ACT.1*二人とも、好き

「もー飲めねぇ!!」


そんな言葉と共にドスンって音とふんわりとスポーティーな香りが鼻を掠めた。

ゴロンと大きな身体をおおっぴろげて床に眠るその男、八木勇征。

サラサラの銀髪がふにゃーって床についてそれを指で竦めると「んぅ〜」ってムニヤムニャ口元を動かして眠っている。

サークル飲みの後、気の合う私達3人でなっちゃんの家で勇征と私とで飲み直していた。

頬杖をついて缶ビールを飲み干すなっちゃんがほんのり笑って私を見た。


「どうなの?勇征のこと、」


ロック用のコップに氷を入れて梅酒を注ぐ私になっちゃんが私の髪先を指でくるりと巻いて弄ってくる。

この大男勇征の愛は確かに知っている。

ほどよく勇征には愛を告白されている。


「チューしたい!おっぱい触りたい!挿れたい!って、しょっちゅう言ってんぞ?」


笑いながら柿ピーを口にするなっちゃん。

なっちゃんの言葉に苦笑い。


「なによそれ、ただヤリたいだけじゃん!」

「だなー。卑猥なことばっか言ってる勇征なんて止めて、俺にする?」


柿ピーを一粒摘むとそれを私の口に運ぶなっちゃんの指ごとペロリと食べる。

なっちゃんの指はそのまま私の唇をなぞっていってゾクリと身体が反応する。

指にちゅ、って唇をつけるとなっちゃんの目の色が変わったように見えた。


「なっちゃんもヤリたいだけ?」

「まさか!俺は愛情持って触れるよ、」


カタンとテーブルに手をつけたなっちゃんの顔が近寄ってくる。

目の前でなっちゃんが目を閉じたから私も閉じた。

愛情持って触れるけど、ヤリたいだけだよね、これきっと。

だってこんなの知って勇征が怒るのは当然で。

勇征の気持ちを知ってて私に手を出すなっちゃんはある意味すごい。

そしてそれが本気だったら余計にすごい。

まぁ、そんな感じはしないけれど。

触れるだけのキスを繰り返すなっちゃんがもどかしくて、ンベって舌を出すとそれを迷うことなく吸い込むなっちゃん。

だからギュウってなっちゃんの首に腕を回して抱きつくと、ラグマットの下に後頭部を手で押さえながらゆっくりと押し倒された。

わりとすぐ横に勇征が寝ているけど、こんなのアリ?

スースー寝息を立てている勇征を横に、なっちゃんが顔の横に手を着いてゆっくりと体重を乗せた。

こんな展開、思いもしなかった――――

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