サラダに入った帆立を一口パクついた樹はシャンパンをもう一度飲んでその口を開いた。
「別れたんだよ、健太さん。」
「うん、聞いた。喧嘩でしょ?」
「ゆき乃と仲がいいネコさんに心変わりっていうか。」
待て待て待て。樹の言葉に危うくシャンパンを吹き出しそうになった。
かみけんがネコに心変わり!?初耳すぎて目ん玉飛び出そう。
樹は静かな面持ちで更に言葉を続ける。
「いつだったか、祭りに行った時に、ネコさんのこと見かけて、それからずっと健太さんはネコさんの事を可愛い可愛いって言ってて。したら彼女が怒っちゃって大喧嘩。っても、彼女が一方的に怒鳴り散らしてたみたいだけど。でもネコさん黎弥さんいるし無理かなあ?って。で、ネコさんと仲のいい夏喜に色々聞いたものの、答えは全部ノー。俺に関しても夏喜は一度もイエスは言ってくれなかったんだよなぁ。」
そこまで言うと樹は言葉を止めてテーブルの上に投げ出された私の手をそっと取った。キュッと握られてドキンと胸が脈打つ。
小さく息を吐き出して、それから真っ直ぐに私を見つめた樹が、意を決したように言ったんだ。
「夏喜とは、なんでもないんだよね?」
確認するように私をジッと見つめている。
「樹…。私なっちゃんとどうこうなりたいって思ったことは一度もないの。なっちゃんは見映えはオスだけど、私やネコと一緒にいる時は、なんてゆうか女友達みたいなもん。なっちゃんと2人きりで泊まったとしても、何も起こらないよ残念だけど。」
「ほんとに?」
「うん。ほんとに。」
キュッと樹の繋がっている指に力を込めると盛大に息を吐いた。心底安心したって顔の樹の頭をやんわりと撫でた。
でも途中で捕まえられて、私の手にちゅっと小さく口付ける樹。
「今日はゆき乃ん家泊まらせて。ね?」
夜景の綺麗なレストランで食べる極上のフレンチと、申し分のないイケメンの誘惑。これを断れる女がいたらぜひ会ってみたい。
トクン、トクン…と胸が高鳴って、恋の始まりを感じる。
「うん。」
小さく答えた私に、樹はまた嬉しそうに微笑むんだった。
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