キメ学 煉獄杏寿郎

 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン…

「では今日の授業はここまでだ。各自復習しておくように、以上」

 トンと授業で使った教科書と資料を教卓の上で整えると俺は教室を出ようと歩き出す。

「煉獄先生!ここ分かんなかったから教えて欲しい」
「あたしもー!」

 俺のクラスは熱心な生徒が多かった。今は歴史好きな女性を歴女等と呼ぶ風習もあるようだが、自分の受け持つ教科をこうして熱心に気にかけてくれるのは教師として嬉しいことであった。

「どれ、」

 中間試験を間近に控え、季節も梅雨に入ろうとしている今、気温は高く教室内もジメッとした暑さを感じている。故にYシャツの袖を捲りあげ、教卓の上で生徒の持ってきたノートを覗き込むとそこには授業で説明した部分が開かれていた。

「ここは少し説明が足りなかったか、すまない。来週もう一度復習しながら説明しよう。とりあえず今ザッと説明できる問題ではないから、ここ以外を復習しておいで」

 ポンポンと、生徒たちの頭を撫でてやると皆、元気よく「はいっ」そう答えて席に戻っていく。そんな生徒たちに混ざって後列に座っている結菜に視線を向ければ、机に頬杖をついてムスっと唇を尖らせている。そんな姿も正直可愛いと思ってしまうくらい俺は心の底から結菜を愛していて、ここが学校や教室でなかったのなら、今すぐ抱きしめて甘やかしてやりたいくらいだ。
 残念ながらそんな事はできないのが教師という立場であるから、俺は不機嫌そうな結菜に小さく微笑むと今度こそ教科書と資料を脇に抱え、職員室へと向かった。
 自席について今日の授業の復習箇所にポストイットを貼っておく。さて、結菜との逢瀬に行こうと席を立ち、伊黒に「来週の準備をしてくる」そう言うと、「懲りないやつだな」なんて笑われた。
 どう思われても俺は結菜を諦めきれないのだから仕方がないが、生徒相手に熱を入れている事を知られれば、よく思わない人は伊黒の他にもいるであろう。最も俺たちの関係を知っているのは伊黒だけだが。
 廊下に出ると、いつものように我妻が冨岡に怒られていて、竈門もまた不死川と言い争っている。校庭では試験前最後の部活動が始まり、野球部の球打ちであるカキーンという音が夏へのカウントダウンを連想させた。

「すまない待たせたな」

 ガラリと社会科準備室のドアを開けると、窓の外を眺めていたであろう俺の可愛い恋人、結菜が振り返った。ちょっと膨れているその頬を指で突くと「なんですかぁ」機嫌はなかなか直りそうもないな。

「どうした?怒っているのか?」

 結菜の腕を引いて椅子に座った俺の前に立たせる。開いた脚の間に結菜を閉じ込めるようにホールドすれば俺の肩に手を乗せてムゥっと唇を尖らせた。

「別に怒ってませんよー。ただ先生が他の子と仲良くしてるから…」

 やはり不機嫌の原因はそれか!と、微笑ましく思う。こんな俺相手にヤキモチを焼いてくれる結菜を可愛いとしか思えなくて、俺は俯いている結菜を下から覗きあげると目が合って真っ赤になった。そのまま結菜の頬に手を添えて指で唇の割れ目をなぞるとビクンと肩を揺らして視線を逸らす。焦らすように指を結菜の口に少し入れ込むと、それをチュっと舐めるから俺の身体が一瞬で熱くなるのが分かった。

「結菜、奥に行こうか」

 社会科準備室の更に奥にある俺の仮眠室と化しているそこに置かれたソファーに結菜を誘導する。頬を赤らめながらもまだ気に入らないというような顔の結菜の頬に触れて、俯く顎に指をかけてクイと持ち上げると、熱く揺れている結菜の瞳が俺を見つめた。

「悪かった。許してはくれないか?」
「別に怒ってないです、」
「ならば、その愛らしい唇に触れてもいいか?」

 コクリと頷く結菜に俺は迷うことなくその唇を塞いだ。学校のある日はこうして毎日結菜と逢引している。何百、いやもう何千回とこうして口づけているかもしれない。それでも熱が冷めることはなく熱く燃え続けている。ゆっくりと舌を絡ませると俺の太腿に手を置く結菜が、スラックスをキュッと握る。それがまた可愛くて俺はなおも口づけを深めていく。後頭部に手を添えてそのままソファーに押し倒すと、結菜が「先生…」甘く呼んだ。
 サラサラの髪を撫でてあげると気持ち良さげに目を細める結菜の耳元に唇を移動させ、髪を退かして現れた耳を口に含むと結菜が俺の下で小さく揺れた。

「分かっているだろう結菜…。俺が愛しているのは結菜だけだと」
「はい。でもやっぱり嫌。結菜以外の生徒と仲良く話してる先生は、見たくないです」
「そんな可愛いことを言うのはこの唇だな」
「もう」

 ペロリと唇を舐めるとハァッと熱い吐息を漏らした。ゆっくりとセーターの上から結菜の柔らかな胸に触れる。円を描くように揉むとまた結菜が肩を揺らせて呼吸をした。その顔も何もかもが愛おしくて俺は逸る気持ちを抑えて結菜のブラウスをスカートから捲りあげると、ピンク色の下着の上からそっと触れた。

「ンッ先生…」
「外してもいいか?」
「ん」

 俺の言葉に少し背中を浮かせてくれた結菜。その隙に、背中のホックを外して下着を首元まで持ち上げる。ツワになった胸の尖端は既にピンと勃っていてそれを指で突くと「んアッ」と小さく喘いだ。それを合図に俺はソレを口に含む。舌で転がして吸い上げるとビクンと結菜が大きく息を吐き出す。

「気持ちいいか?」
「聞かないで、そんなの」

 真っ赤な目で俺を見上げる結菜に、自分の下半身が熱く膨張するのが分かった。
 まだ冷房を入れていないこの部屋は窓から入ってくる風だけが頼りで、ただ窓を開けている以上当然ながら声は出せない。夏に近づく程汗だくになりながらするこの行為を、それでも止めることなどできそうもなかった。
 捲りあげた結菜のブラウス。そのままへその穴に舌を絡ませると結菜の腹が上下に動く。

「先生、擽ったい」
「はは、ここはだめか。ならばこっちはどうだ?」

 スルスルと俺はスカートの中に手を入れて下着の上から割れ目をツーっとなぞった。途端に結菜は口元を手で押さえて「んうッ」と籠もった声をあげる。直接触らずとも分かる結菜の濡れ具合に毎回俺は馬鹿みたいに嬉しさを感じてしまう。男として好きな女を喜ばせてあげられている事はとても嬉しいことだと自分を誇れるくらいに。

「中に触れてもいいか?」

 胸の尖端を舌で転がしながら結菜を見上げるとコクリとまた小さく頷いたから俺はニコリと微笑んでから下着の中に指を入れ込むと、想像以上にトロリと指を締め付けてきた。
 クイと、中に入れた指をほんの少し折り曲げる。続けてもう一本指を中に入れるとより一層キツさが増す。奥の壁を擦るように中で指を動かすと、この部屋に厭らしい水音がくちゅりと響いた。勿論外には聞こえないであろうけど、それでも俺と結菜を興奮させるには十分で、執拗に指を動かす俺に、結菜の声にならない声が耳を掠めた。

「先生、イッちゃう…ッ」

 愛らしい声でそう言う結菜の下の突起を親指でくねりと弄れば「ンンンウッ!!」ふわりと腰を浮かせた後、ビクビクと下半身を揺らせた。中に入った俺の指をこれでもかというくらいに締め付けてくるから更に奥の壁を擦ると「ンンンン――ッ!」口元を押さえた結菜が首を横に振ってまた震えた。
 肩を大きく揺らせて呼吸を繰り返す結菜の中から指を取り出すと、トロリと愛液がソファーに滴る。そのまま指を舐めていると結菜が俺のネクタイを引っ張って顔を寄せるから抱き上げて口づけを交わす。舌を口内で絡ませて、上唇を甘噛みすると結菜がぐったりと俺の胸に身体を預けた。

「結菜、大丈夫か?」
「はい。先生の身体、温かい…」
「はは、俺は普段から鍛えているせいか体温が高いんだ。汗臭くないか?」
「全然。結菜、先生の匂い大好き」
「俺も、結菜の匂い好きだよ。それからそーゆう大人びた顔つきも…」

 また顎に指をかけてクイと上を向かせて結菜の唇を堪能する。口づけるだけで幸せな気分になれて、止まらない欲で脳がいっぱいになっていく。口づけながら結菜をまたソファーの上に押し倒した。焦りそうになるのを必死で隠して俺は自身のスラックスを脱いで下着を膝の裏まで下げた。完全にそそり勃つ自身の根本を掴んで「挿れるぞ」結菜の耳元で甘く囁く。コクリと頷いた結菜は俺の首に腕をかけてその手を後ろで交差する。身体がグッと近づいて、柔らかな結菜の胸がぽよんと俺の胸板に触れて心拍数があがった。
 こんないつ誰に見つかるか分からない危険な場所で服を脱ぐこともできずにするこの行為がだめだと分かっていながらも止めることができないのは、相手が結菜だからなんだと思う。自分がこんなにも我慢のない男だったとは思いもしない。
 けれど――誰しも、本気で誰かを愛したのなら、そうなってもいいんじゃないかとすら思えた。俺の下で大きく息を吐き出す結菜の最奥まで到達するだけで全身が心地良く、俺は一度結菜の額に口づけると、ゆっくりと中に挿れた俺自身を出し入れし始めた。ゆさゆさと身体を揺らす結菜と俺。ギシっと小さく軋むソファー。なるべく音を立てないようにとするも、つい気持ちが良くて忘れてしまいそうになる。結菜の中に挿いった瞬間からもう心地良く、俺の下で妖艶な表情をしている結菜が堪らなく愛おしい。できるのならその顔は俺以外には見せて欲しくない。かっこ悪くてそんな事、結菜には言えまいが。

「先生ッ、好きッ…」
「俺もだッ…ハァッ…君を愛してるッ…ずっとな」

 嬉しそうに目を細める結菜にまた上から口づける。ソファーの上で指を絡めると結菜の子宮の中がキュウンっと締め付けられるのが分かった。

「結菜、イくか?」

 コクコクと頷く結菜。達する前に必ず子宮内を締め付けるからもう分かっている。ギリギリまで抜いた俺自身を結菜の心地良い所を擦ってまた最奥へと挿れ動かすと結菜が首を横に振った。これが彼女の達する合図だった。
 ここが俺の部屋だったのなら「無理ッ、イッちゃうっ」そう叫んでいたかもしれないが、外からの生温い風と、校庭から聞こえる部活音に結菜はゴクリと唾を呑み込んだ。その瞬間、いっそう俺を強く締め付ける。キュウウウっと特急列車がブレーキをかけたように結菜が甘ったるい声を漏らした。そのまま俺の絶頂まで引き上げる。

「クッ…」

 速めた律動を止めるとドクドクと結菜の中に出ていくのが分かった。ハァッ…口呼吸を繰り返しながら、ポタリと俺の汗が結菜に落ちて、着ていたYシャツは汗で湿っている。
 お互いの息が整うまで数分、漸く自然呼吸になった俺達は、諸々処理をして制服を整える。こーゆう時間は少し切なさを含んでいて結菜と離れるのが惜しい。

「早く、結婚したいな…」

 つい本音が口から飛び出せば、結菜は泣きそうな顔で俺に飛びついてくる。

「結菜も、早く先生と結婚したい!」
「あぁ、ほんとにな」

 まだ未来を決められない俺達だけれど、それでもお互いの求める未来はどうやら同じのようで、それを実現させる為に、この関係はこの先も誰にも知られちゃいけないと、肝に銘じなければならない。
 それでも二人で過ごすこの時間だけは、少し我儘に君を求めてもいいだろうか?
 カーテンが揺れて陽の光が差し込む社会科準備室の一角。誰にも秘密の俺と結菜の愛部屋。

―――【完】