“亜嵐の好きな子が、亜嵐の為に亜嵐の分の仕事を必死にやってるけど、亜嵐は好きな子にそんな事させちゃう男なの?自分が落ち込むのは好きな子助けてからにしたら?”
パチン。
携帯画面を閉じた亜嵐さんは、バツの悪そうな顔で少し目線をずらした。
あたしは、その内容にカァーっと顔が熱くなる。
だって亜嵐の好きな子って…
ゆき乃先輩ってば何も知らなそうに見えて…すごい人だなぁ。
でもあたしだけが勝手に浮かれているだけかもしれないし…
「これね梨沙ちゃんて書いてある訳じゃないでしょ?けど俺梨沙ちゃんしか浮かばないの…これって好きって事だよね?」
そんな可愛い顔で言われても…
それにあたしが決められる事じゃないのに。
だから―――
「そうだと嬉しいです」
それが精いっぱい。
「じゃ今から俺梨沙の彼氏な!」
嬉しそうにそう言う亜嵐さんは照れているんだろうか耳まで赤い。
嬉しい!
「いんですか?あたしなんかで…」
「俺じゃ不満?」
「そんな、嬉しいです」
「じゃ問題ないね。飯食った?」
「いえ」
「じゃ飯行こう」
あたしの前に差し出された大きな亜嵐さんの手を握るとそのままフロアを抜けてエレベーターに押し込まれた。
チラッと隣の亜嵐さんを見るとそれはまるで待っていたかのよう…あたしに顔を寄せて―――
わっ!
心臓が踊り狂うみたいにバクバクするあたし…
フライング気味に目を閉じるあたしに優しい亜嵐さんの温もりが重なった――――
チーン。
エレベーターの前「待ちくたびれたぁ〜」って言う直人さんを筆頭にさっきまで同じフロアにいた人達に加えて、どうやら亜嵐さんの馴染みの人達が揃っていた。
なんだかあたし達さんに気を使ってくれたみたいで目の前にいる人達はマジマジとこちらを見ている。
その多さに吃驚したもののあたしもこの人達の仲間になれるんだと思うと嬉しかった。
勿論それは隣に亜嵐さんがいるって事が大前提だけど。
エレベーターを降りたあたし達。
いかにもあたしと亜嵐さんを待ってこれからみんなで飲みに行くぞ!ってオーラのみんなに向かって
「ついてくんな――」
せっかくの二人きりを期待したあたし、寒空の下、あたしの手をギュッて握りしめる亜嵐さんの可愛い声が届いたんだ。
―――完―――