白い白衣の後ろ姿。
サラサラの黒髪に手を差し込みたい…
あの、銀の眼鏡を取ってみたい、あたしの手で。
「先生ここ分かんない、教えて」
「またお前か」
生物室のドアを開けて教科書とノートを机に置くと、先生があたしの正面に座るのをしばし待つ。
「先生最近いつした?」
「何を?」
「キス」
「………」
ほんの一瞬、眼鏡の下の甘い垂れ目に動揺を見た。
あたしの前に座ってボールペンを回す先生の細くて長い指が好き。
興味津々って顔のあたしのオデコをピシッと叩く先生は、禁煙の学校内で隠れてよく煙草を吸っていた。
それを知っているのはあたしだけ。
だから先生はあたしの前では何の躊躇いもなく煙草を咥えているんだ。
「先生、いつ?」
「ゆき乃には関係ねーだろ」
あたしを突き放す先生は、胸元のポケットから100円ライターを取り出して、煙草に火をつけた。
生物室の片隅に白い煙が上がる。
「分かった、じゃあ質問変える」
「ろくな質問がきそうもねぇな」
「先生、いつした?」
「変わってねぇぞ」
「セックスね、セックス」
「内緒」
顔色一つ変えない先生に、悔しいと思いながらも、そのS加減がたまらなかったりする。