―――好きな人と言われて思い浮かぶのはたった一人、樹先輩だけだ。
今日こそこの気持ちを樹先輩に打ち明けようって、バスケ部の練習が終わるのをひたすら待っていた。
明るかった空は次第に暗さを増し、部活終わりの生徒たちが校門前に突っ立っている私を見て素通りしていく。
「お前なにしてんの?」
無愛想な声に俯いていた顔を上げると幼馴染で1歳年上のなっちゃんが鞄を肩に背負ってこっちを見ている。同じサッカー部の先輩達もそこにはいて…
「あ…と、え〜っと…、」
「いっちゃん?」
「…うん。」
何故か盛大な溜息をつかれてちょっとムカ。女子から人気の樹先輩に私が選ばれるわけないってなっちゃんはいつもそんな意地悪ばっか言うからどうせまた同じようなこと言われるんだってゲンナリした。
「今日はやめとけよ、今日は。」
「もうなっちゃんの意地悪は聞き飽きた。私は今日って決めてここで待ってるから邪魔しないでよね!」
いつも勇気が出なくて諦めちゃう事も多かったけど、今日こそって何故だか気合いが入っていたんだった。
ポケットに突っ込んだ反対側の手が私の手首を掴む。
「明日にしろ。」
ボソっと言われて私を連れていくなっちゃんの腕を振り払った。当たり前に睨まれるけど、なっちゃんには関係ないよ。
「邪魔しないでよ!意地悪なっちゃんなんて大嫌い!」
ちょっと大袈裟に大きく叫ぶと、なっちゃんは「じゃあ勝手にしろ。」って私を一瞥するとそのまま先輩達の群れに戻って行った。
ふう〜と息を吐き出して校門へと視線を向けると、漸くお目当ての樹先輩らしき人影が見えた。途端に心拍数が上昇するのが分かった。