「ヒュー!!」
今度こそ聞こえたヒューな歓声は、あたしと長谷川くんに向けられたもので、あたしは長谷川くんの上でバタバタと暴れた。
みんなの前でお姫様抱っこなんてもう…
恥ずかしくて死にそう!
美桜ちゃんが吃驚した視線を送っていて、あたしは美桜ちゃんに向かって手を伸ばして助けを求めるけど、何の勘違いか笑顔で手を振り返された。
背中に充分過ぎる程のヒューヒューを浴びながらあたしは長谷川くんに連れられてこの前ゆき乃ちゃんが泣いていた椅子に降ろされた。
「どーいうつもり?」
興奮して乱れた呼吸を落ち着かせながら長谷川くんを見ると、涼しい顔でニッコリ笑っていてそれだけでちょっと心の中がキュンとした。
「莉子さんって本当、お人よしだよね」
そう言う長谷川くんは完全に笑っていて。
昔っから“お人よし”って言われるあたしは否定できない。
「そういう性格なの」
「うん、そんな所も好きだけど…」
資料室の続き…?
まさかね。
「自分よりも人の気持ちばっか考えちゃう所も好き」
「……」
「届かない棚に手伸ばしてる姿がすげぇ可愛いくて好き」
「……」
「莉子さんの全部が…好きだわ俺」
「嘘、だって…あたしのこと助けてくれなかった」
「えー?」
「黎弥くんに告白された時、長谷川くん目が合ったのに何もしてくれなかった」
自分で言ってて空しくなるような台詞で、同時に鼻の奥がツーンとする。
「だってあれは、すっげームカついたんだよ…黎弥さんに。俺だってヤキモチぐらい妬くよ」
「ならどうしてゆき乃ちゃんの事は助けたの?ずっとゆき乃ちゃんの側にいたじゃん!?」
叫び声みたいなあたしの涙声は外の雑音に半分くらいかき消されている。
それでも長谷川くんにはしっかり届いていて。
「あれは友情。莉子さんは愛情。ゆき乃さんが黎弥さんのこと好きなの前から知ってたし、友達だから心配したの!つか、莉子さんあの時黎弥さんに“お預け”みたいなこと言ったでしょ…。あれ俺すげー傷ついた…。だからもうあの場にいたくないっていう逃げもあったの」
そんなの、言ってくれなきゃ分かんない!!
とはいえ、それがあってゆき乃ちゃんの側にいる長谷川くんにヤキモチ妬いてる自分がいて。
…好きなんだって気づいたくらいなんだけど。
でもそれならそうと言ってくれれば…