「簡単に言わないでよ。彼女いない歴=年齢のくせにー。」
「それ言わんでください!」
「気にしてるの?リッキーでも?」
「当たり前やないですか。」
猿顔の奥田くんは、面白い。繰り出される日本語はちょっと可笑しいんだけど、人懐っこくてでも甘えん坊でなかなか可愛いからお友達にはもってこいのタイプ。だけど彼氏にするとしたら...私はNO。ごめんだけどNO。奥田くんに限らず颯ちゃん以外はNO。そう頭の中では十分にわかっているというのに、行動が言動が成り立たないこの性格、どうにかして欲しい。
「どういう子が好きなの?」
「髪の長い子がええですね。」
「あら。それ私に嫌味?」
肩にすらつかないボブカットの私は奥田くんをジロリと睨みつけた。慌てて大袈裟なジェスチャーで手を振る奥田くんに笑いながら「冗談よ。」そう言ったらふう〜ってホッと胸を撫で下ろす奥田くん。
「絶対両想いやと思いますけど、二人。」
嬉しい奥田くんの言葉にこの日のお昼は奢ってやったんだ。上機嫌のままフロアに戻ったものの、颯ちゃんはその間に戻ってきていたのか、ホワイトボードの行先とNRの文字。…今日はもう会えないじゃない。顔見て素直に気持ちを打ち明けようと思っていた翌日、隣の席の亜芽ちゃんが出勤するなりおもむろにインスタを私に見せつけてきたんだ。
「ゆき乃さん、ゆき乃さん!聞いてください。中島さんって思ったよりイケメンですよね!!なんかあたし好きになっちゃいそうなんですけど。」
「…え?」
ガーン、ガーン。恐れていなかったわけじゃないけど、こんなことってあり!?思わずよろっと一歩後ずさる私に追い打ちをかけるようにインスタには肩を組んで仲好さげな亜芽ちゃんと颯ちゃん。
なによ、その顔。鼻の下伸ばしちゃって。ちょっと若くて可愛くておっぱいが大きいからって、厭らしい顔しちゃってさぁ。だけど写真に写った亜芽ちゃんは私にないものを沢山もっていて、颯ちゃんだってこんな可愛い子の方がよっぽどお似合いなんじゃないかって思えてしまう。
「でも、中島さん言うんですよ、好きになってもいいですか?って聞いたら…―――ゆき乃ちゃん次第やって。ゆき乃さん、どういうことですか?付き合ってるんですか?」
迫力あるアイメイクの大きな瞳で指すように見る亜芽ちゃんに、颯ちゃんのずるさを見た気がした。