「美桜大丈夫っ?」
何も言わずに自分の家に帰ったあたしはその日の夜、高熱を出した。
携帯も切って全てをシャットアウトしたあたしは、深夜に家に来たんだろう陸ちゃんの声で目が覚めた。
きっと心配してきてくれたって。
あぁ、あたしまだ陸ちゃんの彼女でいられるんだ…ってそんなことを思ってしまった。
「…もういいって陸ちゃん…」
「何を?」
涙声のあたしに、困惑した陸ちゃんの返答。
「もうサチコさんの所に行っていいよ」
自分でそう言ったくせに、涙が溢れてしまって、あたしはそんな自分を陸ちゃんに見られたくなくって、背を向けて壁を見つめた。
「美桜、何?俺美桜の言ってること全然分っかんねえっ…。ちゃんと気持ち言えって?受け止めるから…」
そっとあたしの背中に触れる陸ちゃんの手は、いつも温かいんだ。
「サチコさん、妊娠してるんだよ…陸ちゃんとの子…」
言葉にしてしまうと妙に現実味を帯びていて、本当にそうなんだ!って自分でも納得せざる得なくって胸が張り裂けそうなくらいに痛い。
「え、なんて?」
それなのに、あたしに二度も屈辱を味合わせようとする陸ちゃんは、やっぱり酷いと思う。
すでに二度も口にする勇気も気力もないあたしは、ただ肩を震わせているだけで。
「俺の聞き間違いじゃないなら、サチコの子供の相手は俺って聞こえたんだけど…?そう言った?」
あたしに触れている手は優しいのに、陸ちゃんの口から出てくる言葉はとても残酷。
優しい顔した悪魔だよ、もう。
あたしは陸ちゃんの言葉に小さく頷くと、「えー」とか「うへー」とか「んなこと…」とか「なんで?」とかそんな言葉を連呼していて。
しばらくの後に陸ちゃんはあたしの体をちょっと強引に引っ張って自分の方に向かせた。
勿論ながらあたしは実際超号泣しているわけで、グチャグチャの顔を陸ちゃんに晒すはめになって。
「あのな、よく聞けよ」
そう言った陸ちゃんは大きく息を吸い込んだ。
「美桜の言ってる事、100%勘違いだぞ」
「………」