悲しみ越しの幸せ2


一つだけ願いを叶えてくれる魔法があったなら


もしも本当に叶うのなら


あたしの欲しいものはただ一つ。


貴方の心…


――――――――――…


ホテル-Happiness-株式会社。

あたしが働いてる場所で、あたしの好きな人がいる場所でもある。

同期入社の瀬口黎弥、彼があたしの好きな人。


最初は口煩い同僚としか思っていなかったけど、一緒に仕事をしていくうちに、取引先さんへの配慮や、周りの人への気遣い…何よりいつもみんなを笑顔にする無敵な彼の笑顔に気づいたら想いが溢れていて。

そんな人間として尊敬できる部分が一度見えてしまったあたしは、ずっと黎弥だけを想い続けている。

それは列記とした“片想い”で。

あたしの想いとは裏腹に、黎弥が見ているのはあたし以外の人。

その想い人である莉子さんはあたしの先輩で、同期の美桜さんとすごく仲の良い先輩。

新人の頃、何も分からないあたしを二人共丁寧に優しく教えてくれた頼れる先輩。

あたしもそんな二人を尊敬していて。


だからきっと敵わないんだ。

あたしなんかがどう足掻いたって莉子さんに敵うわけないって十分分かっているけど…

それでもどうしてもあたしは黎弥が好き。

片想いでも、叶わなくても…黎弥が好き。

好きで好きで、どうしようもないくらい好き。

こんなに人を好きになったことは始めてで…

莉子さんを見ている黎弥ごと愛おしく思っていた。




始業ベルが鳴り響いて一日が始まる。

それはあたしにとって大切な時間の始まりで。


「おっゆき乃!ネイル変えた?」


ポンって肩を叩かれて振り返ると一年後輩の堀夏喜くんこと、なっちゃんだった。

いつもいつもあたしのちょっとした変化に気づいてくれるのがこのなっちゃんと、美桜さんの彼氏の陸さんで。

お洒落大好きな陸さんはいつもいいアドバイスをくれる。


「うん!気づいた??秋仕様なの!」

「へ〜可愛いじゃん!俺白好きだわ!…見せたの?黎弥さんには」


ドキっとしてなっちゃんの視線の先にいる黎弥を見つめた。

相変わらず莉子さんと話している。


あたしは席を立って二人の間に割って入って行った。