ゆき乃ちゃんは俯いていて…
でも黎弥くんが止まったのはゆき乃ちゃんの前で…
顔を上げられないゆき乃ちゃんの周りで歓声だけが響き渡った。
「好きだ!!」
なっちゃんが「オレぇ?」って冗談っぽく自分を指差していて、それにまた歓声があがった。
「アホ、お前じゃねぇ!!…ゆき乃、こっち向け…」
「えぇ…?」
「何泣いてんだよ、ばーか」
そう言ってゆき乃ちゃんの腕を引いて、お店の外へ飛び出す二人。
キャーだか、ギャーだか、ヒューだか、ヒューヒューだかの歓声が二人を包んでいて…
あたしは黎弥くんがゆき乃ちゃんを選んでくれたことが何よりも嬉しくって、その場にヘナヘナしゃがみ込んだ。
「莉子さん大丈夫?」
目の前で目をパチクリしている長谷川くんがあたしの隣に駆け寄った。
…今日に限って何してんのよ。
なに助けてんの、あたしなんか!
「いいの?」
「は?なにが?」
「いいの?」
「だからなにが?」
「ゆき乃ちゃん!黎弥くんに連れてかれて…長谷川くんはそれでいいの?」
投げやりなあたしの言葉に「?」な表情を見せる長谷川くん。
「好きなんでしょうゆき乃ちゃんのこと!それなのにっ…」
「ストップ!ストップ!!…莉子さんちょっとズレてる。…大丈夫?」
フワって長谷川くんの手があたしの髪に触れた。
そのまま、その手が下りてきてあたしの頬に触れる。
いつの間にか流れてしまった涙をそっと拭ってくれる。
温かい大きな手。
あたしの好きな長谷川くんの手。
あたしの長谷川くん…
「俺、ゆき乃さんのことそーゆう“好き”じゃないけど」
甘い声があたしに届いた。
それは涙さえも止まってしまうような言葉で。
「え、違うの?」
マヌケなあたしの声に長谷川くんが「うん」って言った。
ボンッ!!
顔から火が出そうな程恥ずかしくって。
今になって周りの人の視線が気になりだした。
正確には目の前に座っているなっちゃんが穏やかにあたし達を見ていて…。
「な、なっちゃんとか、あんま見ないでくれる?」
「なんでなんで?」
「…あーもう!!」
何だか黎弥くんの告白を受けたあの時のあたしみたいに長谷川くんがそう叫ぶと、あたしの腰に腕を回してブワって抱き上げた!!