よしっ!!
気合いを入れて俺はエントリーナンバーを待った。この会場のどこかでゆき乃が見ててくれるって。ダンス部の他の誰より、俺を応援してくれてるって思ってのパフォーマンスは最高に気持ちが良かったんだ。
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パチっと目を開けると鼻をつく消毒の臭いなのか、顔を歪めた。辺りを見回すとどうやらここは病院の様で、ふと視線を下ろすとそこには俺の手にそっと自分の手を重ねて眠るゆき乃がいた。
初めて見るゆき乃の寝顔に胸がトクンと音を立てた。そっと反対の手でゆき乃の髪を撫でるとハッと気づいて顔を上げた。
「バカっ夏喜っ!!」
えっ??そう思った時にはもう、ゆき乃は俺のとこに抱きついてきて。
「どうしたの?ゆき乃先輩。」
抱きしめていいものか、背中に腕を回すのを我慢しながらそう聞くもゆき乃はぎゅっと俺に強く抱きつくだけで。
「…抱きしめてもいい?」
だから調子にのってそう聞くと、微かにコクンと頷いたなんて。
この前とは違う拒否られていないゆき乃を抱きしめるのは最高に心地好くて、この状況がどうとか、勇征がどうとか…何も考えられない。
「好きだよ、」
自然と口をついで出てくるゆき乃への想い。封印したはずの想いが溢れて止まらない。甘ったるい香りのするゆき乃を更に強く抱きしめる俺に「なっちゃん。」小さく名前を呼ばれた。
「なあに?」
「ダンスかっこよかったよ。」
「ほんと?てか俺もしかして倒れた?」
「うん。終わった瞬間ステージ上でバタンって心臓止まっちゃうかと思った、」
ゆっくり顔を上げたゆき乃は、目にいっぱい涙を浮かべていて。…それは、俺の為の涙?勇征は?頭では一瞬で色々思ったけど、身体は正直で。
「ごめん、我慢できない、」
掠れた俺の声の先、ゆき乃の瞳が小さく揺れた。迷うことなくゆき乃の後頭部をホールドした俺はコツって額をくっつけて…
「俺を見て。」
ゆき乃が眉毛を下げる前にそのまま唇を重ねた。
生温いゆき乃の唇はやっぱりめちゃくちゃ柔らかくて、そのままもう一度愛を、想いを込めて唇を重ねた。
「なっちゃん、待って。」
しばらくの後、ゆき乃がそっと俺の胸を推す。あーやっぱりダメか!って。仕方なく、女々しくも覚悟を決めたんだ。