ポストに入った葉書を見て小さく溜息をついた。
地元の仲間からの帰省の誘い。こっちに出てきて早5年。一度も帰ることのなかったあの景色をここにきて恋しく思うのは私自身がこの東京に似合ってないからだって思う。
憧れの東京。そう思って東京の大学を受けた私は花の大学生活を終え、一般企業に就職してギリギリの給料で質素に暮らしている。
これといって何かがあるわけじゃない。でも今の生活を変えられないのも結局自分自身で、そんな弱い自分が嫌いだ。
アパートの鍵を開けて部屋に入った瞬間、ポケットのスマホが揺れた。
「…もしもし、」
【俺、翔太。葉書届いてるだろ?】
「…うん。」
【アイツら煩いのなんのって。たまには帰って来いよ?な?】
「……帰ろう、かな、今年は。」
…ほんの一瞬電話の向こうで止まった翔太が次の瞬間【マジでっ!?】声を荒げた。
「そんなに吃驚する?」
【いやだってお前、俺が何度誘っても一度も戻って来なかったのに。…まだ気にしてるのかな?って思ってたからさ。】
翔太の言葉が優しく耳に残る。
「別に今更もう吹っ切れてるし、それと帰省しなかったことは関係ないよ。東京に慣れようと精一杯だっただけ。…それは今も変わらないけど。…でも翔ちゃん。私、似合ってないかも、東京に。みんなが恋しい…、あの海がすごく恋しいの。」
鮮やかに浮かぶのはあの海と砂浜と眩しい太陽、それからみんなの笑顔と笑い声。
確かに5年前まで私はあの場所に居た。
【汐莉、戻ってこい。なんかあったら俺が面倒見てやるから、戻ってこいよ。俺も寂しいよ、汐莉のいないここは。】
柔らかい翔太の声に零れそうになる涙を必死で我慢したなんて。