリと頷く志織の髪を撫でてベッドから降りると机の引き出しに仕舞い込んでたゴムを持ってきた。

「かっちゃんそれなんで持ってるの?」

 息を整え終えた志織が興味津々に聞く。

「一応のけじめだかンな。おい脚開け」

 自身にハメた俺は志織の脚をまたM字に開かせて入口に宛てた。さも早く中に挿いりたがってる自身の根本を掴んで志織の子宮にゆっくりと挿入する。指とはあきらかに大きさも太さも違うせいか、中はすげぇキツくてこれじゃあ挿いりきらねぇ。

「力抜けェ」
「んう」

 少しだけ圧迫感が薄れたからそのまま更に奥へと挿れこむ。途中で志織が顔を背けたから動きを止めると、スルスルと俺の首に腕をかけて下からギュッと抱きついてきた。

「オイ無事か」
「ん。大丈夫かもしれない…」

 志織の言葉に俺は一気に最奥まで挿入した。めちゃくちゃ吸い付いてくる志織の中は既に気持ちが良くて、なんなら少し動けばイケるかもしれねぇ。ふぅ〜と息を吐き出すと俺は志織の顔の横に手をついて指を絡めた。

「動くぞ」

 言葉のすぐ後、俺は挿入した自身をギリギリまで引き抜いてまた最奥へと挿れこむ。ギシギシとベッドが揺れて軋む音が聞こえる。自分の下には俺と同じ動きで揺れてる志織がいて、揺れる度に小さく「ンッ」と声を漏らしている。さっきからすげぇ熱くて頭頂部から垂れる汗が志織の首元に落ちてそれが妙にエロい。ハッ、ハッ…と小刻みに小さく呼吸をする俺と志織。色んな音が混ざり合って俺たち二人を繋いでいる。
 元々感情を言葉にするのは苦手だ。志織やデクみてぇに思ってる事を口にする前に諦めてしまう。けど思う。そんな俺にも志織はいつだって笑顔でついてきてくれて…

「クソっ…志織…好きだッ」

 感情がこんなにも抑えきれねぇのは初めてで、俺の腕にギュッとしがみついて喉の奥から声を漏らす志織が愛おしくてたまらねぇ。律動を早める程に志織から漏れる声はデカくなっていく。

「かっちゃん…またイッちゃうッ、ンンッ、ふぅっ、」
「俺もヤベェッ」

 頬に手を添えて口付けると、きゅううっと志織の子宮内が締まった。ビクビクと腰を揺らして悲鳴みてぇな声をあげる志織に続いて俺も頭ん中真っ白になるくれぇ、久々に有り得ねぇ量の白液をそこに出し尽くした。
 バタンと、志織の上から降りて横に寝転がる。馬鹿みてぇに心音がどくどく激しく脈打っていて、俺は志織を片手で抱き寄せると、額に口付けた。

「かっちゃん」
「あ?」
「好き!大好き!めちゃくちゃ好き!」
「煩ぇ、知っとるわ」
「何回でも言いたいんだよ」
「なら、何回でも聞いてやる、特別に」

 幼馴染みだった志織は、俺の腕の中で俺の女へと色を変えた。そんで俺はやっぱり柄にもなくこの恋を大事にしてぇと思わずにはいられねぇんだ。
 ンなこと、誰にも教えねぇけど。

―――完。