あと一歩、あと一言が、言えない…。
「絶対やだ。やだっていうか、無理!断固無理!」
思いっきり顔をしかめた私を見て隣でゆき乃がププッて笑う。
だって、無理だよ、そんな格好。
ドン・キホーテのハロウィングッズコーナーを陣取っている私達4人。
今週末慧ちゃんの家でハロウィンパーティーが行われるんだけど、全員本気の仮装で来い!って指令が出て、仕方なくその衣装をみんなで選びに来た。
クラスメイトの黎弥が手にしたのはフリフリのメイド服。
種類も何種類もあって選びがいはあるけど、私が着れそうな衣装はものの一つもない。
「いやいやこれ一番無難な奴だって!」
黎弥が不満気に私を見た。
どうやらこれを着せたいわけではないらしい。
手にしたのは……ぶっ倒れそうなその衣装は「ラムちゃん!これ最高レベル!」今時流行ってないハイレグなパンツと、胸元にはお気持ち程度の貝殻…。
有り得ない!
「却下だよ、却下!」
「えーなんで?勇征もゆき乃にこれ着せたいよね?」
「着せたいけど、見せたくはねぇな!」
「はいはい」
聞いた自分が馬鹿だったって感じに黎弥はポイポイと仮装衣装を手にとっては私に合わせていく。
「慧人が好きそうなのも俺が好きなのも対して変わんないと思うよ?」
「変わってくれなきゃ困る!慧ちゃんは黎弥みたいに下品じゃありません!」
「お前なぁ、男なんて考えてることみんな一緒!ね?勇征!」
「そこ俺にフルんだ?まぁ、そこは否定しないけど!」
私達4人は同じクラスで仲がいい。
担任の澤本先生はめっちゃイケメンでダンディーで優しくて、男女問わず人気者。
高校2年になった私達はすぐにこのクラスに溶け込んで仲良くなった。
ゆせくんとゆき乃は1年の時からの仲良しカップルで、そこに私と黎弥が入り込んだ。
プラスなっちゃんと颯ちゃんもいるんだけど今日は二人ともバイトで夜に慧ちゃんも合流することになっていた。
慧ちゃんは、ダンス部の黎弥、なっちゃんの後輩で、一週間前に私に告白してくれた子。
返事はまだいいです!って言い逃げされたものの、密かに慧ちゃんが気になっていた私にはすごくすごく嬉しくて、だから決まってるんだけどなぁ、返事。
そんな私達が週末慧ちゃんの豪邸でハロウィンパーティーをすることになって、今に至る。
「慧ちゃんになら噛みつかれても本望だよね?むしろ!」
「え?…うん、そりゃ慧ちゃんにならね」
ゆき乃が私だけに聞こえる声でそう言う。
手にしているのはサンタクロースの女子バージョン。
特段フリルがついてるわけでもなく至ってシンプルのそれ。
それぐらいなら着れる?
「汐莉に似合いそう!2人でこれにする?」
「うん!これなら!」
「これ試着はできないよね?買うしかないか…」
手にとってレジに持って行くと、ゆき乃のソレをゆせくんが奪って行った。
そのままゆき乃の前に入ってお金を支払う。
「ゆせ、いいって。それぐらい自分で買うよ」
「いいから。かっこつけたいお年頃なの、俺!」
「え、いつもかっこいいんだけど!」
至って普通に返したゆき乃に、思った以上にゆせくんが照れて真っ赤になっていて何だか可笑しい。
単純に羨ましいな〜って思えるんだ、この二人。