都合のいい女


福岡から東京に出てきて早3年。どこかで黎弥に逢えないか?って思っていた気持ちなんて今はもうどこにも無かった。

20歳で上京した私はどこか黎弥の面影を探しながらも、いつの間にか正反対な男を選んでいたんだ。


ーー真夜中に鳴り響く着信音に眠い目を擦って通話ボタンを推す。


【けんた。駅まで迎えに来れる?】


…何時?今。スマホのデジタル時計は3時15分。明日は会議があるのに。睡眠不足は肌にもよくないのに。


「うん。すぐ行く!」
【ありがとう。】


どうしてこーいうの断れないんだろうか。こんな御迷惑な男の足に使われてるって分かってる。でもそれでもこんな私をぎゅっとしてくれる男なんてこの世にきっと健太しかいない。

そんな事を思ってしまうんだ。

さすがにコンタクトは入れらないからメガネをかけて着替えると上着を羽織って車のキーを持つ。裏の駐車場まで走らなくてもいいのに走ったりして、急いで車をあっためる。

寒空の下私を待っててくれる健太を思ってハンドルを握った。

ものの5.6分の距離を車を走らせて駅前で煙草を吸っていた健太にたどり着いた。


「健太!」
「早いし!まだ吸い終わってないよ、煙草。」
「それ吸い終わってからでいいよ、」
「ありがとう。」


寒空の下、震える身体を両手で擦って健太の煙草を待つ私を、誰が想像しただろうか。


「はぁー。寒ぃ。あっためて。」


ぎゅっと後ろから私を抱きしめる健太に心が満たされるなんて馬鹿みた。心にポッカリとあいた穴を埋めてくれる健太の温もり。

私はこれがないと生きていけない。