episode 05


ピンポーン。



「なっちゃん!?どうしたの、あたしに逢いたくなっちゃった?」



いつもみたいに明るく俺を迎えてくれる朝海だけど、玄関に入った途端明るい場所で俺の顔を見て「どうしたの口…」泣きそうな顔で俺を見上げた。

倒れこむように朝海に抱き着く俺を目いっぱい抱きとめてくれる。



「ごめん朝海…大事な話がある…」



そう言って部屋にあげてもらった。


薬箱から消毒液を出してコットンで拭う。

その顔からはいつもみたいな笑顔は完全に消えていて。

今にも泣きだしそう…



「朝海ごめん…ごめんね…」



言葉にしようとすると涙が溢れてきちゃって…

目の前で泣き出す俺を見て、朝海の手が止まる。

深刻な表情で俺を見ていて…



「朝海と付き合っていながら俺…―――別の女の人とも付き合ったってた…」

「え…」

「雪乃さんと会ってたんだ、今まで…」

「…嘘でしょ、なに言ってんの…なっちゃん!ねぇなっちゃんっ!!誰がそんなの信じるのっ!!!」



俺の肩を掴んで手で思いっきり揺らす。

見る見る顔が崩れてその綺麗な頬に涙がポロポロと伝っていく。

彼氏の浮気だけじゃなく、浮気相手が信頼している大好きな先輩だなんて、朝海にこんな残酷なことってないと思う。

それをさせちゃった俺と雪乃さん。

俺の叶わない気持ちが、朝海を傷つけた。


「浮気は許さない!って言ったよあたし!浮気は許さないって…浮気は…―――どうして雪乃さんっ!?雪乃さんは陸さんの彼女でしょっ!!あんなに憧れのカップルいないって思ってたんだよ、あたしっ!なっちゃんっ、ねぇなっちゃんっ、答えてよっ、なんで雪乃さんなのっ!!!」


ボタボタと大粒の涙を零す朝海に俺は何もできずに俯くだけ。



「朝海も殴ってよ俺の事…。雪乃さんのことずっと好きだったんだよ俺。朝海と付き合ってるのに、ずっと雪乃さんのこと考えてたんだよ俺…」

「嘘だよ!なっちゃんはいつも優しかったもん!あたしのことちゃんと愛してくれてた。いつもちゃんとあたしのこと考えてくれてた!」



信じたくないって朝海の気持ちは分かる。

でも俺マジでそうだから。

マジで…



「なっちゃんのバカっ。バカバカバカ!許さないって言ったのに、あたし浮気は絶対に許さないって言ったのに…―――なっちゃんと別れたくない…。それでもあたし、なっちゃんの傍にいたいよ…」



ギュっと俺を抱きしめる朝海。

震える身体で強く俺を抱きしめる朝海は、泣きながら俺を許してくれた。



雪乃さんと陸さんがどうだったのかは分からないけど…。


もう二度と浮気はしないって。

雪乃さんとも二人っきりで会わないって。

死ぬ気で陸さんに謝るしかないって。



「朝海…愛してる…」

「あたしも、愛してる…夏喜…」



ベッドの中で抱き合って眠った。