ハイキュー 影山飛雄

 久しぶりの休日だった。試合の翌日ともあって影山は朝一でランニングをしていつものトレーニングを終えるとシャワーを浴びて自分の部屋に戻る。
 ドアを開けた瞬間、ベッドの上で漫画を読んで脚をパタパタとさせている松村が振り返った。

「あ、影山お帰り!」
「あぁ来てたのか」
「うん!せっかくの休みだから一緒に過ごそうと思って」
「あぁうん」

 何とも爽やかな松村の笑顔に自然と影山も頬を緩めた。感情表現がどちらかというと苦手なタイプの影山だが、松村の前ではその表情も見てわかるぐらいに柔らかくなっていることを知らずにいる。
 ベッドの上、ムクリと起き上がった松村はタオルを肩にかけている影山を見て手首をクイクイと動かして自分の方へ呼び寄せる。

「乾かしてあげるよ、こっち来て」
「え?いいのか」
「うん!」

 素直にベッドに腰掛けた影山の後ろから松村の小さな手がタオル越しにワシャワシャと黒髪を拭いてくれる。人にこうして拭いてもらうのなんていつぶりだっただろうか?なんて遠い記憶を呼び戻そうとしても影山の脳内にはバレー以外の出来事は残ってもおらず、すぐに諦めた。
 バレー第一、バレー最優先以外の何者でもないこの影山が、唯一心を許せる相手は、同じプレイヤーの日向と、この松村ぐらいであろう。難しい影山の性格についてこれるといった方が正しいのかもしれないが。

「久しぶりだね、こんなゆっくりした朝…」

 松村の声に影山の心臓がドクンと脈打った。勿論バレーが第一だけれど、決して松村のことを疎かにするつもりはなかった。それに影山だって年頃の男という事もあり、それなりに諸々興味はある。勿論付き合ってからそのような事もした。――が、それが一体どれくらい前だったかは定かじゃなかった。

「なぁ」
「ん?」

 後ろを振り返った影山が、まだ乾ききっていない黒髪を揺らせて松村の腕を握ってそのまま自分の方へと引き寄せた。ちょうどベッドの上に押し倒すような形で、松村と天井との間に身体を収めた影山は、迷うことなく松村の唇に自分のを重ねた。
 いきなりのキスに脳内真っ白の松村だったが、止まりそうもない影山の唇にそっと目を閉じる。自分達にだってたまにはこんな甘ったるい時間があっても悪くない…なんて内心思い、影山の火照った背中に腕を回せば吐息混じりの影山の声で「悪い、ムラついてる」なんて可愛らしい言葉が耳元に落とされた。
 口内で舌を絡ませるとなんとも言えないリップ音が部屋に響き渡る。こんな明るい時間帯から始まる行為に恥ずかしさすら覚えた松村だけれど、影山のがっつく姿は少々見ものだった。キスの間に薄っすらと瞳を開けると目を閉じた影山が松村の視界に入ってそれだけで胸がキュンと音をたてる気がした。
 何分唇を重ね続けただろうか…ぷっくりと赤くなった唇から影山が名残惜しく舌を抜けば、二人の間を透明の糸が小さく舞った。

「松村、いいか?」

 何を今更…と、松村は笑う。先程のムラついてる宣言で今後の展開はよめたというのに、一々確認する所がどうにも可愛いと思えて堪らない。手を伸ばして影山の頬に触れた松村は「いいよ」そう言うと、影山の頬はクッと嬉しそうに緩んだ。
 久しぶりに触れる松村の身体は綺麗な曲線を描いていて、すべすべの肌と柔らかな感触に影山の呼吸が自然と荒くなっていた。普段バレー以外の事が入らないその脳内は今はもう松村の事しか受け付けなく、スッと胸元に触れるよう服の中に手を差し込んで柔らかな温もりに触れた。

「やべぇ」

 一言そう呟いた影山は、次の瞬間少しばかり強引に松村の服をバンザイで脱がせて現れた下着の上からそっと触れるとドクンと身体が熱くなった。今すぐ直で触れてしまいたい衝動をどうにか殺して背中のホックを外すと、松村の腕から下着を引き抜いた。ツワになった胸の尖端をちゅうっと唇に含めば影山自身の下半身が熱く大きさを増すのが分かった。

「アンっ影山ぁッ」
「バカお前、んな声出すな…理性がぶっ飛ぶ…」

 最早まだ影山に理性が残っているのかすら疑問に思えたけれど、それを分かっていない影山がやっぱり松村には可愛く思えて仕方がない。影山のサラサラの黒髪に指を通してキュッと握る。こういう瞬間が堪らなく愛おしくて、影山と両想いになれた事が最高に嬉しい。松村の心は満たされていて、影山の視線、舌使い、指に、身体を翻弄されていく。
 いくら二人が付き合っているとはいえ、バレー部員はこんな乱れる二人を想像すらできないだろう。けれど影山だって普通の高校男児。性への興味は人並みだ。

「アチィ、俺も脱ぐ」

 着ていたTシャツをガバリと脱いでベッドの下に落とす。そのまままた松村の上に体重を乗せて甘く唇を貪った。

「なぁ、どこが気持ちいいの?」
「へ?」
「松村の気持ちいいとこ、触りてぇ」

 突拍子のないとんだ下ネタに松村はブッと吹き出す。至って真剣な影山は何故自分が笑われたのかも分かっていないだろう。

「もー影山ってば、ほんと大好き」

 松村の手は影山の手首を掴んで自分の股の間へと導く。影山はコクリと頷いて松村の細いウエストに手をかけると、履いていた短パンを脱がそうとボタンを外す。
 ―――プルルルルル〜
 聞こえた着信音に一瞬二人の思考が止まる。けれど次の瞬間、何事もなかったかのように情事を続ける影山。勿論スマホは鳴りっぱなしで、なんなら画面には【着信 日向】って見えている。スルスルと松村の短パンを脱がせた影山は、そのまま下着に触れようとして「影山、電話鳴ってるよ」…松村の声に視線を向けた。

「対した用じゃねぇから無視する」

 そう答えるなり指を下着の中に入れ込む。不意にきた快感に松村は「ンアッンッ!」と、甘い声を漏らすが、今もプルルルルル〜と鳴り続けている着信が気になって仕方がない。

「でも日向、急用かもしれないじゃん?」
「俺は急用じゃねぇと思ってる」
「もしかして、出ない気?」
「当然。こっちのが大事。これ以上に大事な用事なんてねぇよ」

 …しまった。松村は影山の言葉にときめいてしまいそうで、「おーい影山〜!」そう叫んで手を振っている脳内の日向が小さくなっていく。

「これ脱がすな」
「え?うん」

 気づけば影山の手は松村の下着を脚から抜いていて、そのままM字に開かせて伸ばした舌で子宮内をぺろりと舐め取った。途端に松村の身体に走る快感。今までで一番の心地良さが奥から突き上げてくるような感覚だった。肩を揺らせて大きく呼吸を繰り返す。影山の舌が子宮の奥へ奥へと擦っていくから脚がビクビクと生まれたての子鹿のように震えてしまう。

「気持ちいいか?」

 そんな所で喋るな!なんて言いたくても言えない松村は、コクコクと頭を上下に振ると、満足気に影山が笑った。トロトロの子宮内に舌を入れたまま、既に顔を見せている突起を指でギュンと摘むと、松村の腹がビクンと揺れた。

「アッ、アンッ…」

 小刻みに短く言葉を紡ぐ松村が涙目で「影山、イッちゃうッ」そう言うから影山は更に舌を奥へと入れて強くジュジュっと吸い上げた。その瞬間、舌を入れ込んでいる子宮内が強く絞まっていって、脚をガクガクと揺らせて松村が一際大きく鳴いた。ハァッ…口を開けて呼吸を繰り返す松村の上に乗っかった影山は「可愛いな松村」なんて笑う。その顔、絶対に自分以外には見せて欲しくない…それを口にしたら影山はどう答えるだろうか?
 伏し目がちな影山の視線は部屋の中をキョロキョロと見回していて、一旦松村の上から降りると引き出しを開けてそれを取り出す。

「今日3個ぐらい使わねぇ?」
「え、3個も?」
「あぁ、いーだろ」

 とんでもなく可愛い台詞を笑いながら飛ばす影山は、少し不慣れな手付きでゴムを自身にハメると、ふぅと息を吐きだして根本を掴んでまた松村の上に戻ってきた。入口に宛がって数回擦り付けると、「挿れんぞ」そう言うが、グッと腰を押さえて奥まで異物感と共に挿いるのが分かった。松村は力を抜いて影山を受け入れると、小さく息を吐き出す。最奥の壁に辿り着くと影山も同じように息を吐きだして、ゆっくりと律動を始めた―――プルルルルル〜、またもこのタイミングで【着信 日向】が鳴り響く。勿論ながら聞こえてないフリで律動を深める影山に、松村も何か言ってやりたいけど、気持ち良さが勝っているから声にならない。
 きっと電話の向こうで「何やってんだよ影山は」なんて日向が小首を傾げているのかもしれないが、今の二人にはそれすらも考えられない。それでも一応「いいの?」と松村が渾身の力をこめて聞けば「無視」即答する影山にくすりと笑いが込み上げた。
 軋むベッドの上で影山の鍛えられた背中に腕を回すと、高めの体温で抱きしめ返してくれる。時々ちゅ、ちゅ、と耳や頬に優しく口づける影山は、火照った身体を動かして律動を速めていく。松村の気持ちいい所を探るように色んな所を擦りつけて繰り返す律動。ここから見る景色は絶景で、普段は明るいお姉さんタイプの松村が、頬を赤らめて喘ぐ姿は自分以外に絶対に見せたくないと強く思えるのである。結局、影山も松村も考えることは同じなんだと。好きだと思う気持ちが、相手を独占したくなってしまうんだと。
 影山の手を握りしめる松村が昇天間近なのを悟る。

「イきそ?」
「んッ、影山は?」
「俺もやべぇ…ハァッ…」

 ギリギリまで引き抜いた自身を最奥まで最速で埋めていく。擦れて擦れて気持ち良さが半端ない。あぁもうだめだ、もう無理だと息を小刻みに吐き出すと、「影山ッもうッ、」先にきゅううっと子宮内を最大限締め付けた松村が、中をビクビクと揺らせて達した。それに続いて影山も脳内が真っ白になって動きを止める。ブルブルと震える尻。勢いよく放り出される白濁の液が、ゴムの中から溢れるんじゃないかと思えた程に。

「ハァッ…やべぇ、たまんねぇ」
「影山、気持ちよかった?」
「最高にな、」

 ギュッと松村を抱き寄せて自分の上に乗っけると、思いの外柔らかな胸の感触に、ヘタっていたそれがまた角度をつけてくるような感覚に陥った。

「あー日向、なんだったんだろ」
「あは、今更!電話かけ直してあげなよ?」
「いや、まだいい。あと3個使ってからだ」

 まさか本気だったの?そう言う苦笑いの松村をまたベッドの上に組み敷く、甘い休日の始まりであった。

―――【完】