「…挿ったよ、ゆき乃…」
「ン〜…」
「硬いって、力抜かなきゃ俺動けねぇ…」
「痛いの嫌」
黎弥が半笑いのまま腰をフワリと動かした。
ズキってやっぱり痛い?
でもジンジンしているだけ?
よく分からないまま黎弥の律動が始まる。
同時に何だか分からない涙が溢れてくる。
「痛てぇ?」
「うーうん。平気…」
「泣いてる…」
「うん…」
「やめる?」
「やめない。このまま最後までシて…」
「分かった」
大丈夫。
ちゃんと黎弥は身体を気遣ってくれる。
無理やり挿れて、無理やり抱く人だったらもうできないって思うけど。
あたしが痛くないように、気持ちよくなるようにって色々シてくれる。
だから平気、全然平気。
胸を指で掴みながら舌で鎖骨にチュっと強く吸いつく。
それが後からキスマークだって気づくまで全く知らなかった。
なるべく力を抜いて、黎弥を見つめる。
あたしの上で綺麗な裸体をさらして見下ろす黎弥の顔は髪が目にかかっていて見えずらい。
でも時折上を向いて目を細めるその仕草に、自分がされていることすら忘れて見とれる。
何度も何度も黎弥に見とれて、黎弥から目が離せなくて…
「ハアっ…ヤバイっ…」
腰を振っていた黎弥が小さく漏らした。
虚ろな目をあたしに向けて軽く微笑む。
「イってもいい?」
そんな確認。
あたしの中で黎弥がはてようとしている。
顔から汗を垂らしてあたしを切なく見つめる黎弥にコクっと頷いた。
そのすぐ後、黎弥の律動が速まってあたしの中が熱く溢れて、「ッツ...」黎弥の声と同時にピタッと止まって目を閉じる。
ビクビクって子宮の中が揺れて熱くなった。
バタンって黎弥があたしの横に倒れるように転がって目を閉じたまま大きく身体全部で呼吸を繰り返している。
「黎弥大丈夫?」
覗き込むあたしを腕でグイッと引き寄せて、おデコに小さなキスをされた。
「無理。マジやべぇよ…」
「え?どこか痛い?」
「…ゆき乃が好きすぎてここがいてぇわ」
胸をトンって拳で叩く黎弥にホッとした。
目を開けて真っ直ぐあたしを見つめるそのつぶらな瞳は可愛くて。
七代目ってことを忘れそうになる。
「よかった」
「ゆき乃は大丈夫!?やっぱまだ気持ちよくなんねぇもの?」
「分かんない…でも痛みよりも喜びのが大きい。黎弥のあんな姿誰にも見せたくないよ」
ほんの一瞬考える仕草をした後、黎弥はそのままあたしをギュッと抱きしめる。
「ゆき乃のそんな姿も俺以外には絶対ぇ見せたくねぇ」
「ほんと?」
「いや、ほんと。嘘言っても仕方ねえだろ」
「うん」
「ちゃんと大事にする。だからずっと俺と一緒にいて…」
不安になっていたのが嘘みたいだと思えた。
怖くて踏み出せなかったその大きな一歩。
踏み出した先には、比べようのない幸せがあるんだってこと、あたしは一生忘れない。
*END*