恋の矢、刺さりました1

私の中心はゆき乃さんで回っている。


「…フラれた。信五、他に女がいやがった。」


…ーーーーえ?

泣くのを我慢しているのか悔しそうに俯くゆき乃さんを目の前に、ふつふつと怒りが湧いてくる。こんな可愛い人を傷付けて泣かせるなんて、村上部長地獄に落ちろ!!


「仕返ししてくる。」


立ち上がった私の腕を引っ張るのはゆき乃さん自身で。小さく首を振る。


「いいの、もういいの。潮時。あんな仕事人間こっちから願い下げ。今別れちゃったらもう後がないって思ってずっと別れられなかったのは私だから。だからちょうどよかったの、」
「…でも、」
「ほら、私って自分で思うよりも可愛いでしょ?だからきっとすぐに若くてイケメンで筋肉ムキムキで私がいないと生きていけないってぐらい惚れられる男ができる、はず!」


ニコッと笑ったゆき乃さんは、今まで見たゆき乃さんの中でも五本指に入るくらい綺麗で可愛かった。


「うん、そうだね!元々ぶすな部長とは不釣り合いだったし!」


私がそう言うとクスっと笑って「言うわね、ユヅキ!」ちょっとだけ儚く微笑んだんだ。


せめて、少しでもゆき乃さんに元気を出して貰おうって、少しでも気が紛れればって、


「なっちゃん!ちょっと頼みがあるんだけど!」


同じ部署の後輩堀夏喜くんを捕まえた。勿論ながら長身イケメンの彼は社内でも人気で。でもそのクールな外見から話しかけずらいって思われる事が多く、その美貌を持て余していた。


「一条さん、なんすか?」


衝立の奥にある給湯室まで腕を引いていくとキョトンとした顔で私を見下ろす。


「今夜空いてる?急で悪いんだけど、どんな知り合いでもいいからイケメン沢山集めてくれないかな?」


私の言葉に面倒そうな呆れた顔を飛ばされたけど、なんのこれしき、ゆき乃さんの笑顔のためならこの一条ユヅキ、なんだってしてやるよ!

そんな意気込みでなっちゃんに一歩近寄った。


「一生のお願い!ゆき乃さんの為に、イケメン集めて!ね、お願い!!」


パチンと顔の前で手を合わせて頭を下げる。懇願する私に苦笑いで「…いいですけど、高いっすよ?」なんて笑ってなっちゃんが私の頭をふんわりと撫でた。


「やったーーー!!!ありがとう!!なんでも奢るよ、もう!」
「本当に一条さんは、ゆき乃さん大好きっすよね、」
「当たり前!ゆき乃さんより可愛い人なんてこの世にいないでしょ!!」


地方から出てきて右も左も分からなかった世間知らずな私に、東京の生き方を教えてくれたのはゆき乃さんだった。だから私にとってゆき乃さんは、家族同然、むしろそれ以上、常に追いかけていたい存在だった。