ヒロアカ 上鳴 電気

「皆さん大丈夫ですか!?」
「あ、ヒーロー!こっちだ!まだ人が埋もれて下に取り残されているんだ、頼む助けてくれ!」

 工場での爆発事故現場に到着すると、辺りは砂埃やら煙やらでグレーがかっていた。作業服を着たこの工場の従業員だろうか、俺を見てそう声をかけてきた。その人に連れられて爆発の中心部に行くと大きな穴が空いていて、天井の抜けたような後と、下を覗けばそこでポイポイ瓦礫を飛ばしている見知った顔を見つけた。

「先輩っ!?」

 圧力個性を持ったヒーローテラ、圧崎美月は雄英高校時代の先輩で何かとお世話になったっつーか、縁があるっつーか、そんな関係の人だった。

「チャージズマ!何普段呼びしてるの!今は私もキミもヒーローだよ!」

 わりと的外れなどーでもいい事を言う先輩にちょっとだけ気持ちが落ち着いたものの、穴に飛びこんで下に降りた俺を見てニコリと笑った。

「なんすかその格好。ボロボロじゃないスか」

 見れば、ヒーローコスチュームの所々が破けていて、綺麗な顔も煤だらけで真っ黒だった。そんな中でも屈託なく笑って、みんなが不安にならねぇようにって声かけている先輩が…――俺は好きだ。とまぁ、色恋は置いといて。今は瓦礫に埋もれた従業員を救出するのが先だ。

「こらこら、私の身体ばっかり見てないで、あっちの瓦礫退かしてきて」
「分かってますよ。けど俺がやったら壁ぶち抜いちまいそうだな」
「そんなの気にしない!人命救助が最優先だよ!ほら早く行った、行った」

 背中を押されて奥にあるでけぇ瓦礫の方に行くと、下から人の声が聞こえた。俺は指先からビームを出して上に乗っていたでけぇ瓦礫を粉々にする。手を伸ばしてこちらを不安気に見つめる男性を引っ張り上げた。

「もう大丈夫です!無事でよかった。他に下敷きになっている人がいるか分かりますか?」

 コクリと頷くと、今にも天井が崩れ落ちそうな場所が一箇所あってそこを指差した。マジかよ、ありゃ危ねぇし、あんなの食らったら即死だろ。でも見える、事務服を着た女性の姿が。脚を怪我しているのか蹲って動けなくて…

「彼女は妊娠しているんだ。頼む、助けてくれ!」
「必ず助けるッ」

 そう叫ぶより早く脚が動いていた。だけど、ほんの数秒早く天井が崩れ落ちた。目の前でボロボロと音を立てて落ちていく天井。瞬き一つする間に、後ろにいたはずのテラが圧力を爆発させて吹っ飛んできた。そのまま彼女の上に覆いかぶさるから俺が周りの瓦礫やら落ちてきた天井やらを粉々に散らす。 

「危ねぇ、危機一髪。テラ大丈夫か?」
「う、動けない〜」
「それな!けどマジで助かりました。オネエサン大丈夫ですか?」

 妊婦さんの肩に触れると安心したように「はい」と答えてくれた。テラがぶっ飛んでなかったら危なかったな、この人。やっぱり瞬時の判断力が半端ねぇ。一年しか違わねぇのになんつーか、差がありすぎる。経験の差…なのかもしれねぇけど、男として負けらんねぇ。せめて一日も早く対等にならねぇと。そんな覚悟を改めさせられたなんて。

 その後、無事に全員を救出してヒーロー達は現場から離れた。妊婦の事務員も、旦那の従業員も怪我はあったけど命に別状はなくてよかった。怪我人多数だけど、死者はゼロだった事もあって、少しばかり達成感があった。ヴィランと戦うだけがヒーローの仕事じゃねぇと改めて思う。なんなら雄英にいた頃の方がヴィランと戦う現場が多かったんじゃねぇかって。プロヒーローは、小さな犯罪から今日みてぇな事故現場での人員救出などは日常茶飯事で、災害があった時の救出活動なんてこともそこそこある。仮免取得の際のあの実技試験はかなり役に立ってると思う。

「まぁ町が平和なことはいいことだよな」

 先程の新婚夫婦を思い出すと、自然と頬が緩んだ。旦那に会えた時の奥さんのいい顔ったらなかったなー。今はプロヒーローになりたてで結婚やらなんて事は脳内にはあんましねぇが、俺もいつかはあんな風に笑う先輩を見れたらいいなぁ…――

「なに考えてんだ俺は。サクッと報告書書かねえと明日の休みがパァーになっちまう」

 壁にかかったカレンダーに視線を移せば、日付に赤ペンで丸がつけられている。お互いの休みが被った日に赤丸付けよう!なんて先輩が言いながら丸を付けていたのを思い出す。休みだから先輩とどっか行きてぇな〜なんて考えるとまた頬が緩んだ。

「やっべぇ、気ぃ抜くとすぐ脳が先輩になっちまう。仕事モード、仕事モード、よし!」

 パンパンと両手で頬を叩く。気合いを入れ直してパソコン画面に向かった。
 ヒーローネットを見ていると、同級生達の活躍も目に見えて目立っていて何とも誇らしい。雄英時代みてぇに毎日顔合わせてるわけでもねぇが、みんなの活躍が分かるだけでもなんか安心すんぜ。つーか爆豪、相変わらず短けぇ文章だな。「分かりゃいいだろ、報告書なんて」とかほざいてそうだし、逆に緑谷はどーでもいい事まで報告書に書き綴ってある。飯田はテンプレートみてぇな面白くもねぇ真面目な文章だし、性格でんなぁこれ。
 つい画面の前で一人肩を揺らしていると、背後に音もなく忍び寄ってきた先輩が、耳元で小さくでもハッキリと囁いたんだ。

「ベッドで待ってるから」

 はぁっ!?
 振り返った俺の目に飛び込んできた先輩の後ろ姿。俺のシャツ一枚だけを纏っていて、細くて綺麗な脚が寝室へと入って行く。目で見えた絵に身体が反応してんのが分かる。仕事モードに切り替えた途端にこれだ。やんなきゃならねぇことはまだある。明日の休みの為に今日中に終わらせてぇこともある。けどさ、けど…

「先輩ッ!」

 馬鹿か?ってもしも誰かに聞かれたら煩せえぞ!って言われるかもしれねぇ大声でそう叫ぶと、俺は先輩の後を追って寝室のドアに手をかける。それと同時、先輩の爆笑が寝室の中から聞こえてきた。

「責任とってくださいよ、先輩」
「やだよ〜そんなの!もういーの?ヒーローネットは」

 絶対ぇわざと言ってるって分かってる。だって先輩は楽しげに笑っているから。俺がこうなるって分かってて誘いに来たんだろうことも正直分かってる。けど無理。そんな格好でそんな甘い声で耳元であんな普段言わねぇ台詞囁かれたら、優先順位なんて吹っ飛ぶ。てめぇが一番なんだよ!って、先輩に分からせてやりてぇ。

「マジ、分かっててやってますよね?」
「うん!あっはごめん、ごめん!でも今日の電気くん、ちょっとかっこよかったからさ!私が動けなくなった後、ちゃんと私を守りながらみんなを誘導してくれた電気くん思い出したら、キュンとしちゃったな〜って」

 ニッて白い歯を見せて笑う先輩はマジで俺の心を独占できる唯一の女だ。俺よりずっと頭いいのに、いつも俺の事になるとバカになっちまう所が可愛くて堪んねぇ。俺相手にキュンとしてくれる女なんて、この世のどこ探したって先輩しかいねぇ。
 ベッドに腰掛けて脚をバタバタさせている先輩の腕を掴んでそのままベッドに押し倒した。ふわりと先輩の柔らかい髪がシーツを揺らす。真っ直ぐに見つめ上げる大きな瞳がゆらゆらと熱く揺れている。

「電気くん…」
「先輩…」

 クンと、匂いを嗅ぐように首筋に顔を埋めれば、ボディーソープの甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。首筋に舌を這わせてちゅっと音を立てて吸い上げると、ハァ…と小さく吐息を漏らす先輩の顔の横でついた手に指を絡めてそのまま体重を落とす。俺を受け止めるように先輩が目を閉じるからその柔らかくて甘ったるい唇を甘くハムるとまた小さく先輩が鳴いた。
 キス一つでうっとりとした表情になるのずりぃな。んな顔されたらもう止めらんねぇっつーのに。

「腕あげて」

 白い男物のシャツを捲り上げると下着すらつけていない先輩の肌が露出される。頬を紅らめながらも俺の首に腕を回す先輩に合わせるように口づけた。口内で何度も舌を絡め合う濃厚なキスに、名残惜しくもリップ音を鳴らして舌を抜けば、「もっとして」なんて可愛く抱きついてくるから堪らずまた舌を絡める。唾液混じりの舌を喉元に移動させれば、口端から透明の糸が俺たちから離れて消えた。

「電気くん、好き…」
「俺のが好きッス」
「嬉し…」

 スキンシップが好きというか、触れられていないと不安になるのか、今日はやけに素直だな。プルンとハリのある胸に触れれば「アンッ」と顎をあげて声を漏らす。

「感度いいッスね今日」

 ちゅと、尖端を舌で転がしながら反対側の胸の突起を指でぐりぐりと擦る。胸も性感帯の一部のようで、毎度口をぱくぱくと開けながら喘ぐ先輩が堪らなく愛おしい。そのままスルスルと手だけを滑らせて先輩の身体のラインをなぞる。細いウエストのくびれから尻の方まで手でなぞると先輩がふわりと腰を浮かせる。

「お尻はだめ!」
「え〜なんで?」
「なんでって、恥ずかしいもん」
「いいじゃないスか…俺しか見てないんだし」

 そう言いながらも尻の丸いラインを指でなぞれば、自分の下半身が熱を帯びるのが分かった。バタバタ暴れる先輩をくるりと反転させて俺は背中を舌でなぞった。気持ちが良かったのか、喘ぐ先輩の尻にもちゅっとキスを落とすと「もお、イジワル」ちょっとだけ不機嫌な声が届く。そんな先輩すら可愛くて俺はごめんと仰向けにして脚を開かせる。どっちにしても、恥ずかしい格好だと思うけど、触らずにはいられない。仕方がないというか、されるがまま脚を開いた先輩はふぅ〜と息を吐き出すと視線を俺に向けた。

「見られっとなんか恥ずいんスけど」
「ずっと見てやる!電気くんが何するのか、ンッ…」

 言葉の途中で舌を腟内に入れ込めば、先輩の言葉の語尾が簡単に崩れた。すぐに何も言葉を発せなくなるぐらいに溢れでてくる先輩の愛液を俺はじゅるじゅると舌で舐めては吸い上げる。時折恥ずかしげもなく顔を出している突起をぺろりと口に含めばビクンと先輩は肩から大きく揺れ動いた。

「待って、だめ、電気くんのでイきたい…だから、ね…」

 分かるでしょ?って涙顔で言うから俺はベッドの枕元に常備している箱からゴムを一つ取り出してそれを自身にハメた。

「先輩、いい?」
「うん」

 自身のを掴んで先輩の入口に数回擦り付けると、そのままググッと奥まで差し挿れた。最奥まで辿り着くときゅうっと中で先輩が俺のを逃さないとでも言うかのように締め付けた。

「クッ、キツ…動きますよ」

 イエスの代わりに先輩が俺の首に腕を回してぎゅうっと抱きついた。斜めに腰を回すように出し入れを繰り返す。やべぇ興奮する、そう思った時にはもう俺の体内に電気が流れてしまっていて、けどそれも慣れっこな先輩は、電圧を下げてくれていて…それを無意識でやっちまう俺ら…身体の相性もバッチリっつーか、先輩以外の相手は俺には考えられない。できるのなら先輩にも同じ気持ちでいてほしい。

「電気くッ、アンッ…きもちいッ…中ヤバいッ…イッちゃうッ…」

 ぎゅうっと一際強く俺の首に巻き付く先輩の頭を撫でてほんのできた隙間から唇を塞いだ。俺もイキそうだ。コクコクと頷くとまた興奮で電気が流れる。それをまた無意識で受け止めながらもビクビクと腟内を揺らした先輩の瞳からポロリと涙が溢れると、俺の脳内が真っ白になって、ゴムの中に勢いよく射精した。全力疾走後のように二人で肩を揺らして大きな呼吸を繰り返す。しばらく抱き合った後、しょぼくれた自身を抜いてゴムを外して捨てる。横向きで息を整えている先輩を後ろからぎゅっと抱きしめて肩越しにキスを落とす。

「先輩」
「ん?」
「今日の夫婦みたいに、いつかなりたいっス俺ら」
「へ?」

 目をパチクリとさせてくるりと反転して俺を見つめる先輩の頬は紅い。情事後ってこともあるだろうけど…

「先の事は正直分かんねぇけど、俺には先輩…美月しかいねぇと思ってるから。それだけは自信持ってて欲しいっつーか」

 一瞬で俺に背を向けた先輩は、泣いちゃったのかズズッと鼻を啜った。

―――――完。