悲しみ越しの幸せ3


「こちら、現場のゆき乃です!ただ今瀬口が又、莉子さんに色目を使いました、どうぞ!」


いつもの如くコントを繰り広げようと、同期の吉野北人を誘ってそう言った。

拳マイクを黎弥に差し出すと、うっとおしいって顔であたしの手を払う。


「仕事しろ、アホが!おい竜太、ゆき乃と北人連れてけ」


明らかに面倒くさそうに言葉を吐き出すも、あたしには慣れっこで。

それでもからかうあたしと北人から視線を逸らして笑い出した莉子さんと楽しそうに話す。


「本当仲いいね」


そう言う莉子さんに「迷惑してる」って言いながら、フロアに入って来た同期の日高竜太くんに手招きしていて。

軽快に走ってきた竜太くんはあたしの腕を掴んだ。


「北人行くぞ」


あたしの隣で変顔満載だった北人にそう言うと、あたしの耳元に唇を寄せる竜太くん。


「今朝“またあいつ爪塗ってやがる”って黎弥言ってたけど、“あれはまぁいいかな”って勝手に褒めてたぞ、お前のこと」


そんな嬉しいことを聞かされて、思わずあたしは照れてしまった。

素直に竜太くんに連れられて自分の席に戻ると、隣の席のなっちゃんがニヤっと笑った。


「竜太さん何て?」

「え?」


熱い頬を両手で押さえながらなっちゃんを見ると、ニンマリしていて。


「黎弥さんのネイルの…」

「え?知ってるの?なんで??」


ガシってあたしの肩に腕を回すなっちゃん。

あたし達の間には“友情”の二文字が流れていて、っていうか他のみんなはあたしの黎弥への気持ちを知っているわけで。


「うん、俺も聞いてたから。“あんなことしなくていいのに”だってぇ」


なっちゃんの嬉しい言葉にあたしは又いっそう赤くなってしまう。

視線の先の黎弥はまだ莉子さんと笑いあっているけれど、あたしの事を少しでも気にかけてくれてたってそんな簡単なことで今日一日を元気に過ごせちゃうあたしって単純なんだろうな。