「勇征と別れる気はないの私。」
それあえて言わんでも分かってるから。無言で頷く俺にゆき乃が続けた。
「でもなっちゃんのキスは好き。」
「え?」
顔を上げた俺にぎゅっとまた抱きつくゆき乃の頬はほんのり紅くて。
「なっちゃんにキスされてから、なっちゃんの事が気になっちゃうよ。」
マジかよ!
ふわりとゆき乃の背中にもう一度腕を回す。
「えっとつまりは、俺は二番目?」
確認するようにゆき乃を覗き込むと、リスみたいに白い歯を見せて笑った。
「そう!だって勇征を嫌いになんてなれない。でもなっちゃんも好きになった。」
罪なく笑うゆき乃は小悪魔を超えている気もするけど…でも、俺の気持ちがゆき乃に届いたのは事実だ。
「なっちゃん泣いてたよね、あの日。私偶然見かけて…。バス停で泣いてるなっちゃん見て胸が痛かった。ズルいけど、なっちゃんの事も独り占めしたいって、」
「…見てたの?すげー恥ずかしい。」
「可愛かったよ、泣き虫なっちゃんも。」
くすって笑うゆき乃に俺の胸もぎゅっと鷲掴みされたような感覚で。
「ゆき乃のがずっと可愛い。」
「嬉しい。でも一つだけ。」
ゴクリと今度は俺が生唾を飲み込んだ。一瞬で真剣な表情を見せるゆき乃を真っ直ぐに見つめ返す。
「勇征にも、翔ちゃんにも、黎弥にも澤くんにも、他の誰にも言わないしバレないで。それが条件。…ダメ?」
強気に言ったわりに遠慮がちに最後のルールを口にしたゆき乃が可愛くて。本当はこんな事許されないって思う。もし俺が勇征の立場だったらふざけんな!ってぶん殴ってると思う。バレたら…の話だけど。
「いいよ。それでも俺、ゆき乃が好き。」
ノーなんて言えるもんか。こんなにも俺はゆき乃が大好きで欲しくてたまんなかったんだから。
「嬉しい!私も大好き!早くなっちゃん独り占めしたいなぁ」
「ゆき乃…」
腕を掴んで迷うことなく繰り返されるキスに、ただ、ただ喜びを感じていた―――――
絶対に誰にもバレちゃいけない、秘密の恋人の俺とゆき乃。

END