ワートリ 風間蒼也【完】

「歌川、菊地原、気をつけろ。危険だと思ったら遠征艇に戻れ、いいな」

 目の前に現れた見たことのないネイバー達に俺はゴクリと生唾を呑み込んだ。自分達の力を過信しているわけではないが、ここではベイルアウトも使えない。命を守る為には勝たなくては戻れない。
 静かに始まりを告げた戦闘の寸前、脳裏にふっと浮かんだのは、鮮やかに笑うアイツの笑顔だった。

◇◆◇

 三門市のボーダー本部にいる忍田さんから私達の乗っている遠征艇に連絡が入ったのは今から数時間前だった。
 何度目かのネイバーフッド遠征に同行していた私達より一足先に先行偵察を兼ねて現地に先入りしていたA級3位の風間蒼也率いる風間隊との連絡が途絶えたと少し穏やかではない声色でそう言われて私の心臓はドクンと大きく脈打った。

「へぇ〜そりゃ楽しみだな」

 顎髭を手で触りながら面白いものを見つけたとでも言いだけに悪い顔をしている太刀川は置いといて、私は焦る気持ちを落ち着かせようと一人静かに呼吸を整える。
 目を閉じれば今でも浮かぶ双子の兄、佑の最後の姿。手中にあるブラックトリガーを握りしめた私はもう一度大きく息を吐いた。これから起こる戦いを楽しむ余裕が持てないのは、相手が風間隊だからなんだろうか。お願いだから、風間を佑の二の舞にはしないで…と願う他ないのだろうか…。

「珍しくおとなしいじゃねぇか相沢」
「…別に。太刀川は相変わらず戦闘馬鹿な顔してる」
「戦闘馬鹿はお前も一緒だろ」
「慶と一緒にすんな」
「可愛くねぇな」

 こんな戦場で可愛さなんて最も必要ない。間もなく着陸する遠征艇。私の脳内には風間のことしかなく、一秒でも早く連絡の途絶えた風間隊を見つけなきゃと思っている。

「間もなく到着だ」

 冬島さんの言葉に私はギリリと佑のブラックトリガーを握りしめる。トリオン量で負けることはない。ならばこの身体を存分に使ってやると、意気込んで現地に降り立った。
 冬島さんがある程度の予測はつけていて、それを頼りに私達は風間隊を探しにゆく。しばらくすると戦闘をした形跡らしきものが見えて瓦礫の下に押し潰されていたのだろうか、誰かの手が動いた。

「風間っ!?」

 周りの瓦礫を銃で破壊すると出てきたのは菊地原くんだった。青白い顔でぐったりとしている。

「菊地原!大丈夫か!?」

 当真くんが倒れている菊地原くんを抱き起こすと薄っすらと目を開けた。菊地原くんはどこかを指差していて、その指差す方向にまた一人倒れていた。太刀川がそっちに行くと歌川くんだったようで、風間の姿がどこにも見えない。
 だけど聞こえる、この近くで戦う音が。私は塀に飛び上がって遠くを見つめた。視線の奥先にあがっている土埃に向かって一直線に走る。
 間に合え、間に合え、もっと早く走れ、早く、早く!大きくジャンプするとガシャンとどこからともなくスコーピオンの音が聞こえた。
 間違いない、風間の音だ!銃型のブラックトリガーを握りしめた私はトリオンをそこに流して力一杯放つ。バンバンと拳銃から銃弾が飛んで風間と戦っているネイバーに命中する。それでも全部の玉が当たることなく身軽にふわりと宙を舞う人形ネイバー。数体のネイバーに囲まれた風間が振り返って私を見た。

「相沢」

 名前を呼ばれた私は戦闘モード全開で人型に飛びかかる。今度は剣のように形を変え、致命傷を負わせてやると、剣で突く。カン、カンと刀のぶつかる音がしてすぐ耳に太刀川の声が入る。「相沢右に避けろ」そんな声のすぐあと、太刀川の旋空弧月が人型の右腕をふっ飛ばした。

「へぇ。よく避けたもんだ」

 ぺろりと舌舐めずりをすると、太刀川は弧月でネイバーを追い込んでいく。その隙に私はトリオン体が解ける寸前の風間を保護する。

「助かった相沢、ありがとう」

 こんな時にこんな場所で何言ってんだよって私は首を横に振る。気を抜くと泣いてしまいそうで、風間を安全な場所に連れて行かなきゃと思っていた私の視界に、不意に黒い影が見えた。

「憐歌っ!」

 そんな風間の声と同時、私を庇う風間の後ろに見えた別の人型に、私は一瞬であの日の佑がフラッシュバックしてくる。
 絶対に嫌だ、このまま風間を失うなんて、絶対に嫌だ、「嫌だあああああ―――!!!」

 …気づけば私は我を忘れてその場にいたネイバーを全体やっつけてしまっていた。剣を握る手が痛い。強く握りしめていて血が滲んでいる。でもどーでもいい。誰も殺させない、私がいる限り誰も、誰一人として、生きて三門市に還す。

「落ち着けっ、相沢っ!どうしたんだっ!?」

 目の前には酷く困惑した顔の風間。私の肩に手を置いて力づくで押さえつけられている。風間の顔を見た瞬間浮かぶ佑の影に私は悲鳴をあげた。

「やだっ、やだっ!!行かないでっ、離れないでっ!もうこれ以上私は失いたくないないっ!!お願いだから風間を連れて行かないでっ、ねぇお願いっ、お願いっ、」

 風間本人なのか、太刀川なのか、当真なのかもわからない。泣き喚く私を大の男が力一杯押さえつけていたことは確かだった。

 遠征艇に戻っても意識が朦朧としていた。同盟国に奇襲をかけたネイバーも倒してトリガーも奪えた。風間隊もみんな無事だった。疲労はしていても怪我にまで至らなかった。問題ないじゃん。そう思うのに私の目はどこか遠くを眺めていて、佑の影が消えない。

「相沢、一体何がお前をそうしている…」

 心配そうな風間の顔。さっきからずっとこの顔が私を見ている。うううん、見張ってるのかもしれない。ボーッとする意識の中、風間の手の温もりだけが私を優しく包んでいた。


◇◆◇

「いたいた、風間さーん」

 俺が来ることが分かっていたであろう迅。待ち構えていたであろう迅のところへ行くのは少し癪だがそれでも今日は少し迅と話したい気分だった。
 昨日は完全に敵同士だったが、しばし休戦だろう。

「へぇ〜。風間さん達ってやっぱそーゆー関係だったんだ」

 俺の顔を見るなり未来を予知したのかなんなのか、そんな言葉を飛ばす迅。こいつのSEがどれ程のもんかはよく知っているが、あまりプライベートなことは覗かないで欲しい。
 あからさまに顔を顰めた俺に迅は「ぼんち揚げ食います?」と、いつものそれを手渡してきた。まぁ食うか…とそれを一つ受け取って口にする。

「何を見たのか知らんが、あまり覗いてくれるな」
「ん〜けど見えちゃうんだよねぇ。風間さん、遠征で何があったの?」
「…真実と嘘は、相沢にしか扱えないのかもしれないが、まだ佑のことが相沢の中で消化できていないんだろう。俺と佑を重ねて見たのか、冷静さを失っていた。あんな相沢を見るのは初めてだった」

 思い出すだけでも心が痛い。兄を失った俺も少なからず相沢の気持ちをわかってあげられるはずだが、あんな風に取り乱すぐらい今も独りで孤独と戦っていると思うとやり切れない。自分が出ていって何かをしてあげられるのかすらわからない。
 バリバリとぼんち揚げを頬張る迅は、「相沢も女の子ってことだよ風間さん」わかったような口を利く。無言で迅に視線を送る俺にまたぼんち揚げの袋が差し出された。

「S級隊員の相沢じゃなくて、ただの相沢憐歌を見てあげればいいんじゃない?それができるのは俺でも太刀川さんでもなく、風間さんしかいないと思うけど」
「ただの相沢…か」
「そう。女の子って案外脆くできてるよ。特に相沢みたいに常に気を張ってる子は、一旦弱い部分を見せちゃうと、どうにも収集つかなくなっちゃうんじゃないかなぁ。風間さんは見かけによらず優しいから、そのまんまでもいいのかもしれないけど」

 迅の話を聞く限りでは、相沢は俺を必要としているってことでいい気がした。確かに相沢とは今まで色々あったが、急に態度を変えたのは相沢の方で、その意味が俺にはいつまで経っても理解できずにいた。

「傍で失うくらいなら、いっそ突き放した方が楽だと思ったんだろうね、相沢はさ。例えそれで二人の間に溝が生まれようと…。俺からしたらそれだけ相沢は風間さんを大事に思ってるってそう感じたけど」
「それはお前のサイドエフェクトがか?」

 まさか!と、大口開けて笑い飛ばす迅。首を横に振って呆れたように俺を見返す。

「風間さんは、もう少し女心を勉強した方がいいかもね。そろそろ相沢が限界だよ、早く行ってあげて」

 どうやらこの後俺が相沢の所に行くのが見えたんだろう。迅はすっと立ち上がると後ろ手で手を振って玉狛支部へと戻っていった。
 俺も長居をするつもりもなかったし、迅と話したことで少しばかり相沢の気持ちがわかった気がする。
 玉狛のブラックトリガーの件は一旦保留だ。今はそれより相沢のが大事だ…柄にもなくそんな気持ちになった俺はその脚で相沢の住むアパートへと移動した。

 遠征疲れで休んでいるはずだろう。このアパートの中にいるのはわかってる。ここに来るまで何をどう話そうか散々考えてきた。だがどれもこれもなんだか違うような気がして、俺はアパートの前で立ち止まってノックをしようか迷っていた。
 さらさらと風が舞っていて木々の緑を揺らせている。太陽の日差しが眩しく俺を照らしていて、静かな住宅地で、古びたアパートのここは、中の声も耳を澄ませば聞こえてくる。

「泣いている…」

 ポツリと口に出した声。古びた茶色のドアの前で俺は立ち尽くしている。今泣いている相沢に会ってなんて言葉をかけてあげればいいのか躊躇う。もしかしたら独りでいたいかもしれないし、今は誰にも会いたくないかもしれないし、どうするべきかと迷いながらも一歩下がる。
 必要ならばいつでも駆けつける。そう思う気持ちはあるものの、今までの相沢の態度からして今この瞬間自分が相沢にとって需要があるものかと考えてしまっていた。
 数件先の大きな家の庭にいた犬がワンワンと俺に向かって吠えている。見知らぬ顔がいて警戒でもされたのだろう、仕方ない出直すか…と、踵を返した時だった――ガチャリと遠慮がちにそのドアが開いたんだ。

「風間…」

 消えそうな声だった。いつもののほほんとした明るめの欠片などそこにはなく、今にも消えてしまいそうなその声に俺は瞬時にドアまで歩いてまだ頬に涙の跡が残っている相沢を、堪らず抱き寄せた。
 自分でも半分無意識で、でも抱きしめられた相沢は大人しく俺に身体を預けている。

「もう大丈夫だ」

 そう言って背中を撫でれば、堰を切ったように相沢の背中が震えた。あぁこんなにも相沢は弱かったんだと、今始めて理解したんだ。

「落ち着いたか」
「うん…変なとこ見せちゃってごめんね」

 口調はいつもの相沢に戻っていた。それでもどこか大人しさを抱えたまま俺に珈琲を出してくれる。

「単刀直入に言う。俺と離れたのは、俺を佑の二の舞にしないように、か?」

 目をパチクリと大きく見開いた相沢は困ったように視線を逸らす。答えを言わずともそれでわかってしまう。なるほど、それなら全てが繋がる。

「よく聴け相沢。俺は佑じゃないし、死なない。相沢の前から居なくなったりしないから安心しろ。俺はブラックトリガーにはなるつもりはない。だからもうこれ以上俺から離れるな。どれだけお前が俺と距離を取りたいと思っていても、俺は離れたくない…」
「風…間…」
「俺だってこれ以上誰も失いたくない。兄貴だけで十分だ。俺もお前も…言葉足らずなところがあるから、お互いこれからは思ったことを口に出していかないか?」

 そうだ。心でどれだけ何かを思っていても結局それを自分の言葉で相手に伝えないと何もわからない。心で思っているだけじゃ気持ちは伝わらない。それが案外難しいと気づくのにこんなに時間がかかっちまった。
 ラグマットの上にちょこんと膝を立てて座っていた相沢の頭に手を伸ばしてふわりと撫でた。

「憐歌…こっちに来い」

 そう言いながらも俺は憐歌の細い手首を掴んで自分の方に引き寄せる。すっぽりと俺の腕の中に収まった憐歌は「風間?」少し困惑した声をあげる。

「お前が好きだ、憐歌。これからずっと俺の隣にいてほしい」

 そんな言葉が届くと思っていなかったんだろう。
憐歌は複雑な表情を浮かべて、それでも俺のするがままだ。ゆっくりと憐歌の頬に手を添えれば、なんとも複雑な表情で、それが何を意味しているのは俺にはさっぱりわからない。このまま先に進んだら怒るだろうか?

「もう一度抱きしめてもいいか?」

 今までの経験によると、この女は自分の心とは違う命令を受けたのなら、反撃するはずだ。いくら今がお互いにトリオン体ではないにしろ、パンチぐらい飛んでくるかもしれない。ほんのり身構えしながらも俺は憐歌を見つめる。

「急にそんな事言われても、どうすればいいのかわからない。私はただ、誰も佑のようになってほしくないだけ。蒼也には幸せであってほしい」

 唇を尖らせて、それでも本音を口にしてくれた憐歌に俺は口端を緩めた。西側にある窓から差し込む陽の光で憐歌の茶色がかった髪がキラキラと綺麗に視界に映る。手を伸ばして髪に触れると憐歌が俺を見つめ返す。

「嫌ならやめる。お前が嫌がることはしたくない。けど、嫌じゃないなら…このまま俺のもんにしたい…と思ってる」

 必要以上の言葉は要らないと思う。その気持ちは変わらないが、こうしてみると自分の想いを言葉にすると、その度に憐歌が反応しているのがわかって、それはそれで面白いと思えた。
 最初からこうしてちゃんと向き合えば俺達に溝はできなかったのかもしれないが、過ぎたことはもうどうすることもできない。ならばこれからの未来を二人で作っていけば、いいんじゃないかとすら思う。

「憐歌…顔を背けるな。嫌ならしないと言ったはずだ」
「嫌じゃない!嫌じゃないからどうしたらいいのかわからないの!蒼也がそうしたいなら、私もそうしたい…それでいい」
「そうか、なら遠慮はしないぞ」

 嬉しさが口元の緩みに繋がるように口角があがる。俺は憐歌の身体を引き寄せて抱きしめるように包み込んで、その唇に漸く触れた。
 乾いた憐歌の唇をハムッと自分ので挟むように触れると、「んっ」思いがけず甘い声が漏れて、それが俺の脳を一層痺れさせる。
 俺の腕をぎゅっと握りしめている憐歌の首に腕をかけて後頭部を更に引き寄せる。グッと身体が密着して、柔らかな感触が胸に当たった。そのまま後頭部に手を添えたまま、俺はラグマッドの上に憐歌を押し倒した。
 普通こういう行為は夜にするもんだとも思うが、今更この行為を止められる術を知らない。まだ明るい部屋のラグの上で俺は憐歌の胸にそっと触れた。

「はぁっ」

 感じやすいのか、憐歌の声色は既に甘さを増していて、俺の唇と指に一々反応してくれるのが可愛いい。服の上から円を描くように触れる胸に直接触れたくて、憐歌の着ていたオレンジ色の服に腕をかけた。ウエストに巻かれたベルトを片手で外しながら舌を絡める。最初は遠慮がちだったキスも、繰り返す事に舌を絡めてきて、ハムッと唇を甘噛みすると負けずと舌を強引に絡ませてくる。

「なんだこの服は、どうなってる?」

 自分で脱がそうにもよくわからない構図に思わず口から出た本音。そんな俺を見て憐歌は少し緊張のとけた顔で笑うと「私が自分でやる」そう言ってするすると服を脱いだ。俺も着ていたTシャツを脱ぎ捨てて、下着を外す憐歌を眺めた。

「ちょっと、そんなに見ないで」
「悪いが無理だ。見たい気持ちが抑えられそうもない」
「な!そんなこと正直に言わないでよね、もう」
「だが、思っていることを口にしようとさっき言ったから、」
「わかったから、もういいから早くきて」

 腕を引っ張られてツワになった憐歌の身体に乗っかる。身長は俺より少し高いが、やはり身体は女で…「細いな。ちゃんと食ってるのか?終わったらカツカレーを食いに行こう」迷うことなく胸に直接触れると身体が熱くなる気がした。

「こんなのの後にカツカレーなんて食べれないよ」

 可笑しかったのか、微笑みながら俺の髪を撫でる憐歌に心臓がトクンと音をたてる。そのまま俺は胸に顔を埋めるように舌を絡ませた。ちゅりと唾液の垂れた憐歌の口端を舌で絡め取ると「はあっ蒼也っ…」耳元で俺の名前を呼ばれて身体がプルッと震えた。そのまま俺の耳穴に舌を絡ませて音を遮断する。聞こえるのは憐歌の熱い吐息と、耳を舐める舌の音と、俺の心音だけだ。
 俺は憐歌の胸の尖端をちゅうっと口に含む。そのまま舌で吸い上げるとピンと上を向いて周りのピンク色が凝縮してくる。舌でれろれろと舐めればまた憐歌の腰が少し動いた。

「どこが気持ちいいか教えてくれ。全部知りたいんだ憐歌の全部…」

 アルコール摂取とまではいかないものの、現状ハイになっているのは確かだった。ラグの上で乱れる憐歌を間近で見れるのは俺だけの特権で、太刀川に続く戦闘馬鹿だと言われている憐歌のこんな可愛い一面は誰にも知られたくないと思えた。
 執拗に胸を揉みしだいてしゃぶっていると「んうっ気持ちいっ」目をトロンとさせた憐歌が恥ずかしげに呟いた。そのまま俺は白パンツに手をかけて下着ごと脱がせた。

「恥ずかしいじゃん、一緒に脱ぐの!ばかばか!」

 脚をバタバタさせる憐歌に口端を緩めながらも俺は思いっきりM字に脚を開かせた。嫌がる憐歌のそこは透明に光っていて、指先でほんのり触れるだけで中から愛液が溢れ出した。俺は指を一本奥まで入れ込む。とろっとろの子宮内は想像以上に熱く熱を帯びていて、俺の指をどこまでもキツく締め付ける。関節を曲げて指を動かせば「ああああああっんっ」口から漏れる憐歌の喘ぎ声に俺の身体も興奮しているのがわかった。

「舐めるぞ」

 憐歌の答えを聞く前に舌を入り口に宛がう。ちゅるりと子宮内に入れて、中の愛液をじゅるりと吸い上げた。それでもどんどん溢れてくるから続けて数回じゅるりと飲み込む。ひくひくと中の壁を揺らす憐歌。時折子宮外の内太腿に舌を這わせてそこを少し強めに吸い上げる。少しの後唇を離せば赤紫色の花がそこに綺麗に咲いた。満足気にそれを眺めながらも下の突起を口に含む。ぷっくりと膨れたそれを舌で転がすと「あんっああああああっんっ」脚を動かして子宮内を痙攣させた。
 濡れた口元を手の甲で吹いた俺は憐歌に視線を移す。肩を揺らせて口呼吸をしている憐歌。イッたか…と俺は起き上がって自身の下半身を露出する。そそり勃つ自分のを見て苦笑い。自分で手を加えたわけではないが、憐歌に触れて愛撫をすればこんなにもはち切れそうになるんだと可笑しかった。
 憐歌はすぐに呼吸を整えると俺の脚元を這いつくばって登ってきて、そそり勃つ俺の根本を手で掴んでスッと上に引き上げる。

「はあっ…」
「自分ばっかり狡い。私だって君を気持ちよくさせたいんだからね」
「そうか、なら頼む…」

 ふう〜と後ろ手で自分を支えるように重心を後ろに移す。開いた脚の間に顔を覗かせた憐歌は、不慣れな手付きで手で扱いている。それでも俺にとってはとんでもなく気持ちがよく、腹に力を入れていないとあっという間に昇天してしまいそうだと思った。ちらりと俺を見上げた後、ゆっくりと今度はソレを口に含んだ憐歌。じいっと下から上目遣いで俺のを咥えて口の中で舌を絡ませる。なんともいえない水音がちゅぽんと響いてこの空間にエロさが広まる。

「ああっ…」

 気持ちいい?というように俺を見つめる憐歌に、コクリと頷けば、少し嬉しそうに今度は根本まで口の中に含んだ。じゅるじゅると音を立てて吸い上げるそれに俺の脳内は真っ白になる。憐歌に委ねてまだ数分だというのに俺のそこは溢れそうな程に熱を帯びていて「ああっ、待てっ、」イク…そう言う前に憐歌の口の中に放出させてしまった。
 しまったと思うものの、あまりの気持ちよさに言葉が出なくて、俺は憐歌の頭を撫でるとそのまま俺の上にラッコ座りしてぎゅっと抱きついてきた。そのままゴクリと喉を鳴らせて飲み込んだ憐歌に、申し訳無さと歓喜の気持ちと両方がこみ上げる。

「馬鹿だな、そんな不味いものを…」

 ぎゅっと強く抱きしめると、甘えるように俺の首筋にちゅっとキスを落とした。

「憐歌」
「うん?」
「顔を見せろ」
「やだよ、恥ずかしいもん」
「そう言うな。どんなお前も俺にとっては全部が愛くるしい…」
「ほんと恥ずかしいからもうやめて。蒼也ってそんなに言葉責めする人だったの?」

 言葉責め…とはなんだ?小首を傾げながらも憐歌の背中を撫でる俺は、少し距離を作って彼女と視線を交わす。ほんのり火照った身体の憐歌を抱きしめながら耳朶を甘噛みしながら「なんの話だ」と問うも、「んっ、馬鹿っ、」なんて甘い声を漏らすだけだ。そのまま耳穴に舌を這わせて、そこから首筋へと移動する。喉元をちゅうっと吸い付くと天井を見上げた憐歌が熱く吐息を漏らす。
 憐歌の愛撫で一度達っした俺のソレは、既にまた角度をあげていて、憐歌を抱きしめてキスをすればすぐに元気を取り戻してしまう。それを憐歌は尻で感じながらも俺の上に座るから目の前に胸がぽろんと顔を出して、そこに自然と口づける。尖端を焦らすように舌で縁取ると、早く舐めてと言わんがばかりに「んっ、蒼也っ」煽られる。ならばとピンとそそり勃つ尖端を口に含んで手で揉みしだくと憐歌がまた甘い声を漏らした。

「そろそろいいか?」

 彼女をまたラグの上に押し倒してそう聞くと、言葉はなくとも小さくコクリと頷いた。そのまま俺は自身を掴んで憐歌の開いた脚の間にツプリと挿れていく。圧迫されてキツイ子宮内。憐歌の呼吸に合わせてゆっくりと最奥まで到達する。一つ呼吸を吐き出して俺は下から見つめあげる憐歌の頬に子猫の様に自分の頬を擦り寄せた。コツンと額を重ね合わせてそっと目を閉じる。とくん、とくん、とどちらからともなく聞こえる心音に俺はそっと口を開いた。

「憐歌が好きだ。もう自分の気持ちを誤魔化すのは終わりだ。…悪いが俺は、結構独占欲が強いからな」
「えっ!?」

 目を大きく見開く憐歌が何かを言おうとするから、俺はそそくさと律動を始める。すると憐歌の口から出るのは甘ったるい喘ぎ声で、俺の腕をキュッと握りしめる。ゆるゆると腰を回しながら出し入れを繰り返すだけで身体は熱くなって脳内も痺れてくる。俺の下で甘い顔で小さく鳴いている憐歌の額にちゅっと口づけて更に律動を速める。

「あっ、ああっんっ、蒼也ぁっ、んんんんう、気持ちいいっ、ふぅっ…」
「俺もっ、だっ…はあっ…くっ…」

 角度を変えて更に奥の壁を擦り付けると、俺の腕にしがみつく憐歌の手に力がこもる。なんともいえない快感に脳はショート寸前、ふわりと乱れた憐歌の髪がラグの上で踊っている。俺は自身の腰をこれでもかって程ガンガン打ち付けていて、古びたアパートのこの部屋は俺達の熱を帯びた吐息と水音、肌が擦れる音が共鳴していて、もしかしたらこの部屋の前を通った人に聞かれているかもしれない。なんなら両隣の住民に俺達の行為が筒抜けているかもしれない。それでももう止められるわけもなく、声を抑えることもできずにいる。
 身体の芯から熱くなって、呼吸があがる。憐歌の後頭部に手を引いて少しだけ近くなった距離をキスで埋める。苦し紛れに呼吸を漏らしながらも絡まる舌の厭らしい音が鼓膜を刺激する。

「蒼也っ、もうイッちゃううううっ…」
「あぁっ…俺もっ、」
「あんっ、あんっ、イッちゃう、イッ…ああああああっんっ!!!」
「クッ…」

 ぶるぶると身体を仰け反らせて子宮内を激しく締め付ける憐歌に、俺の尖端から白濁した精子が勢いよく流れ出す。動きを止めてそれが全部出きるのを待ってから、ゆっくりと憐歌の上に降り立った。
 はぁっはぁっと、肩を揺らせて繰り返す呼吸。喉の奥がカラカラに乾いていて水分を求めるように俺は憐歌の口内の唾液を吸い上げた。

「…憐歌、」
「なに?」

 しばらくすると呼吸も落ち着いて俺は彼女の肩に腕を回して抱き寄せる。されるがままに俺に身体を預ける憐歌を両手で抱きしめた。

「蒼也?」
「いや悪い。幸せだと思ったんだよ。…ボーダーのことも忘れてお前とこうする時間も悪くないのかもしれねぇって」

 俺がそんなことを言うと思っていなかったのか、驚いた顔を向ける憐歌。でも次の瞬間、コクっと小さく頷いた。

「たまにでいい。こうやって私を甘やかしてよ、蒼也」
「あぁ約束しよう」

 守れない約束ならしない。けれどこの約束だけは、俺の何に変えても守りたいと心から思うんだ。
―――【完】