「…え、なんか顔面偏差値高くない?」
個室のドアを開けるなり振り返ってゆき乃さんが苦笑い。そりゃなっちゃんに厳選して貰ったんだもん、高くなきゃ許されない。
「好きな所座っていいって、ゆき乃さん。ユヅキの隣でもいいよ?」
「えーマジで!?てか、営業の瀬口くんやっば!瀬口くんの生笑顔は半端ないって噂じゃーん。広報の八木勇征まで!あのスーツの下の筋肉半端ないって噂!」
当たり前に私の隣に座る事もなく、ゆき乃さんは瀬口くんと八木くんの間に座った。
「ちなみにここの店員も俺の後輩なんで。」
クソ寒い真冬だっていうのにTシャツ1枚で現れた後輩くんは胸元にケイトって名札をつけている。
軽快にお酒を楽しむゆき乃さんを見てちょっとだけホッとする。
「おトイレ行ってきます。」
立ち上がって個室から出た所だった、黒髪のスーツがちょうどこの個室に入り込もうとしていて手が触れ合う。
「わ、すいません。えっとここ、堀夏喜いますよね?」
「え、あ、えっと、はい。なっちゃんのお知り合い?」
「はい。澤本です。夏喜に呼ばれて。」
こんな人見たことなくない?え、え、うちの会社?
「あ、すいません。じつは年は夏喜より上なんですけど中途で今年入ったばっかなんでまだ新人です。えっと、総務の一条さんですよね?」
名前を当てられて何だかドキッとする。こんな誠実そうな友達もいるんだ、なっちゃん。なんて怒られる?
「一条ユヅキです。」
「よかった。喋ってみたいって思ってたんでめちゃくちゃ嬉しいです。」
目を細めて笑うその顔に不覚ながらまたドキッとする。こんな感覚いつぶり!?どうにも止まらぬドキドキを飲んで誤魔化すしかなさそうだった。
トイレから戻ると私の席の隣、さっきまでは同郷の翔太くんが座っていたのに、翔太くんはなっちゃんの横に移動していて、さっきの澤本くんがニッコリ私を手招きした。
無くなっていたお皿には料理が取り分けられていて、お酒も新しいのが来てる。
「一緒に食べたくて、勝手に用意しちゃったんですけど、ご迷惑でした?」
「いえまさか!有難いです、食べます!」
よく見ると、お箸の持ち方も座り方も動作一つ一つが綺麗で、気を抜くと見とれてしまいそうだった。
「ユヅキさんは休みの日は何してるんですか?」
さっきからプライベートな質問がいっぱい飛んできていて…それに一つ一つ答えていく私。初対面の男の人とあんまりこうして喋る機会がないから緊張はするものの、澤本くんは他より少し喋りやすい空気を出してくれる。
不思議な人。