地元の駅の改札を出る。家までの道のりが重たくて…
「ユヅキ。」
え?聞こえた声に振り返ると壁に背をつけたなっちゃんがいる。私の顔を見るなり小さく息を吐き出すなっちゃん。ポスって私の頭に大きな手が乗っかる。そのままふわってなっちゃんの腕が私を包んで…
「よく頑張りました。」
いつもいつも意地悪な事ばっか言うなっちゃんの優しい言葉なんてずるいよ。全部分かってる風のなっちゃんがずるい。
ギュっとなっちゃんの腕に捕まる私を、泣くの我慢していた私を、黙ってずっと行き交う視線から守ってくれた―――。
「はい、飲んで。」
ホットミルクティーを自販機で買ってくれたなっちゃん。今日はどこまでも優しいらしい。
涙を手の甲で拭った私の頭を優しくポンポンって撫でてくれる。
「う、ありがどお。」
「…別に。」
カチッてブラックコーヒーかと思いきや甘いカフェオレを飲むなっちゃんに思わず笑いそうになる。
「本当は彼女いること知ってたんだけど、言えなくて。ユヅキがいっちゃん好きな事も分かってたし。俺も、好きな女が他の男と付き合ってたら嫌だって思うから、」
「…なっちゃん好きな女なんているの?」
初めて聞くなっちゃんの恋バナ。ツンデレななっちゃんからは女の影なんて見えな―――――「私?」んなわけないか!私達は小さい頃からただの幼馴染だ…「正解。」ほんのり微笑んだなっちゃんが目の前で目を閉じる。
それがキスだと気づいたのは、私から離れたなっちゃんが真っ赤な顔でハニカンだからで。
「…いっちゃんの傷は俺が癒す。だから俺の事見ろよな。」
いつものなっちゃんらしい口調だったけど、そこに含まれている優しさに気づかないなんて事はなくって。
「…うん。」
だから私も素直に頷くとなっちゃんがそっと手を握って指を絡めた。
「んじゃ帰ろうぜ。」
…一瞬で樹先輩への気持ちがなっちゃんに奪われたこと、しばらく内緒にしてようっと。
寒空の下、私となっちゃんの影がゆっくりとくっついた。
*END*