【side 美桜】
「あ、そういや陸、お前あれどうなった?」
あたしの隣、陸ちゃんとは反対側にいる健太があたしを通り越して陸ちゃんに声をかけた。
勿論間に挟まれているあたしはその会話まるまる聞こえているわけで。
「あれって?」
素っ頓狂な声を出す陸ちゃんに不機嫌な顔を振り撒く健太。
「あれはあれだって!美桜いるのに言えないでしょ」
なんてこと言って。
これじゃああたしに聞いてくれ!って言ってるのと同じでしょう。
「ちょ、健太やめろ!それまだ内緒だって」
「なにが?」
どうにも気になって声をかけてみる。
絶対にあたしが聞いているって分かっているはずなのに、陸ちゃんはおろか、健太までもがあたしが口を挟んだことに吃驚した顔を浮かべて…
まさか本当にあたしが聞いてなかったとでも?
「陸ちゃん?」
「あーうん…」
あたしの体ごと陸ちゃん側に動いたことで健太はそ〜っと席をたって騒ぐ黎弥くん達のテーブルに逃げた。
辺りは煩いくらい騒ぎだてているというのに、あたしは陸ちゃんと二人きりのような感覚で。
「まぁ、今言うことじゃないんだけど…」
そう言いながらも持っていた煙草を灰皿で消すと体をあたしの方に寄せた。
「サチコの仕事うまくいったらな、俺も昇進決まってんだ。だから何が何でもサチコのフォローしてやろうって。そしたら正式にプロポーズしようって…思っていて」
恥ずかしげもなくそう言う陸ちゃんは、いつも以上にすごく大きく見えて。
そんな風にあたしのこと思っていてくれていたのに、サチコに惑わされて?陸ちゃんを信じきれなかったことを悔しく思う。
「あたし、バカだな」
そう言った声は震えていて。
静かに陸ちゃんの腕があたしの肩に回された。
きっとあたし達二人を見ている人なんていないって…
いつもの如く、黎弥くん達が周りの目を引き付けていてくれているって…