東方神起 ユノ
僕とチャンミンの兵役も無事に終わり、韓国でのカムバックも終え、日本でのカムバックを控えていた矢先、世界中にコロナウイルスが広まってしまった。それ故に、韓国はともかくとして、日本での活動が難しくなっていく中、日本に残してきた恋人のアコと逢えない日々が続いていて心身共に疲れきっていた。逢いに行こうと思えば逢えないわけではない。でも空港での隔離期間などを考えると、芸能界で仕事をしている僕にはやっぱり難しく…かと言って、日本以上に感染が爆発している韓国にアコを呼ぶ事もできずに、寂しい想いを抱えていた。
それでも時が止まる事なく動き続けていて、漸く日本に行ける事になったのは、アコと逢えなくなってから2年もの月日が経っていた。もちろんその間僕らはテレビ通話やカカオトークやらで頻繁に連絡を取り合っていたから愛が途切れる事などなかった。けれど、やっぱり姿を見せて対面するのとしないのとでは何もかもが違う。僕は逸る気持ちを抑えて日本行きの飛行機に飛び乗ったんだ。
「ヒョン、嬉しさが顔に出てますよ」
「え?そう?」
「はい。あまり羽目を外さないようにしてくださいね」
「うん気をつけるよ。チャミナも、久々の日本楽しんでね」
「言われなくとも楽しみますよ」
相変わらず口煩い弟だけど、僕はチャンミンがいないと絶対に生きていけなかったと思う。今日まで頑張ってこれたのは、傍で一緒に戦ってくれたチャンミンが居たことと、アコが僕を愛してくれたことだと思う。
日本の空港に着くとまずはPCR検査をし、陰性が確認されると漸く開放される。久々の日本に降り立って大きく息を吸い込んだ。うん、日本の空気だ、最高だな。ふと視線を移せば、土産屋が目に入ってついついアコと一緒に食べようとあれもこれも手にしていた。
ピンポーン。
それからアコの家へと向かう。運良く誰に気づかれることもなくすんなりとここまで辿り着けた。呼び鈴を鳴らすとすぐに玄関のドアが開いて「オッパ!」アコが僕にギュッと抱きついてきた。
「アコ、久しぶり。元気だった?」
コクコクと頷いてるアコはぐずっと鼻を啜らせて泣いていて。そんなアコを僕はなんの隙間もないくらい強く抱きしめたんだ。
狭い玄関で靴も脱がずにどれだけそうしていただろうか。
「オッパ、荷物!ごめんなさい私気づかなくて。あがってください。今紅茶煎れますね」
「コマオヨ、アコ。アコの部屋はとてもいい匂いがするね」
買ってきたお土産を持って奥にあるリビングに置くと大きく伸びをした。
2時間程度の飛行でも久々のフライトだった事もあって少し身体が重たい。テレビ通話で画面越しによく見ていたアコの部屋の風景をマジマジと見つめるだけでつい頬が緩んだ。脳内にチャンミンの羽目を外さないようにって声が浮かんだけれど、2年ぶりに恋人と再会して舞い上がらない男がいたら見てみたい。
僕は立ち上がると待ちきれず、キッチンで紅茶をコップに注いでいるアコをふわりと後ろから抱きしめた。
「わ、オッパ!どう、したんですか?」
「んー。我慢できなくて。アコこっち向いて…」
項に唇をくっつけてそう云うと、アコがこっちを振り返ってほんの少し僕を睨んだ。え?なんで?そう思った瞬間――「オッパ!狡いです」頬を紅く染めたアコは俯いていた顔をあげて背伸びをすると僕の頬に小さくキスをくれた。一瞬何が起こったの分からなかったけれど、確かに頬に残っているアコの感触にドクンと心臓が大きく脈打った。あぁもう君はどうしてそんな可愛いことをしてくれちゃうかなぁ。
「すごく逢いたかったですオッパに」
「うん僕もだアコ。もう一秒も離したくない」
手を止めたアコをその場で抱き上げるようにお姫様抱っこをすると僕はそのままリビングにある二人用のソファーにゆっくりと降ろす。サラリとアコの綺麗な髪が揺れてソファーに落ちるとそれを指ですくって口づける。焦らしているわけじゃない。でもアコの顔が見たくて、アコがどんな反応をするのか確かめたくて僕は動作一つ一つをゆっくりとこなす。
「オッパ…」
ギュッと首に巻き付いて後ろで腕を交差するように身体を僕に寄せたアコはそのまま目を閉じて唇を重ねた。頬に続き唇にまでアコからのキスにテンションマックス上昇して僕はアコの上に覆いかぶさるようにしてその可愛らしいピンク色の唇を重ねた――
どれくらいこうしてじゃれ合っていただろうか。触れたくても触れられない遠距離の僕たちは時間が限られている。でも今日は自由だ。今夜は誰に邪魔される事なくアコと二人きりで過ごせる。それがどれだけ嬉しいのか、ある意味こんな状況になって気づけたんだと。
こうしてアコを抱きしめられる事全てが奇跡で、この愛を僕は一生かけて大事にしようと改めて思えるなんて。
「オッパ、好きです。えっと、チョア…サランヘ…」
ドクンと心臓がまた大きく脈打った。慣れないカタコトの韓国語で僕に愛を伝えてくれるアコが好きでたまらない。今はまだ僕らの未来を決めることはできないけれど、それでも僕の中にはアコ以外の人なんていやしない。
ソファーの上でアコの隣で漸く一息ついて紅茶を飲もうとしたというのに、アコの言葉に僕の身体はまた熱を帯びてしまいそう。
「サランヘ、アコ」
「ふふふ」
「やっぱりもうちょっとイチャイチャしてもいい?」
「いいですよ。私もオッパにいっぱい愛されたい」
カタンとテーブルの上に紅茶の入ったコップを置くと、徐ろに僕の首に腕をかけるアコ。2年の間になんだか女としても大人としても凄く余裕が出てきたというか、歳上なのは僕の方なのにアコに全てを委ねたくなってしまう。
僕の上に乗っかってラッコ座りするアコの胸元に顔を埋めるととても安心できて、僕はそっと目を閉じた。こうやって肌の温もりを直で感じられる距離にいる事がどうしょうもなく嬉しくて、僕はまた明日から全ての事が頑張れるんだと思えた。
好きな人の笑顔は何にも変えられない宝物であって、そう思える唯一無二の存在のアコを僕はもう一度ソファーに押し倒した。
白い湯気のあがっていた紅茶が冷めてしまうけれど、この愛を止められない僕をどうか許してほしい。
―――【完】
