学校につくと、sphenosが続々とやってくる事で、いつも以上に校内はざわついていた。
私とサワ、後ろに健太とマサが揃って校内に入ると健太やマサのファンから黄色い歓声があがった。
健太の護衛の様に、陣と陸も後ろを歩くからまた歓声があがる。
3年7組の私のクラスで待機しているのには意味があるのだろうか?
教室内に異様な空気が漂っているものの、誰一人それを問いただすものなんていない。
そんな中に嘉くんも登校してきて…
「ゆき乃、おはよ。」
私の隣の席に座った嘉くんをマサが思いっきり睨みつけた。だからさり気なくマサの腕を引っ張って嘉くんから遠ざけて「おはよう!」にっこり微笑んだ。
制服の鎖骨ら辺をパタパタと指で仰ぐ嘉くんに内心ごめん…って謝る。
でも不意にさち子の言葉を思い出して嘉くんを見つめる。
サワにマサを託して立ち上がった私は嘉くんの腕を掴んで「ちょっとだけいい?」そのまま教室から連れ出した。
当たり前に追いかけてこようとするマサをサワが「大丈夫!」って止めてくれたのが微かに見えた。
2人でB階段の下まで行くと、嘉くんの手を離した。
「どうしたの?」
「…嘉くん彼女と、別れた?」
「え?なんで?」
「…昨日夜コンビニでさち子ちゃんと会って少しだけ話したんだけど、もう別れたって言ってて…、」
私の言葉に口を噤む嘉くん。困ったように眉毛を下げて苦笑い。それから大きく溜息をついた。
トンって壁に寄り掛かってまた溜息。
「嘉くん?」
「あ、ごめん。いや…最近なんか素っ気なくて。俺告白されて一人で舞い上がってたのかな?って…。馬鹿、だよね?」
切なく微笑む嘉くんに、胸がギューっとしめつけられる想いだ。
「そんなことない!!…だけど、」
そう言ってまた嘉くんの腕を掴む。さっきよりも汗ばんだ熱い腕をギュっと握って嘉くんを見つめる。
「あの子はやめた方がいい…。私が言うな!って思うかもだけど、あんまりいい噂も聞かないし、嘉くんがこの先無駄に傷付けられるのは私、嫌だよ。」
「…ゆき乃。」
「別れてないの?まだ、」
「…まぁそんな話はしてないけど…、やっぱりそう思ってるのか?って。ちょっとショック…。」
俯く嘉くんを見ていたら気持ちが止まらなくて…そのまま嘉くんの腕に抱きつくみたいに身体を寄せた。