二年分の涙3


ウェディングプランナーは、結婚式当日はほとんど出番はない。それまでの打ち合わせが重要で、当日はただただ見守るだけだ。

司会を務めているのは同期のえみ。私とよく似た性格のえみとは血液型も同じですこぶる気が合う。ありとあらゆる人生の悩み相談はえみにほとんどしていた。

披露宴も終盤に差し掛かってきた頃、余興のゆせの番になった。ピアノの弾き語りだからそういや何歌うかすら聞くの忘れてた。それにしてもネコは本当になんでも知ってるなぁ。


「ゆせくん、いい声。」


なんて小さな独り言の後、挨拶を終えたゆせがピアノに座って構えた。ゆっくりと綺麗な指から奏でられるメロディーに時が止まった気がしたんだ。



『いつかの俺達の結婚式にはこの曲歌ってやるよ!』



そんないつかの話をするのが好きだった。ベッドの中でシーツにくるまって直人のちょっとだけ掠れた歌声に耳を澄ませて、いつかの日を思い浮かべてギュっと抱きつくと、そっと抱きしめ返してくれる直人の温もりが大好きだった。

これからもずっと2人でこうして生きていくんだって…――――



♪ Long Road this long road
 何も知らずに僕は 遠回り遠回り繰り返したけれど
Long Road this long road
君を迎えにいくよ
 This moment,I know you are my everything.♪



ゆせの綺麗な透き通った歌声が私の中にいる直人を呼び起こすかのようだった。トイレに立つフリをしたネコが私の異変に気づいて私の所にやってくる。両腕を抱えるようにしてこの会場の外へと誘い出してくれた。

ネコのくせに。



「…雪乃さん。」
「ごめん。」


とめどなく溢れ出る涙。自分の意志とは無関係に零れ落ちて止まらない。頭の中、直人でいっぱいで、目を閉じれば浮かぶその温もりに、それでも寂しくて悲しくて心が死んでしまいそうな自分に押し潰されそうだった…。

できるのなら、そこで感動しているのは私でありたかった。

できるのなら、照れくさそうに歌ってくれているのはタキシードを着た直人でいて欲しかった。

できるのなら…。