ピンポーン。
「なっちゃん!?どうしたの、あたしに逢いたくなっちゃった?」
いつもみたいに明るく俺を迎えてくれる朝海だけど、玄関に入った途端明るい場所で俺の顔を見て「どうしたの口…」泣きそうな顔で俺を見上げた。
倒れこむように朝海に抱き着く俺を目いっぱい抱きとめてくれる。
「ごめん朝海…大事な話がある…」
そう言って部屋にあげてもらった。
薬箱から消毒液を出してコットンで拭う。
その顔からはいつもみたいな笑顔は完全に消えていて。
今にも泣きだしそう…
「朝海ごめん…ごめんね…」
言葉にしようとすると涙が溢れてきちゃって…
目の前で泣き出す俺を見て、朝海の手が止まる。
深刻な表情で俺を見ていて…
「朝海と付き合っていながら俺…―――別の女の人とも付き合ったってた…」
「え…」
「雪乃さんと会ってたんだ、今まで…」
「…嘘でしょ、なに言ってんの…なっちゃん!ねぇなっちゃんっ!!誰がそんなの信じるのっ!!!」
俺の肩を掴んで手で思いっきり揺らす。
見る見る顔が崩れてその綺麗な頬に涙がポロポロと伝っていく。
彼氏の浮気だけじゃなく、浮気相手が信頼している大好きな先輩だなんて、朝海にこんな残酷なことってないと思う。
それをさせちゃった俺と雪乃さん。
俺の叶わない気持ちが、朝海を傷つけた。
「浮気は許さない!って言ったよあたし!浮気は許さないって…浮気は…―――どうして雪乃さんっ!?雪乃さんは陸さんの彼女でしょっ!!あんなに憧れのカップルいないって思ってたんだよ、あたしっ!なっちゃんっ、ねぇなっちゃんっ、答えてよっ、なんで雪乃さんなのっ!!!」
ボタボタと大粒の涙を零す朝海に俺は何もできずに俯くだけ。
「朝海も殴ってよ俺の事…。雪乃さんのことずっと好きだったんだよ俺。朝海と付き合ってるのに、ずっと雪乃さんのこと考えてたんだよ俺…」
「嘘だよ!なっちゃんはいつも優しかったもん!あたしのことちゃんと愛してくれてた。いつもちゃんとあたしのこと考えてくれてた!」
信じたくないって朝海の気持ちは分かる。
でも俺マジでそうだから。
マジで…
「なっちゃんのバカっ。バカバカバカ!許さないって言ったのに、あたし浮気は絶対に許さないって言ったのに…―――なっちゃんと別れたくない…。それでもあたし、なっちゃんの傍にいたいよ…」
ギュっと俺を抱きしめる朝海。
震える身体で強く俺を抱きしめる朝海は、泣きながら俺を許してくれた。
雪乃さんと陸さんがどうだったのかは分からないけど…。
もう二度と浮気はしないって。
雪乃さんとも二人っきりで会わないって。
死ぬ気で陸さんに謝るしかないって。
「朝海…愛してる…」
「あたしも、愛してる…夏喜…」
ベッドの中で抱き合って眠った。