がり勉慧ちゃんは自主的に塾に通っていて、颯ちゃんのバイト先であるカラオケボックスで私達は時間を潰していた。
「お待たせしました〜」
ちょうど湘南乃風がかかって黎弥が熱唱していた時に颯ちゃんが頼んだ飲み物を持って入って来たんだ。
「颯ちゃん一曲歌ってってー」
ゆき乃がメロンソーダを受け取りながらそう言うと苦笑いで「あかんねん」ピシャリと言う。
バイト中の颯ちゃんはウエイターみたいな白黒のベストとシャツをまとっていてなかなか様になっている。
「ゆせと颯ちゃんのデュオが聴きたい〜!」
確かに。
みんなそこそこ上手いけど、ゆき乃のゆせくんと颯ちゃんペアの歌唱力は群を抜いていた。
「歌ったら怒られてまうやん、店長に!ごめんやで、次一緒に行く時歌ってあげるから!」
ポンポンってゆき乃と私の頭を撫でる颯ちゃんにゆき乃は満足げに微笑む。
慧ちゃんはどんな歌、歌うのかな?
どんな声で歌んだろう?
私、慧ちゃんの知らないことだらけだ。
もっともっと知りたいよ、慧ちゃんのこと…。
そんなモヤを抱えながら、颯ちゃんのバイトが終わる時間になって今度はなっちゃんのバイト先であるファミレスに移動した。
既にシフトアフトしていたなっちゃんは私達の為に席を確保してくれていて、そこに少し遅れて塾終わりの慧ちゃんが到着した。
「お疲れ様っす!」
たったそれだけのことなのにすごく嬉しくて、私は「慧ちゃんお疲れ様!」思わず大声で叫んでいた。
そんな私に嫌な顔一つしないで笑顔を向けてくれる慧ちゃんは最高に爽やかでかっこいい。
ていうかほら、そんなアイドルみたいな外見だから、ここにいる他校の女子達が慧ちゃんをマジマジと見ている。
むーヤキモキする。
そんな視線に全く気づくことなく慧ちゃんは座る場所を探していて…
「慧ちゃん隣!ちょっと黎弥あっち行って!」
もう無理やり黎弥を退かして場所を開けたんだ。
「おい態度が違げぇぞ、汐莉。慧人も無駄にキラキラしすぎ!」
文句を言いつつもちゃんと場所を開けてくれる黎弥に無言で感謝しつつ、隣に慧ちゃんが座った瞬間にはもう、黎弥のことは頭の中から消えていたに違いない。