元カレの存在


「ね、聞いて!元カレが結婚式の招待状送ってきたの!ありえなくない?嫌がらせとしか思えないんだけど!どう思う? 」
「ぶっ!すごいなぁ。元カレってオミ?」
「そう、オミちゃん。」
「わたしならパス。絶対行かない。」
「あたしは、あえて行くかも!」
「…はぁ、最悪。」


でも、中に入ってたオミちゃんからのメッセージを見て、その字を見て彼との日々が走馬灯のように蘇ってきたなんて。何だか懐かしさとでもやっぱり悔しさで、私の気持ちは複雑だった。別に喧嘩別れしたわけでもないし、浮気された訳でもない。ただ合わなかっただけ、色んなことが。タイミングだったり、ちょっとした考え方だったり。だから私達は違う道を選んだ。現に私には直人っていう素敵な恋人もできたし、今がとっても幸せだって思う。でもやっぱりオミちゃんとの未来がなかったんだと思うと、なんだかどうしようもなく気持ちが落ちたんだ。直人に申し訳ないと思いながらも。


「なんかありました?」
「………。」
「莉子さん?」
「え?あ、ごめんね。えっと、なんだっけ?」


心配そうに私を見つめる彼、川村壱馬くん。現在21歳の現役大学生。教習所の教官をしている私の列記とした生徒さん。見た目がかっこいいのに挨拶とか話し方とかちゃんとしていてじつは相当気に入っていたりする。なんて言っても自分の中でだけ勝手になんだけど。壱馬くんに声をかけられてハッとしたけど、チェックポイント既に過ぎてるしー!最悪。


「川村くんごめんなさい。ちょっとボーっとしててチェックポイント過ぎちゃった。あの今日は免除しておくから次の時にもう一度走って貰ってもいいかな?」
「いや今日もう一度走りますよ。僕時間あるし。莉子さんは次の生徒とかいますか?」
「今日は川村くんだけなんだけど、いいの?」
「はい。むしろ自分は嬉しいっす。莉子さんと少しでも長く一緒にいられるなんて。」


…私を先生…じゃなくて莉子さんって呼ぶのは川村くんと長谷川くんだけだ。内心めちゃくちゃ喜んでいるものの素直に照れたりできないのが私で、一応自分の立場もわきまえてはいるつもり。でもこの子、ちょっとだけオミちゃんに雰囲気が似てて、隣に乗ってるとあの頃を思い出すことも多々あった。


「こらー。先生をからかわない。褒めても何もでないぞー!」


ポコって壱馬くんの髪の毛に触れると一瞬だけ空気が固まったような気がした。見つめる瞳は真剣で真っ直ぐで、頭に浮かんだ直人に慌てて我にかえった。


「後で珈琲でもおごってあげるね!」


名誉挽回でポンポンって彼の髪を撫でたら、また空気が変わる。どうやら地雷踏んだのかもしれない。