「やるねぇ、澤なつ!超粗食に見えるのに肉食じゃん!」
ゆき乃さんの言葉にプッて笑う。確かに肉食だと思う。
「粗食ではないかと、」
だからそんな本音が口をついてポロリと零れた。
「あら、素直ね。」
真実を知ったゆき乃さんはもう興味がなくなったのか、スッと私から離れていく。化粧ポーチを開けて紅いグロスを可愛らしい唇に丁寧に塗る姿を見てハッとした。
「あ、ねえ、ゆき乃さんは、その八木くんと?…部長のことはその、もういいの?」
そもそもの始まりはゆき乃さんを慰める会であんなイケメンを揃えて貰ったわけで。もちろん夏輝くんの事はとても大事だけれどゆき乃さんが悲しむ姿は見たくないわけで。今朝の電話からすると隣には八木くんが確実にいたんだろうけど…。
無言で自分の首元のシャツを指でちょっと下げるとゆき乃さんはニッコリ微笑んだ。
「勇征、キスもえっちも上級!あんなピュアな顔して身体バッキバキだし、ものの3秒で信五の事なんて忘れたわ。…私がしがみついていたもの全て3秒で消えるのも正直虚しい気がしたけど、案外みんなそんな小さなものにしがみついて生きているのかもよね。でも勇征がちゃんと受け止めてくれたから解放できたんだって思うの。とりあえずこの痕信五に見せて来ようかなって!」
えへへって舌を出てた笑うゆき乃さんは優しい顔で微笑んでいる強い人で。
「すごい、八木くん。ゆき乃さん可愛い!」
「あら、ユヅキだって、澤なつが放った矢がちゃんと刺さったじゃない!よかったねぇ、私澤なつには1ミリも興味が無いから。」
「う、それはよかった。ゆき乃さんがライバルだったら戦うなんてしないけど。」
鏡に映った自分の胸元を見て、ほんのり頬が緩んだんだ。
「矢が刺さったかぁ、」
しみじみ言うとトイレの手洗い場の大理石に置いたスマホに夏輝くんからのLINEが届く。
【給湯室で待ってる♪】
逸る気持ちを抑えてゆき乃さんの肩を押すと私達は給湯室へと向かった。
*END*