キメ学 不死川実弥【完】
「ほんっと宇髄の奴ムカつく!私の耳舐めやがったぁあああ!!」ドンッとカウンターにビールジョッキを置いたのは、俺と同じキメツ学園で生物教師をしている弥勒憐歌。男勝りな性格と生徒に示しのつかねェ男口調。見栄えは普通に女だけど、一言口を開けばその喋り方に残念さすら覚える。
ただ俺は、この隣にいるそんな女に心底惚れている。
弥勒の怒り理由は、美術教師である宇髄天元にしょっちゅうからかわれている事にあった。そもそもの原因は俺なんだろうが。今日も昼休みに弥勒の隣に座るなり耳朶をかぷりと齧り付く宇髄に、椅子からずり落ちる弥勒を目にした。それは弥勒への気持ちを持っている俺に対して楽しんでいるとしか思えねぇ宇髄の汚ねぇやり方に正直ブチ切れそうだったが、弥勒に気持ちを伝えてもいねぇのにって所である。
気晴らしに映画でも観て行くか?と誘えばホラー映画を選択し、そのまま居酒屋に入って少々アルコールを摂取すればこんな風に開放的になった弥勒がいつものことながら大声で宇髄の悪口を口に出している。
男女のデートというなれば、ここで例えホラーといえど映画の感想を言い合ったりするもんだろうか。
「思い出すだけで気持ち悪い!不死川、なんとかしろよおおお」
「オイ飲み過ぎだァ。明日もあるんだから考えて飲めよ」
ただでさえ素行が悪く見えがちなんだから、酒の匂いを残したまま出勤でもしてみろ、すぐにPTAからクレームの電話が入るだろう。
「悪りぃな俺のせいで」
そんな言葉をかけた所で、酔ってるこいつには届くわけもなく、閉店間際でカウンターに腕を投げ出して潰れる弥勒を俺はしっかりマンションまで送り届けてやった。
大学の頃から至って変わらねぇ飲み方に呆れ顔をしつつ、ほおっておけねェ自分がいた。せめてこのデートもどきをデートとして認識してくれねぇもんかなぁ…と、漆黒の空を見上げて一つ溜息をついた。
◆
「憐歌ちゃん憐歌ちゃん聞いて!週末彼氏ん家に泊まりに行くことになったんだけどさ、それってやっぱりそーゆうことだよねぇ?」
梅雨のジメッとした暑さの残る放課後だった。廊下の外はシトシトとした霧雨みてぇな雨が降り続いていて無駄に暑い。俺は担任を受け持つクラスの教卓の中に忘れ物をしたからそれを取りに戻って来た。教室のドアが開いてるせいで、中の声は丸聞こえだった。ほとんどの生徒が部活動に行き、それ以外の生徒は図書室だったり帰宅だったり様々な中、ここ2年A組の教室内を覗けば数人の女生徒に囲まれた弥勒が、ラフなパーカーの上に白衣を羽織った格好でキョトンと言い返したんだ。
「そーゆーことってなんだよ?つか、先生ってつけろよ、お前ら」
相変わらずの男口調で言葉を吐き出す弥勒。まぁ俺らも生徒も慣れているといえば慣れているのだが。そんな事より俺は生徒達に一言言ってやりてぇ…
「お前ら、弥勒先生にそんな質問するだけ無駄だぞォ。わかったらとっとと帰れェ」
眉毛を下げて後ろから声をかけると、そこにいた弥勒を含めた全員が俺に視線を移した。
「あーサネセン!いい所に」
俺の話を聞いてねェのか、生徒は俺の所まで駈けてきて腕を掴むと弥勒のいる教卓の前へと引きづられる。不満気に俺を見上げる弥勒は、先程の俺の言葉にイラついている様子。内心面倒くせェと思いながらも、生徒に頼られる事は教師としていい事なんだとは思っている。
「サネセンはさ、最近いつえっちしたぁ?」
「おおおおおお前らぁ、なに言ってやがる!!」
俺の代わりに顔を真っ赤にして弥勒が答えてくれたが、正直なところ随分ご無沙汰だ。目の前のこの女に惚れてる俺は、そこに辿り着くまで先は長いんじゃねェかとすら思っている。惚れたといっても、そうじゃねェかと思い始めたのはここ最近のことだが。でもって、今の若い奴らは平気でンな言葉を口にするとは、俺らの教育もなってねぇなァ…。
視線を弥勒に向けるとあからさまにビクっと肩を透かして視線を逸らされた。
「教えねェ、てめぇら口軽そうだし」
ちょっとだけからかいながらそう言えば、皆目をランランとさせて食いついてくる。教卓に身を乗り出すように俺の方へと近づいて「絶対言わないから教えて!!」なんて疑いのない眼差しで見られ若干心が痛てぇ。俺はクシャリと生徒の髪を撫でると「そーゆーのは宇髄先生に聞けよ。アイツならホイホイ答えてくれんぞォ」美術教師の色男に話題を振るように託した。
それから、軽く放心状態の弥勒の腕を引っ張ると、俺は教卓の中に忘れたファイルと共に2年A組から連れ去る。後ろでギャーギャー騒いでいる生徒達に、「早く帰れェ」そう言って廊下を歩き出した。
「不死川その、本当のところどうなんだ?」
「――は?」
珍しくもじもじして見えるのは、この手の話題に滅法疎く、弱いからだと理解した。
へぇ〜俺のこと少しは気になってんのかァ?なんて思うと自然と口端が緩む気分だ。
「さぁなァ、弥勒こそどーなんだよ?」
「わ、私はあるわけないだろ!!そんな不純異性交遊は断じて許さん!」
ブッ。今どき不純異性交遊はねェだろ。こんな質問で真っ赤になっちまうこの女が、俺にはどうにも可愛く見えてならねェ。自分を重症だと思いつつも、弥勒をどう独り占めすればいいのか日々考えている。やっぱ幼馴染で弥勒をよく理解してるだろう伊黒に相談すっかな…と、今夜伊黒とサシで飲みに行く約束を取り付けようと意気込んだ。
「そのうち教えてやっからよォ」
なんて言葉を弥勒に投げれば、納得できねぇ!ってさっきの生徒達よりタチ悪く地団駄を踏む姿が目に入った。
◆
「好きだと言えばいいだけだ」
ガクン。焼き鳥片手にいとも簡単にそう答える伊黒。まぁ間違っちゃいねェとは思うが、それができねェから相談してんだけどよォ…。
オッドアイの伊黒は子供の頃それが理由でよく苛められていたが、幼馴染の弥勒が尽く助けていたらしい。そんな理由もあって伊黒は今でも弥勒を頼りにしているのは分かるが…思ったより弥勒のこと見てねェのかァ伊黒のやろー。
「それ言ってあの女に気持ちが伝わると思うかァ」
「それは不死川の態度次第だろ。抱きしめてキスでもしてやれ。弥勒ならそれだけで大人しくなる…なんだその顔は」
伊黒の口から抱きしめるだの、キスだの、ンな言葉が出てくるなんて思ってなかったからちょっと拍子抜けしちまっていて、そんな俺をオッドアイが睨みつけてくるから苦笑いを返す。ビールをゴクリと飲み干した俺はカウンターの向こう側にいる店員に向かって「ビールおかわり」そう叫んだ。
「いや、伊黒でもそんなこと言うんだなァと思って」
「…俺は子供の頃から弥勒を知っているが、不死川の前では子供みたいな顔で笑う。それだけ自然体でいるってことなんじゃないか。一つ言えるのは、不死川から動かない限り弥勒から変わろうとする気はないと思う。それが弥勒憐歌って女だ。俺だって弥勒には女としての幸せも知って欲しいと思っている。不死川、お前が本気だと言うのなら、このまま彼女の家に言って気持ちを伝えてこい」
「このまま?」
「あぁそうだ。善は急げだ、頑張れよ」
俺の手中にある空のジョッキに伊黒は喝を入れるようにカチンと乾杯をくれた。
店から出る俺と擦れ違うように甘露寺の姿が見えた気がするが、気の所為だろうと俺はスマホで弥勒に連絡を取った。
運良くまだ学校に残って作業していたらしく、俺はタクシーで学校に戻る。
弥勒のいる生物室のドアを開けると、昼間見たまんまの白衣を着た彼女がそこにいた。
「なんのようだ不死川…お前アルコール摂取してんのか?」
「あぁまァ、伊黒と飲んでた。で、お前に話があって戻ってきた――」
「小芭内と?珍しいな」
「まァなァ。――さっきの、昼間の事だけどよォ、最近いつやったのか?って生徒に聞かれたろ」
俺の言葉に弥勒の顔は見る見る赤く染まっていく。あきらかに動揺していますって態度でソワソワと視線を泳がせる。なんなら実験用のフラスコをひっくり返しそうになっている。
「大丈夫かァ弥勒」
「私に構うな!で、要件を言え!私はお前と違って飲みに行ってる暇などないんだ!」
「落ち着けよ。真面目に言うからよ…――俺と付き合わねェか?」
「―――は?」
「嘘でも冗談でもねェぞ。俺はお前が好きだ、弥勒。お前のこと、独り占めしてェと思ってる」
ポカンと口を開けている弥勒。それでも急に涙目になってぶんぶんと首を横に振っている。それはいわゆる、ノーっつーことだろうか?
大学で出逢ってから一度も弥勒が弱音を吐く所を見たことなんてなかった。ましてや人前で泣く事なんて絶対ぇなく、人として強く生きてんだなァって、その生き方が真っ直ぐで揺るがなくて、男の俺からでもかっこよく見えた。もっと早くに気づけばよかったのかもしれねェが、今からでも遅くねぇ。その人生一緒に歩いていきてェ…なんて柄でもねぇことが脳内を占領していた。
「馬鹿なのか、不死川は!!昼間言っただろうが、不純異性交遊は禁止だと!それを教師である私達がするなんて断固はんた、…」
一歩、二歩…距離を詰めるごとに声が小さくなっていく。ゼロセンチの距離で伊黒に言われたように弥勒を抱きしめると、言葉を止めて大人しくなった。まるで借りてきた猫のように、俺の腕ん中でガチガチに固まってる弥勒のサラサラの髪に手を添えて数度撫でると、「やめろおお、馬鹿がぁ!!」耳まで真っ赤になっている。
「お前は俺のこと、どう思ってる?」
「不死川は不死川だ!!それ以上でもそれ以下でもない。話は終わりだ、離せ!」
「無理だァ。気になってんだろォ、俺が最近女とやったのか?って。教えてやるよ、もうずっとンなことしてねェ。好きな女と以外はやらねェ主義だかんなァ」
もう一度髪を撫でると唇を噛みしめる。なんて答えりゃいいかわかんねェって面してる。だから俺はそんな弥勒の頬に手を添えると目を大きく見開いた。瞬きを繰り返す弥勒の顔を覗き込むようにその唇にほんの一瞬自分のを触れさせた。
カタン…と、後ろ手をテーブルにつく弥勒の後頭部に手を回して、もう一度今度は少し長めに唇を重ねた――。
「…な、に、すんだよ、」
「悪りぃ、キスしたくなった」
「許可なくしてんなよ」
「許可とりゃいいのかァ?ならもっとさせろや」
無言の弥勒。何も答える気はねェらしい。なら勝手にやんぞォ…と頬に手を添えた瞬間、「特別に許す」なんて声が届いた。
「遠慮しねェから」
もしかしたらとは思うが、キスも初めてなのかもしれねぇなァ。真一門に閉じた唇と同じように瞼も降りていて、ほんのり薄目を開けて見ている俺はぎゅっと顔を凝縮させている弥勒に吹き出しそうだった。
「力抜けよ。目も口も、自然にしとけェ」
「んうっ」
ほんのり甘い声を出せば、俺の身体のストッパーがぐらぐらと揺れているのがわかった。さすがに校内でやることはしねぇが、俺の我慢もきかなくなっちまったらそれこそ大変だからと、軽いリップ音を立てて唇を離すと、もう一度俺は弥勒を胸に抱きしめた。
「無理にとは言わねぇが、少しでも俺に興味があるなら、考えてくれねぇかァ?」
「無理じゃない…」
「あ?」
「その、わ、私も…不死川と同じ気持ちだ」
全然目ェ合わさねぇでそう言われた。俯いてるから俺の目には弥勒のつむじしか見えてねぇ。できれば顔が見てぇと言いたい所だが、今日のところは無理強いはしねぇと決めた。
「そうか。ならそーゆーことで、これからも宜しく頼むぜェ」
「望むところだ」
こうして俺達は、伊黒のお膳立てもあって?か、無事に恋人とへと関係を変わらせた。
◆
「よう弥勒先生!不死川と宜しくやってんだって?」
数学の授業を終え職員に戻った瞬間、宇髄のでけぇ声が耳に届く。背中を思いっきり宇髄にどつかれて前のめりになった弥勒を俺が抱き起こす。そんな俺を見た宇髄が悪い顔で笑った。
「てめぇ、あんまりこいつをからかうんじゃねェ」
弥勒の肩を掴んで後ろに隠すようにして宇髄にそう言えばガハハハっと大口開けて「派手に怒ってやがる」なんて楽しそうに続いた。
伊黒には伝えたが、宇髄に報告した覚えはねぇぞォ。なんだってそんな目で見やがんだぁクソがァ。
「全く男はそればっかりだな」
呆れた顔をしながらも弥勒はデスクの鍵を開け財布を取り出すと昼食を買いに外へ出た。その後をついていくのは宇髄で、弥勒の肩に腕をかけて耳元で何やら喋りかけている。そんな宇髄に何故か顔を真っ赤にして俯く弥勒。なんの話してんだァ、あいつら。ギリギリと握っていたコンビニで調達した割り箸を真ん中からボキッと折っちまった。
「気になるなら一緒に行けばいいだろう、不死川」
伊黒にそう言われ、俺は割り箸をゴミ箱に捨てると財布を持って二人の後を追いかけた。
すぐに追いつくと思っていたが思ったより先に進んでいた宇髄と弥勒。喋りながらノロノロと歩く二人を遠目に俺は競歩並みに速歩きで漸く辿り着いた。
「オイ弥勒、俺も行く」
パッと振り返った弥勒は困ったように眉毛を下げていて…一瞬怯みそうになるも宇髄がニタニタしながら弥勒の隣を譲ってくれた。
「お前らまだヤってねぇんだってな!」
「は?」
「宇髄てめぇ、余計なことを!」
弥勒が飛び蹴りしようと宇髄に飛びかかりそうになったのを横目で見てそれを静止する。生徒に見られたらそれこそ噂になるわァ。
「デリカシーの欠片もねぇなァ宇髄。頼むからこいつのことからかうなって」
その辺シビアっつーのに。俺もちゃんと考えてる。それを今日弥勒に伝えるつもりでいたっつーの。この邪魔者がァ。思いっきりガン付けると宇髄は俺の背中をポンポン叩いて「悪かったな」なんて全く反省の色の見えない謝罪をする。
そのまま一人大股開いて定食屋に入って行ったからこの場には俺と弥勒の二人きりだ。ふぅ〜と溜息をつくと俺は改めて弥勒に視線を移した。
「明日空いてるか?」
「へ?」
「予定がなきゃどっか行こうぜ、買い物でも映画でもなんでもいい」
「おお、なら、観たい映画があるんだ」
「わかった、11時に駅前で待ち合わせな」
「え?うん…」
漸く付き合ってからの初デートにこじつけた俺は、翌日待ち合わせ時間の10分前に駅前の広場にあるホールに背を預けて弥勒の到着を待った。すぐに現れた弥勒。黒いロンTに白のジャケットを羽織った弥勒。白衣とさほど変わらねぇ私服に笑いそうになったが俺はスッと腕を差し出した。
「なんだよ?」
男前にそう聞かれたが気にしてられっかと、弥勒の手を取ってそこに指を絡めた。
「不死川!なにすんだぁああ!」
「あ?当たり前だろォ、ただの映画鑑賞じゃねぇぞォ、デートだからなァ」
きゅっとわざとらしく絡めた指に力を込めればハッとしたように息を飲み込んだ弥勒が、なんともいえねぇ複雑な表情でゆっくりと握り返したんだ。
最初にデート宣言したせいか、その後の弥勒はいつもの男勝りな奴を封印してんのか、時折難しそうに眉間にシワを寄せて首を振っていた。とはいえ選んだ映画はやっぱりホラーで、ポップコーンを食べる手が重なるだけでビクっと大袈裟に離され、意識してんのが丸わかりだった。
まだ梅雨があけていないせいで相変わらずじめついていた。だいぶ日が延びた事で夕方を過ぎてもまだ空は明るかった。それでも待ち行く人達は皆、これから家路へつくんだろうと思った。
「ドライブでも行くかァ」
「え?うん…」
「今日は泊まれよォ家に、」
「え?…あの不死川…私、」
「拒否権はねぇぞォ。言っとくが俺も今日まで我慢はしてきた。お前が初めてだっつーこともわかってるつもりだァ」
ポスっと綺麗にカラーリングされた髪に触れると、弥勒がコクリと頷いた。茶色の瞳が揺れていて、絡まっている指をキュッと握りしめたんだ。
ドライブを早めに切り上げて昨日散々掃除しておいた家に招いた。実家とそれ程離れていねぇ距離だが、今日は家にいねぇと伝えてあるから誰も来ねぇはずだ。
正直シャワーを浴びる余裕もねェ。今すぐこいつを抱き潰してェと思う気持ちが先行して、想いのままに行動しちまってる。玄関で靴も脱がずに弥勒を壁に押し当てて口づける。先日した子供みてぇなキスとは大違い、舌を絡めるキスに弥勒の吐息が頬を掠めて身体が熱くなるのがわかった。口内で逃げ惑う弥勒の舌を捕まえて絡ませると、じゅるりと涎が垂れた。それを舌で舐めてそのまま唇を舌先でなぞれば「ばかっ、不死川…」なんて目を潤ませている。可愛いとこあんじゃん!なんて思いながら、その顔に免じて理性を取り戻した俺は「悪りぃ焦り過ぎだなァ」今度こそ弥勒を部屋に招いてベッドの上に押し倒した。
「うっ、待てよ不死川…普通はシャワーとか先にするもんじゃないのか?」
「無理、ンな余裕ねぇよ。終わってから一緒に浴びよーぜェ」
「はぁっ!?そんなの無理に決まってんだろおお」
「もういいから黙れよォ。…ずっとこうしたかったんだァ…」
ちゅ、ちゅ、と首筋にキスを落としながらそう言うと、弥勒は真っ赤な顔で「そーゆーの狡いぞ」なんてまた可愛い事を言った。
気持ちを汲んでくれたのか身体から力を抜いた弥勒は、普段校内で見せる顔とは全く違げぇ女の顔で俺を下から見つめ上げる。枕に乱れた髪をそっと撫でれば気持ち良さげに目を閉じる。
「服、脱がせんぞォ」
「う、致し方ない…好きにしろ」
恥ずかしそうに顔を背ける弥勒を自分の方に向けて唇をハムりと食する。そのまま抱き起こしてジャケットを腕から抜いた。中に着ている黒のロンTを捲りあげて下着に触れると「んっ」小さく声を漏らした。
「声、我慢すんなよ。全部聞かせろォ」
「そんなこと言われても…私初めてなのに…」
「わかってる。我慢すんなって言ってるだけだァ。気持ちよかったらそのまま声も勝手に出ちまうからよォ」
「…善処する」
なんとも堅いやり取りに多少笑いがこみ上げるが、たぶん弥勒自身も俺とは違う意味で余裕がねぇんだと思えた。背中のフックを外して嫌がる弥勒の腕から下着を抜き取ると、ふと下に落としたジャケットのポケットからラムネみてぇな玉が転がってるのが見えた。気になってそれを拾い上げると弥勒が勢いよく俺から奪い取る。
「あ?なんだそれは」
「…これはその、宇髄から貰った…。初めてなら使えって…」
答えたくなさげのわりにちゃんと口に出す弥勒は、どうしたらいいかわかんねぇって顔で。よく見るとそれは「ハッ!宇髄の野郎、ふざけやがって、」俺は袋を破って玉を口に含み、ペッドボトルの水を口に入れた。そのまま弥勒の口の中に玉ごと口移しで水を送り込んだ。もがもがしながらもゴクリと飲み込んだ弥勒は「私だって、気持ちよくなりたい…」なんて言葉にした。
「お前…わざとか?わざと俺を煽ってんのかァ」
「な!わざとなもんか!私だってちゃんと不死川が、好きだ…それを今夜は、伝えたかった…ああもう、恥ずかしくて死ぬぅっ!」
精一杯頑張って言ってくれたのがわかって、自然と頬が緩んだ。それなら…と、俺は自分の服も脱ぎ捨てて生まれたての姿の弥勒を同じ素肌の熱でぎゅっと抱きしめた。
「愛してる…憐歌」
「…私も、」
真っ赤な顔の弥勒の頬に軽く口づけると、そのままもう一度ベッドの上に押し倒した。細い身体の曲線を円を描くように触る。ピンと勃っている胸の尖端を口に含んで舌で転がすと、うっ…と声を我慢しているから俺はれろれろと舌を使って舐めたり吸ったり甘噛みしたりを繰り返す。そのうちに弥勒もはぁっ…と吐息を漏らすようになっていた。
舌を絡めるキスを繰り返しながら俺の手は弥勒の身体のあちこちに緩く触れていて、弥勒の身体全部に唇を落としていく。両手を頭の上で押さえつけて胸を執拗に愛撫していく。耳穴を舌で突いて耳朶を口に含めば弥勒の身体がほんのりと捩れた。
「耳気持ちいいのか」
そう聞けば、素直にコクリと頷いた。反対側の耳も同じようにしゃぶるとまた弥勒の腰が軽く揺れた。宇髄の媚薬が効いてきたのかもしれねぇ。ホールドしている指をちゅうちゅうしゃぶると「そんなとこまで舐めるのか、みんな…」なんて言葉を漏らしていて。「知らねぇよォ」そう答えればジロリと睨まれる。
「他は知らねぇが、俺はお前の全部が欲しいからなァ」
腕から脇の下に舌を這わせるとさすがに擽ったかったのか、やめろぉ!と叫んだ。それならと俺はうつ伏せにさせて背中の至るところにキスを落としていく。柔らかな尻に舌を絡ませるとビクンとさせる。気づけば弥勒の呼吸はかなり荒さを増していて、潤んだ瞳で俺を呼ぶからほんの少し残っていた理性が一瞬で吹っ飛んだ。
焦らしていた脚の間に手を移動させ、ピンク色の花弁を掻き分けると中からトロリと透明の汁が溢れ出てきた。入り口に指を触れさせるだけでくちゅりと厭らしい水音を鳴らす。俺は興奮したまま指を一本中に挿れた。さすがにキツく締まったソコ。まだ誰も触れたことのないその領域に初めて踏み込む自分の指。グッと奥まで差し込むと「あああっんっ」初めて弥勒の口から喘ぎ声が響いた。くちゅりと水音を鳴らせながら指を奥まで入れて、引き抜いてを繰り返す。きゅっと子宮内が締まると、反対側で触れている胸の突起がピンと勃ってそれを指の腹で弄るとまた弥勒が甘い声を溢した。
「はぁっんっ、ふうっ…不死川ぁっ、身体が熱いっ…」
媚薬のせいで元々身体の柔らけぇ弥勒はぐにゃぐにゃと脚を曲げている。一度弥勒の上まで戻る俺の首に腕をかけた弥勒の唇を塞ぐ。舌を絡ませる事にも少し慣れてきたのか弥勒の方もちゅるりと舌を動かしている。はぁっと熱い吐息を吐いて目を閉じる。そのまま指を二本に増やして中の窮屈さを解していく。キスを繰り返しながらも俺の指は弥勒の子宮内を動き回っていて「んっふうっ」口端から垂れる唾液をも舌で舐め取るとはぁっと熱い吐息が何度となく頬を掠める。くねっと腰を捩らせた弥勒は俺の腕をぎゅっと握り締めると潤んだ瞳を瞬きさせた。
「不死川ぁっ、なんか変っ、なんか指のとこおかしいっ、」
「構わねぇイッちまえや」
くちゅくちゅと水音を激しく鳴らせて指の関節を曲げながらも、下の突起をも一緒に捏ねくり回す。弥勒が俺の肩にぎゅっとしがみついて「あああああああっんんんっ」一際でけぇ声をあげた瞬間、子宮内の指がきゅううっと締め付けられた。ビクビクと腰を仰け反らせた弥勒に、気持ちよくて昇天したのだと理解した。力の抜けた弥勒の身体。俺は自身のこれでもかってくれぇそそり勃っているソレの根本を掴んで、まだ肩で大きく呼吸をしている弥勒の脚をM字に開くとゆっくりと入口に宛てた。ツプっと俺を呑み込むソレ。
「あんっ不死川っ、やぁっふうっ、うんっ」
さすがに指とは大きさも形も違う俺のモノ。弥勒の呼吸に合わせてゆっくりと奥まで挿入していく。途中ではううっ…と弥勒が鳴くと、その後は呼吸が大きくなったように思えた。
「痛てぇか?」
「…わからない。たぶん平気だと思う…」
「そうか、なら動くぞ」
俺を見上げる弥勒の額にちゅっと口づけてから俺はゆっくりと腰を動かし始める。弥勒が少しでも痛がれば最悪中止にしねぇと…そうは思っていてもきつくて一ミリの隙間もなさそうな子宮内の気持ち良さは半端ねェ。慣れていねぇ分、こっちへの締め付け具合が尋常じゃなく中で少し擦れる程度でも気持ち良さが倍増しているように感じている。
「はぁっ…憐歌…」
「んっ、きもちいっ、ふうっくっ、不死川ぁっ、きもちいっ」
「あぁ俺もだァ」
繰り返す律動に合わせて呼吸をしている弥勒のシーツに投げ出された指に俺は自分の指を絡めた。そんな俺に弥勒も握り返してくるから堪らなくなってまた舌を絡めた。下半身を動かしながらのキスに苦しそうな顔を見せる弥勒。けどその普段見せねぇ色気を独り占めしている気分は最高で俺は早々に気分が高まっていた。けどそれは弥勒も同じだったようで、一度離れた唇に弥勒の方から甘く舌を絡ませてきた。そんな事が今の俺にとってどれだけ嬉しいかわからねぇ。
「んっ、不死川っ、またさっきの、きそうっ」
目を泳がせる弥勒もイキそうだということがわかり、俺は腰の律動を速めた。最奥の壁を擦ってからギリギリまで引き抜くと「あああっ」弥勒の喘ぎ声が耳に届く。俺の絶頂もすぐそこまできていた。斜めに腰を回すようにほんのり角度を変えれば弥勒の悲鳴にも似た喘ぎ声が俺の鼓膜を刺激する。子宮内を激しく痙攣させて仰け反る弥勒に、きゅううっと締め付けられた俺のはそのままピタリと止まり、どくどくとした白濁した液を放出させた。
パタンとベッドに寝そべる俺達は、お互いに肩を揺らせて口呼吸を繰り返す。
「あのさ不死川…」
乱れた呼吸が整うと弥勒が俺の肩に顔を埋めるように顔を隠していて。
「どしたァ」
「いや。もしまた生徒に聞かれても、答えちゃだめだぞ」
「ぶっ、言わねぇよ」
「でもなんか、誰かに言いたいかも…」
「好きにしろォ」
「なら好きにする!」
媚薬なんて使ったことねぇからどんだけ効くのかなんて知らなかったが、この夜の弥勒の体力は半端なかった。
仕方ねぇから今度宇髄に奢ってでもやるかなァ…
朝日が昇る頃、漸く俺の隣で眠りについた弥勒の頬に小さなキスを落とすと、俺も連日の疲労からか睡魔へと引き込まれていった。
身体は疲れていたが、それはもう幸せな一夜だったと口端を緩めながら…
―――【完】

