「…で、唯月は銀座にいっちゃうの?寂しいなぁ。」
「北人も来る?ビエヌも銀座に本店構えたら?陣さんに頼んでみようか私?」
「頼んで!俺歌舞伎町飽きた。もっと上の世界が見たい。てか竜ちゃんも唯月に着いてくの?」
グデーって運転席の日高竜太の方に腕を伸ばす北人。2人とも宮崎出身で実は仲が良い。
何かと話が合うみたいで、こうして息抜きする事も多々あった。
「そりゃ勿論。唯月ちゃんの行くとこどこでも着いてくのが俺だよ。」
「ほんと?竜太!一緒に来てくれると心強いよー。」
「はは、そのつもりだけど。まぁオーナーがどう出るか分からんけどな。」
みんな知らないかもしれないけど、キャバ嬢とホストはわりと仲が良い。
そして私達は相手がピンチの時、自然と助け合うようになっていた。
「とりあえずあと2週間、営業かけまくってやる。」
意気込んだ私の膝に、北人がコロっと頭を乗せた。
真っ赤な髪がふわりと膝を掠める。
そのまま下から手を伸ばして私の首にかけると、グイッと引き寄せた。
迷うことなく重なる唇と、絡まる舌に胸の奥がキュッと詰まるような感覚で。
「枕はやらないでね。」
No.1のその言葉は、本音?それともただの遊び?
「ほい、お店着くで。北人グロス!」
竜太くんがティッシュを投げてくれてそれで口を拭く北人はもう、ホストの顔に戻っていて。
車を降りた北人の腕に自分のを絡めるとそのまま来店した。
入口にいる店長の剛典さんが「同伴ですか?」そう聞くから北人が「そうでーす。」って答えてくれた。
そのままフロアに入ることなく私を軽く抱きしめた北人は手を振ってお店を出て行った。
北人が下に降りたのと同時、樹からのLINEにまたお店の下に降りていく。
「いっちゃんごめんね?」
これまた北人に負けず劣らずな美顔が私を見て小さく笑った。
「唯月さんの頼みならいくらでもいいっすよ。」
そう言いながらも私の腰に腕を回す樹。
黒髪に金メッシュの樹はそのままうなじの匂いをクンクン。
「樹?」
「俺これ好きじゃない。」
村上のおじ様専用の香水はどうやら少々古いらしい。
今時の若者には合わない。
「じゃあ樹専用のちょうだいよ?」
「うん。次ん時持ってくる。」
そんな会話をしながらまた来店すると、同じように剛典さんが「同伴ですか?」そう聞いた。
「そうっす。」
そう答えた樹をお店の外まで送る。まだ竜太くんの車に乗ったままの北人がそこにいて、隣に乗り込む樹。
助手席に乗った私が「村上のおじ様の所まで。」そう言うと「了解。」クシャっと髪を撫でた竜太くんが車を出した。