優しさの欠片2

頭の中で告白の台詞を超スピードで整える。

ずっと樹先輩の事が好きでした、私と付き合ってください!

伝えたいのはこのシンプルな言葉に全て含まれていて、これを何度となく心の中で練習してきた…。

大きく深呼吸をしていざ!顔を上げた私の前、「いっちゃん待ってよ、もう、歩くの早い!」ふわりと樹先輩の腕に絡まる先輩…。バスケ部のマネージャーのハナ先輩だ、あれは。確かキャプテンの北人先輩と付き合ってる…って…―――



「え、」


ハナ先輩の手を取る樹先輩は赤い頬で嬉しそうで…。


「今日うち来る?」
「あーえっちな顔になってる!」
「…そりゃ俺男だし。つーか今日もまた北人先輩と楽しそうに話しててさ…。」
「ふふ、なあに?ヤキモチ?」
「うん。だってハナが噂になってるのって俺じゃなくて北人先輩でしょ?俺がハナの彼氏なのに…、なんか悔しい、それ。」
「…可愛いな、いっちゃん。」


…――――オレガハナノカレシナノニ…。

なんだそっか、そういう事か。あの人、北人先輩じゃなくて樹先輩の彼女だったんだ。あんな優しくて甘ったるい樹先輩の顔なんてただの一度も見た事がない。彼女の前ではあんなに可愛くなっちゃうんだ、樹先輩…

もしかしてなっちゃんはこのこと知ってたの?だからあんな風に私のこと、止めてくれたの?

動けない私の前、校門を出た樹先輩と目が合った。



「あれ?えっと確か、ユヅキちゃん!なっちゃんなら少し前に帰ったよ?」


放っから私の相手がなっちゃんだって…そりゃ思うよね。先輩の知り合いなんてなっちゃんとその周りしかいないもん。


「…なっちゃんの彼女?」


樹先輩の奥から顔だけ見せたハナ先輩。近くで見るとすごく綺麗。


「そうそう。ね?」
「…はは…、」


初めてまともに樹先輩と話したのに、私は樹先輩の中でなっちゃんの彼女で通っていたんだって。


「あの、か、帰ります!失礼します!」


恥ずかしくて馬鹿みたいで、悲しくて辛くて。それをかき消す様に駅まで全力疾走した。