【side 朝海】
「ぐふふふ〜許しちゃったんだ。偉いじゃん!」
「…偉いのかな…?」
「どうだろね?」
「もう、けんた〜!」
「ぐはははは、ごめんごめん。まぁでもこれでけんた達ももしバレても責められないんじゃない?」
一週間前、なっちゃんが泣きはらしたこの部屋のソファーにどっぷり座って珈琲を飲むけんた。
女慣れしたけんたはあたし達のことぜーんぶ知った上でこの部屋にいる。
「なっちゃんだけ責められないってあたし…。あ、雪乃さん達大丈夫だった?」
ソファーの隣に座ると、コテンって甘えん坊のけんたがあたしの肩に顔を乗せた。
そのまま指をギュっと絡めて手の甲にチュっとキスをくれる。
「陸さん撃沈。サヤカちゃんに付き纏われて無理くり襲われそうになったりもしたからねぇ陸さんも。雪乃さんにはキツかったんじゃないかな〜って。そこに付け込んじゃったんだよ、夏喜はさぁ…」
話しながらギュッ、ギュッってけんたがあたしの指を握ってくれるからこんな話も受け入れられるんだと思う。
なっちゃんと雪乃さんの付き合いが先なのか、あたしとけんたの付き合いが先なのかは分からないけど…
「なっちゃんまだ好きかな、雪乃さんのこと…」
「どうだろねぇ〜。少なくとも、雪乃さんは陸さんしか見てなさそうだけど。そう考えるとやっぱ女のが上手?…朝海もけんたのこと簡単に捨てちゃう?」
下からあたしを見つめ上げるけんたは不意打ちでチュってキスをする。
「捨てらんない、けんたのこと愛してるもんあたし!」
そのままソファーの上に押し倒す。
笑いながらあたしを受け止めるけんたの上に跨った瞬間、なっちゃんからのLINE。
【これから家行ってもいい?】
「なっちゃん疑ってるのかな、あたしのこと…」
「まさか!男なんて単純だから完全に信用しきってるって!けんた帰ろうか?」
「やだ、今日はけんたって決めたの!待ってねなっちゃん断るから」
「あははは、やっぱ女って怖ええな!」
ポンってスマホをラグに投げてけんたの上に再び跨った―――。
【今夜は親友宅に泊まるから帰りませ〜ん!明日待ってるね♪】
*END*